その十六 鬼とモンスター
「さて、どうしたもんかなぁ〜」
罪悪感に駆られつい条件を受けてしまったが2時間って無理だろ。
俺は今の持ってる物を確認する。
腰に刺してる剣、それに少しばかりのお金。
「いや、どうしろってんだこりゃ」
どう考えてもモンスターを倒せる物が無いことに今更気づいてしまった。
「後悔しても仕方ねぇよな。とりあえずモンスターの死体とか見つけてそれ持って行くか」
その瞬間、背の小さいモンスター?が茂みから出て来た。
「へへへ、人間まさかこんな所に居るとわな」
「こんな所になんで子供がいるんだ?早く家に帰ろよ」
「俺は人間ではない!モンスターだ!」
そう言って俺の元に近付いてくる。
「あ〜なるほど、そういう頭がおかしい系のやつだな。分かるわかる」
「何も分かってねぇだろ!?」
う〜んもしかしてこいつモンスターなのか?
だったらこいつの首を狩れば指令達成だろ!?
「そうかモンスターかぁ……」
俺はにやけながら剣を抜く。
「な!お前いきなり剣抜くか普通!?」
「だってお前モンスターなんだろ。だったら普通剣抜くだろ」
「さっきまで信じてなかっただろ!」
「さっきはさっき、今は今だろ」
俺は、剣を天高く掲げる。
「じゃあな!モンスター!」
「くっ!助けてくれー鬼さ~ん!!」
「鬼さん?うおっ!?何だ!」
その時地響きが来たかと思ったら何処からか雄叫び声が聞こえる。
「ま、まさか……これが鬼さん?」
それは身長が3メートル位ある厳つい顔と屈強な体付き、更に頭には角を生やし全身赤い体で文字通り鬼そのものだった。
「鬼さんこいつをやっちゃってください!」
「え?ちょっと待て!鬼ってこいつか!?」
「オマエ!コロス!」
めちゃくちゃ物騒な事言ってるんですけど。
やべぇマジかよ。
流石にこいつが来る事は予想して無かった。
「ここは……逃げるが勝ちだ!」
俺は剣を鞘に戻して思いっきりダッシュする。
「あ!にげんじゃねぇ!追いかけるぞ鬼さん」
「アイツ、コロス!」
―――――――――――――
「くそ、どこ行きやがったんだ」
見っけた。
「おらよ!」
俺は予め登っていた木から鬼の顔面に飛び乗る。
そしてあいつの目を両手で隠す。
「グワッ!ミエナクナッタ!!」
「あいつ、鬼さんの上に!おい、鬼さん!頭だ、頭に居るぞ」
「アタマ!アタマ!!」
そう言って自分の持ってる金棒を自分の頭にぶつけようとする。
その瞬間、俺は頭から離れて地面に着地する。
「グハっ!?イタイ!アタマイタイ!!」
「バカお前何やってんだ!下だ、下!」
「ウエッテイッタ!」
「そうだぜ。嘘は良くないなモンスターさんよ」
「うるさい!早くあいつを倒せ!」
「フンヌ!」
そう言って金棒を横に振る。
俺は来ると分かっていたので後ろに下がって避ける。
すると木に金棒が当ってそのまま木が倒れ鬼さんに激突する。
「イタイ!マタブツケタ!」
「おいおい、何やってんだよ。鬼さんが可愛そうだろ。鬼さんあんなやつの話聞いても自分が傷つくだけだぞ?俺と一緒に復讐しないか?」
「何言ってんだ鬼さんと俺の友情は不滅だ。なあ鬼さん」
「オマエコロス」
鬼さんはあのモンスターを血走ら立てながら睨んでいる。
「お、鬼さん?」
「お前んのとこの鬼さん、自分の心に正直に生きてるな」
「ちょ、鬼さ~ん!!」
「コロスゥゥゥゥ!!!」
「鬼さァァァん!!」
モンスターは涙目になりながら金棒で潰された。
―――――――――――――
「まさか……」
「持ってきましたよ!モンスターを倒して!」
「妙に潰れているんだが……」
「それはまあご了承という事で。でもこれで俺は認められたってことだよな」
するとランドは潰れたモンスターをまじまじと見る。
「お前が自分で倒した訳じゃないな」
「っ!?だからなんだよ。これが俺のやり方だ。自分の力じゃ出来ないなら他の物を利用する。別にいいだろ」
するとしばらく黙ったままだと思ったらおもむろに口を開く。
「これも1つの才能か」
「俺は合格ってことでいいの?」
「細かい指定はしてないしな。合格だ。修業に参加していいだろう」
「よしっ!これで師匠になれる」
あいつの約束も守れるよな。
こうして俺は今日から修業に参加することになった。