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最弱師匠と最強の弟子!  作者: 福田ひで
第一章 最弱師匠の誕生
2/17

その一 ロリっ子ハイナ

ヒラヒラと舞うマフラーの様に首に巻かれているマント、茶色いブーツに背中には何か杖のような物を付けている。

日本で見るとしたらコミケとかのコスプレをしてる人くらいだろう。


「えっと……ねえ君聞いてる?」


すると俺はその姿に見惚れていると女の人が心配そうにこちらを見つめ、一発引っ叩かれた。


「いったー!?何すんだよ!!」

「あー良かった。ちゃんと生きてたのね。中々反応しないからもしかして死んじゃったのかと思ったわ」


俺は痛む頬を抑えながら2次元女に文句を言う。

ん?ちょっと待てよ俺何で頬が痛いんだ?

これは夢のはずだ、さっきそれはすでに理解している。

気持ちの良い夢を見れるとか言いながら全く気持ちよくないしイマイチこの夢の意味が分からない。


「おーい、またボーッとしてる。よし!もう一発」


すると3次元女は再び手を振り上げる。

それに気付いた俺は急いでやめさせた。


「ちょ、ちょ待て!バッチリ起きてるから!大丈夫だから!」

「だったらちゃんと話を聞きなさいよ。それで名前はなんて言うの?」


名前を聞かれてたのか、考え事してて全然聞いてなかった。

これは普通に言っていいんだよな。


「えっと………俺は相田和人。それであんたは?」

「私?私はコイト。よろしくね、相田和人」


そう言って握手をしたいのか手を前に出す。

この人なんかお姉さん見たいな雰囲気を感じるな。

兄弟とかいるのだろうか?

いや、何で俺夢の中で人の家族構成気にしてんだよ。


「よろしくコイト」


俺はコイトが出して来た手を握り握手をする。

やっぱり暖かいって言うのが分かるな。

この夢は出来る限りリアルに近付けているから気持ちの良いドリンクと言うことなのだろうか。

まあ、夢何だし深くは考えないようにしよう。


「それじゃあ、この森は沢山モンスターが居るから気おつけて帰るんだよ。じゃあね〜」


あれ?もしかしてコイトこのまま俺を見捨てて帰るつもりなのか。

そのまさかでコイトは俺から離れて行き森の奥へと進んで行く。


「ま、まあこれは夢何だし、ご都合主義が発動して新しい美少女が来るだろう」


その時森中に、謎の雄叫びが響き渡った。

この森には他にもモンスターが居るって言ってたな。

モンスターってもしかしてアノ有名なゲーム[モンスターと誰?]見たいな感じのバケモンみたいな奴が居るのだろうか。


「うん!よし、コイトーーー!!ちょっと待ってくれーー!」


―――――――――――――

「恩返しがしたいって本当なの?」

「ああ、こっちは命を助けてもらったからな当然だよ」


この世界何かあるか分からない状態で1人でいるのは危険だ。

けして怖いからという訳ではなく危険だからだ。


「まあ、私は別に恩返しなんてしなくて良いんだけど、和人君がしたいって言うならとことん恩返ししてもらおうかな」


う〜ん、やはりお姉さんと呼んでしまいたくなる雰囲気を持ってるな。

年も20代後半位かな?


