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最弱師匠と最強の弟子!  作者: 福田ひで
第一章 最弱師匠の誕生
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その十五 涙の後悔

「ああ!もう!何なんだよ!くそ、何が師匠の才能がねぇだ!んなもん知らねぇよ!ていうかここまで登るのにどんだけ苦労したと思ってんだよ!」


俺は愚痴を大きな声で言いながら山道を降りて行った。

その時蹴った石が遠くに吹っ飛び何かに当たった。


「ガフッ!?」

「あ、やべ」


その瞬間、石に当たったモンスターが雄叫びを上げてこちらを睨む。


「まずい!逃げるしかねぇ!」

「ギャオオオオ!!」


俺は登る時と同じスピードで山を下った。


―――――――――――――

「はあ……はあ……はあ、くそ……今日は最悪の日だ……」


モンスターに追いかけられるし、修行を断られたしで何もうまいこといっていない。


「家に帰ってゆっくり寝よう」


どうせ俺は魔法なんて使えないし、修行したところで意味無いだろうし、逆に結果オーライだな。

金さえ払えば試験も出来ると思うし、何とかなるだろう。

そう思いながら俺は家に帰った。


「ふー、やっと帰ってこれた。あいつまだ起きてるかな?」


俺は家のドアノブを捻った。

すると鍵は掛かっておらず、すんなり開いた。


「あいつ戸締まりしてねぇのかよ」


この前あんな事があったにも関わらず、がさつなやつだな。


「何だ?電気付けてないのか?」


俺は早速家の中に入り棚に置いてある鍵を取り、ドアの鍵を締める。


「もしかしてもう寝てるのか?腹減ったから飯作って貰おうも思ってたんだが……」


俺はハイナが寝ているのか確認する為に、ハイナの部屋に向かおうとした途中で、誰かの声がした。


「この声、コイトの部屋からか?まさか、コイトの幽霊とかか?」


俺はそんな冗談な事を言いつつ、念の為にコイトの部屋を確認する。

その声は、コイトでは無くハイナの声だった。


「この声は……もしかして泣いてるのか?」


俺は何を言っているのか聞きたくてドアの所で聞き耳を立てる。


「うう……コイト、何でいなくなっちゃったの?私を置いて……行かないでよ……ぐすっ…いつまでも居てくれるって、言ったじゃん!うわぁ〜ん!」


ハイナはコイトの布団が涙でぐしょぐしょに濡れるまで泣いた。

俺はその涙声を聞くたびに文字通り胸が針で刺されるくらい痛い。


「また叱ってほしい、またご飯を作ってほしい、また魔法を教えてほしい、また……会いたい……もう一度会いたい……会いたいよぉ……」


そうだよな、俺にとっては数時間の出会いだったけどあいつにとっては家族と同じ位の時間を過ごしてきたんだよな。

そう簡単に立ち直れる分けないよな。

これは夢じゃない。

いい加減、自分のした事の重さを自覚しろよ!

俺は自分に言いかけるように自分を殴った。

それが思ったより強すぎて、俺は転けてしまった。


「っ!?和人………」

「いや、ちょっと転んじゃって!やっぱり修行した後だと足がガクガクだからさ!」

「いつから居たの?」

「あ………さっき」

「どうせ、泣き虫だなとか思ってんでしょ。そう言うのもういいから」


そう言ってハイナが部屋を出て行く。


「思ってねぇよ。思うわけ無いだろ。俺がお前の幸せを奪ったんだから。だからさ、お前が少しでも笑える様に、俺がしてしまった罪を償える様に、全力を尽くすよ」

「だったら早く、師匠資格取りなりなさいよね。じゃないと、あんたといるだけで苦しいだけだから!」


そう言って、ハイナは自分の部屋に行ってしまった。


「分かってるよ。だから俺は……」


俺はすぐに走り出した。


――――――――――――

「はあ……はあ……」


外で飯を作っているランドの所に俺は無理やり押しかけた。


「どうしたこんな時間に」


俺はすぐに土下座をした。


「なんの真似だ」

「俺が間違っていました。時間も守れない奴に師匠になるなんて出来るわけ無いって言いたかったんですよね」


俺は顔を上げ、ランドと目を合わせる。


「元々俺は師匠になんて修行をしなくてもなれるだろうと、甘い考えを持っていました。だけど、ある弟子は1人の師匠をとても愛していました。その師匠は頼りがいがあり、弟子が間違っていたらちゃんと注意し、弟子が正しい事をすればちゃんと褒める、そんな人でした。今の俺にはそんな師匠になれません。でも、ならなければいけないんです。だから俺にもう一度チャンスをください!」


そして俺は再び頭を地面につける。


「2時間」

「え?」

「2時間以内にモンスターの首を取ってこい。さすればもう一度チャンスをやる」


2時間以内、しかもモンスターを倒さなければいけないなんて。

難易度はかなり高いだけど。


「分かりました。その代わり絶対に教えてくださいよ」

「分かっておる」


俺はすぐに走り出した。

拳を強く握りしめながら。



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