「それで和人はどこに住んでるの?こんな森に来るくらいだからハンベルトに住んでるの?」

「え?ああ……そんな感じ」


実はこの世界の事について考えると頭に勝手にその情報が流れてくるという便利な機能がこの夢にはあるのだ。

俺が現在分かっている事を整理すると言語や文化も違うこの世界は日本で言う異世界だ。

これは今までの体験で分かってる。

夢は自分が体験してきた物を見やすいって聞いたから異世界を夢で見るって完全にゲームや小説とかアニメの見過ぎでこうなってるよな。


「そういえば和人は何しにここに来たの?見たところ何も武器とか持ってないし」

「途中で無くしちゃったんだよ。剣持ってたんだけどモンスターに取られちまって」


この世界の武器は銃や剣など多彩にあるらしい。

その中でも1番強いと言われてるのが魔法らしい。

実はこの世界、異世界によく居る魔王が居るらしい。

さらに妖精などの神秘的な生物もいてゲームならRPGとファンタジーを融合させた物だ。

その魔王を倒す為最強の攻撃手段と言われている魔法を使う人、魔法使いを育成しているのがこの街ハンベルトと言う街だ。


「それは災難だったわね〜。それじゃあ本当に私は命の恩人ってわけね。それじゃあ色々、やってもらおうかしらね」

「出来る範囲でならやるけど、あまり難しい事は出来ないからあんまり期待しないでくれ」


そしてこの街、ハンベルトは特に魔法使いの育成を大事にしていて、この街にしかない制度があり、魔法使いを目指す人はベテランの魔法使いの弟子になりそこで師匠から魔法使いとして認められればはれてベテラン魔法使いになれるらしい。

ちなみにベテラン魔法使いにならなければ魔王討伐どころかハンベルトから出ることも許されないらしい。

ここまでが俺が分かってる情報だが1つだけ気になる事がある。

それは夢にしては設定しっかりしてね?

こんなただの夢のくせに足の感覚や風や草の匂いなど五感がしっかりと夢の中まで反映されている。

もしこれがあのクソババアが作った設定なら余計なもん入れやがってと文句を言うところだ。


「着いたわよ。ここが私の隠れ家!」


そこは森の中にある家で隠れ家の通り木で出来ている手作り感が半端ないウッドハウスだった。


「こんな所に家なんか建ててモンスターに襲われないのか?」


俺だったら絶対普通の街に住むけどな。


「モンスター何て来たら殺せばいいのよ。自給自足ってやつよ」


サバイバルしてんな〜。


「それじゃあ早速中に入りましょう。和人には色々恩返ししてもらいたい事があるから、覚悟してね」


あんまり下手に恩返ししたいとか言うもんじゃないな。

特に殺すという単語が出てくる人には。


「おじゃましまーす」


中は木の香りがして、自然を感じる。

結構生活用品も揃っていて本当に隠れ家何だなと思う。


「いい部屋だな。中はもうちょっとサバイバル感出てると思ったけど」

「いいでしょ、私もこの家気にいってんのよ。ちょっと待ってて準備してくるから」


そういえば改めて考えると女の人の部屋とか入ったこと無いな。

ま、それ以前の問題だったんだけどな。


「誰!?」


すると突然どこからともなく声が聞こえた。

声のする方に向くとデカイ帽子を被っていて杖を持った女の子が目の前に現れた。


「えっと………誰?」

「な!?それはこっちのセリフよ!あんたこそ誰よ!はっ!?もしかしてコイトを狙うクソ魔法使いね!ここで成敗してやる!」


出会い頭に突然俺に詰め寄ってくる謎の少女。

背は俺より少し低く、デカイ帽子に魔法の杖と胸元に変な紋章のペンダントと黒いブーツを履いている。


「何言ってんだお前?よく分からんが俺はコイトに命を救われた身として恩返しにしに来ただけだ」

「コイトに命を救われた?はっ!どうせわざと命を救われる場面にあってコイトに救わせようとしたんでしょ!コイトを、騙せても私は騙されないから!」


なんかものすっごく疑われてるな。

こいつは少し面倒なタイプだ。

こういう奴は適当にあしらうのが吉だな。


「はいはい、そうだな。それじゃあ俺コイトの手伝いしてくっからそんじゃ」


俺は適当に返事をしてコイトの方に向かった。


「ちょっとまちなさい!そんな簡単に行かせる訳無いでしょ!」


こいつまだ突っかかるつもりかよ。


「じゃあどうしろって言うんだよ。ていうかコイトに聞けば真実だって分かるから、だから一緒に聞きに行こう!これで平和的解決だ」

「そういう問題じゃない。私は絶対にあんたを認めない!」


何故こいつに認められなければならないのか。

ていうかこいつ誰だし。


「おい、まずは名前を言うのが礼儀じゃないのか。年下として年上の俺には敬語を使うのも常識だぞ」

「何であんた何かに敬語を使わなきゃいけないのよ!雑魚に敬語を使うなんて恥ずかしくて死にたいくらいだわ」


嘲笑うかの様に俺の事をディスってくる。

そのムカつく顔を見て俺は少しイラッと来た。


「お前何歳だ」

「女性に名前を聞くのは失礼よ!」

「いいから言えよ」

「そ、そんな事どうでもいいでしょ!今は年齢なんて物なんの意味も無いし」


言い訳を言って中々年齢を言わないこいつに俺は。


「お前13歳だろ?」


その瞬間目の前の少女は体をビクッと一瞬震えた。


「図星だな」

「な、なんの事?私にはよく分からないわね〜」


目が泳いでる時点で完璧に図星だろ。


「何だよお前やっぱり生意気なロリっ子じゃねぇか」

「おい、今のロリっ子と言うのは訂正しろ。私はその言葉が大っ嫌い!」

「お?何だ?俺だってお前に散々言われてんだ。こっちだって言う権利があるだろ。ロリっ子」

「くっ!あんたね……」


悔しそうに唇を噛み、握った拳が震えている。


「どうしたロリっ子?顔が変になってるぞ」

「だからロリっ子って言うな!」

「言うなと言われても俺だってお前の名前しならないから他になんて言うんだよ」


するとロリっ子は背中に付いているマントを手で広げた。


「ならこう呼べ、最強の魔法使いと」

「なるほど最強のロリっ子か。よし分かった」

「あんた人の話聞いてた!?もう許さない!」


その瞬間最強のロリっ子が杖を高々と突き上げたと思ったら何かぶつぶつとつぶやき始めた。


「お、おい?何やってんだ」


最強のロリっ子が杖をクルクルと空中で回す度に空気が肌にピリついてくる。

何を出そうとしてるのか知らないが、これは完全に死ぬ奴だ。


「お、おい!落ち着け!こんな所でそんな魔法撃ったら家が吹き飛ぶぞ!」

「はっはっはっ!何を今更怖気づいているのよ!もう遅い!喰らえ!最強魔法グング――――痛っ!」


魔法を、撃つその瞬間最強のロリっ子の頭に鉄拳が降り注いだ。


「だ、誰!?私の邪魔……こ、コイト?」


その顔はまるで鬼の様にそれはそれは恐ろしい顔だった。


「何やってんのよハイナ!!こんな所でその魔法を使う意味分かってるんでしょうね〜!?」


迫りくるコイトにハイナはただ震える体を抑える事しかできなかった。


――――――――――――

「ごめんね和人。この子すぐ喧嘩売るのよ」

「あ、そうなんですね」

「ん?なんで急に敬語になったの?」


あの光景はすぐに忘れよう。


「それじゃあ、改めて紹介するわね。私はコイト、この子は私の弟子のハイナ。ほら、ハイナ言うことがあるでしょ」

「こんな奴に言う事なんか――――」

「ハイナ〜!?」


再びのコイトの圧にハイナは身を震わせる。


「よ、よろしくお願いします」


ハイナ、この状況は同情するよ。


「えっと………俺は相田和人。よろしく」


簡単な自己紹介を終えコイトは早速立ち上がる。


「それじゃあ早速、和人手伝って欲しいんだけど、頼める」

「もちろん大丈夫だけど、何かやばい事しないよな」

「そんなわけ無いでしょ。それじゃあ早く来て」


俺はコイトに連れられ台所に向かった。

その時ハイナがこちらを睨みつけていた。

こいつ絶対に俺のせいと思ってるな。


「はい、それじゃあこれよろしくね」

「こ、これ!?マジで?」


そこは食器が散乱して大量に山積みされていた。

やらな過ぎだろ。


「もちろん恩返ししてくれるんでしょ?」


そう優しく微笑む。


「はい!頑張ります」


先程の光景を覚えてる人はこうする事しかできない。

この微笑みすら恐怖と思ってしまうのだから。


「じゃ、よろしくね」


そう言って台所を出て行った。


「はあ……家でもやってない事を夢の中でやる事になるとは」


でも夢何だし、どうせなら現実で培ってきた罪悪感をここで消していこう。

俺は早速皿洗いを開始した。


3時間後―――――


「やっと………終わった……」


異世界なのもあり、俺がやったことない事もあり予想以上に時間が掛かってしまった。

俺はフラフラとリビングに向かう。


「あ、終わったの?ありがとね。時間無くて溜まっちゃってたの助かったよ」


お菓子を食いながらそんなことを言ってくる。

こっちは仕事してたって言うのに。

はっ!?これがお母さんが苛立ってた理由か!


「何ぼーっとしてるのよ?終わったならさっさと出ていきなさい!」

「うるさいぞロリっ子、もとい最強のロリっ子」


その瞬間こちらを睨みつけてくるハイナに、向かって俺も睨み返す。


「和人お疲れ様。はい」


すると鍋でグツグツと煮込まれた具材が入った器を渡してきた。


「これは?」

「スライム汁よ。ほら食べてみて」


スライム汁?

スライムって俺が知ってるあの水色のRPG界のザコキャラだよな。

俺は恐る恐る箸で肉をつまむ。

スライムのぷにぷにさが残っていて触っていてとても気持ちがいい。

色は普通のお肉と一緒なのは少し不思議だがまあ頂こう。


「どう?美味しい?」

「う、うまい!肉はプニプニしてるのに食べてみるとしっかり噛みごたえがあって美味しいし、味もスライムとは思えない程うまい!」

「そう、それなら良かったわ。ほら、ドンドン食べて」


そう言って、器にドンドン注ぎ込んでいく。


「あの、俺そんな食べられないんだけど」

「そんなもんなのクズト。所詮あんたも底らへんの雑魚と一緒って事ね」

「おい、何でこいつはさっきから俺に喧嘩腰なんだ。反抗期か?ていうかクズトって何だよ」

「この子、恥ずかしがり屋なのよ。だから素直になれないの」


そう言ってコイトはハイナの頭を撫でる。


「師匠やめてよ。頭撫でないでよ」

「何よ。素直になりなさいよ。嬉しいんでしょ?」


いつの間にか俺だけ別の空間にいるような状態になってるのだが。

それにしても夢の中なのに味も分かるなんてマジで現実みたいだな。


「ふわぁ〜あ……」


するとハイナが大きくあくびをする。


「もうこんな時間か。そろそろ寝ましょうか」


時刻はすでに12時を回っていた。

この時間なら今頃ネット対戦してる頃だな。


「ま、まだ寝るわけにはいかない……クズトからコイトを守る……」


最後の最後で俺をディスってハイナは眠ってしまった。


「こいつ、俺を何だと思ってんだ」

「まあ、ハイナも本気で言ってるんじゃないと思うから。ほら、今日泊まってくでしょ?布団の準備手伝ってよ」


そう言って、コイトはハイナを寝室まで運んでいく。


「え?俺泊まってってもいいの?」

「さすがの私もこんな真夜中の中外に追い出すなんてことしないわよ。まあ外でモンスターと一緒寝たいなら話は別だけど」

「泊まらせて頂きます」


俺は押し入れから布団を取り出しその場に敷く。


「ふーこれで良いのかな」

「お、丁度できたみたいね。それじゃあ私こっちで寝るから、和人はそっちで寝てよ。ちなみに夜這いとかしないでね?」

「な!?するわけ無いだろ!」

「若者は性欲に飢えてるも思ってたから。それじゃあおやすみ〜ふわぁ……」


あくびをしながらコイトは寝室に向かって行った。


「夜這いか……」


そう言えばここ夢の中なんだよな。

だったら別に何の問題も………


「て、何を考えてんだ俺は!?おさまれ俺の性欲!」


とりあえず変な事をしでかす前に寝よう。

俺は布団に潜り目をつぶった。

………………寝れない。


「この時間はまだゲームしてるしなぁ……ていうかまずは夢の中なのに寝れるわけ無いだろ」


やっぱり夜這いでもするか?

いや待て、この世界は妙にリアルだ。

変なことしでかしたら殺される痛みを知る可能性もある。

でもここは俺の夢であって、うまいこといくのが夢じゃないだろうか。

そもそも夢と言うのは人の潜在的に求めて言う物を具現化することを言うのではないだろうか。

そう考えるとこれからやる行動も正当なものでは無いのか?

て、俺はこんなことをマジで考えてるんだ。


「アホらしい、あの人は命の恩人だし、変な事せず寝よう」


その時寝室の扉が開く音が聞こえた。

俺はすぐにベットに頭を被り寝たふりをする。

て、何で隠れるんだよ俺!

別にやましいことしてないだろ!

するとコイトはそのまま外に出て行ってしまった。


「え?何しにいったんだ?」


少し気になるな。

俺は興味本位でコイトに着いていくことにした。

外に出てみると森の奥へと進んでいる。


「明日の食べるモンスターでも取りに行ってるのか?」


俺はバレないように、でも見失わないように後を着いていく。

すると目の前に人らしき姿が見える。

誰かと会う約束でもしてたのか?


「何だそれだけかよ。戻るか」


俺が家に戻ろうとしたその時。


「ハイナは私の弟子よ!!」


そうコイトが叫んだ。


「何だ何だ?もしかして喧嘩してんのか」


その時コイトが殴られそうになっていた。

それを見た瞬間俺は前のめりになってしまい枝を踏んづけてしまった。


「誰だ!?」


やばい、バレた。

これは素直に出ていくか。


「え、えっと………ごめん!」


俺は後ろめたさを感じてしまいすぐに謝った。


「和人何でここに!?」

「コイトが急に出ていくから気になっちゃって」


相手は男か?

杖を持ってないってことは魔法使いでは無いのか。


「誰だそいつは?」


こちらを睨みつけるようにしてコイトに質問する。


「フンバーに食べられそうになってる所を助けたのよ。それだけ」

「そうか……だったら関係ないだろ。そいつを帰らせろ」


不機嫌そうな顔でコイトに命令する。

こいつさっきから偉そうだな。


「ちょっと待ってくれ何の話をしてるか知らんがコイトには命のを救って貰った恩がある」

「だから何だ?」

「さっきお前コイトの事襲おうとしてただろう。なんか問題があるんだったらそんな暴力じゃなく話し合いですませようぜ」


すると男はこちらを睨みつけながら近づいてくる。


「話し合いで解決しようとそう言ってるのか?」

「え?そ、そうだ」


何で近づいてくんだよ!

夢だからご都合主義で何とかなると思ったけど実際少し怖いな。


「そうかならもういい」

「え―――」

「和人危ない!」


その瞬間何が起こったのか訳が分からなかった。

俺が理解した時にはすでにコイトの胸には銀色の剣が突き刺さっていた。


「は、は?」

「ぐ、ぐふっ!」

「先に男を殺そうと思ったがこれは好都合だ」


男がコイトの突き刺さっている剣に力を込める。

その度にコイトが悲痛な叫びを森中に響かせる。


「くっお前だけは絶対……レッドウィンド!!」


その瞬間炎の渦がその男を襲う。

突然の攻撃に思わず男は手を離す。


「ぐおっ!?くそ!死に損ないが!もう一度」


その時男の動きがそこで止まる。


「はあ……これ以上近づいたら本気で殺すわよ」

「くっ、クソが!」


その殺気に男は怯んでしまいそのまま森の奥へと逃げ出した。


「はは……ざまあみなさい」


その瞬間コイトは力無く倒れる。


「こ、コイト?ち、血が……」


赤い血が手にべっとりとくっつく。

コイトの息遣いも次第に少なくなっていく。


「お、おい!死ぬなよ……なあ!」


自分の手の中で次第に弱っていく恩人。


「俺のせいだ。俺があの時変に入って来ちゃったから。恩返しのつもりが俺は恩を仇で返すようなことを」

「はは……何しょぼくれてんのよ。和人のせいじゃないよ。私がまだまだ弱かっただけ」

「でも……俺が……」

「じゃあさ……悪いと思ってんるだったら……私の願い……1つだけ……聞いてくれる」


コイトが、俺の手を握りしめる。

だが握る力も残ってないのかとても弱々しい。


「何だ?何でも聞く!」

「ありがとう。それじゃあハイナをよろしくね。彼女を最強の魔法使いにさせてあげて」

「は?無理だよ俺魔法使えないしそんなのできっこない!」


コイトは静かに首を横に降る。


「大丈夫、和人なら出来る。私…しん……じ……てる……」


そして最後まで握ってた手がスルリと地面に力無く落ちる。


「何なんだよ。何が気持ちの良い夢が見れるドリンクだよ。胸糞悪すぎるだろ!」


俺は何も出来ずに恩人の死を見守ることしか出来なかった。



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