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インターホン

俺は深い眠りから覚めた。

時刻は午後9時。

見事なまでに休日を睡眠で消費した形だ。


というのも俺の休日の趣味が睡眠薬を飲んで一日中眠るという酔狂なものだからである。


死んだように眠ることのすばらしさをぜひ知ってもらいたいので試してもらいたい。


部屋が暗いので明かりをつける。

そこでインターホンのライトが点滅していることに気が付いた。


俺の家についてあるインターホンはモニターと録画機能が付いているという物である。

インターホンが押されていなくてもこちらから外の様子を確認することも可能なスイッチ付きの優れものである、使い道は謎だが。


ライトが点滅しているということはその録画機能が発動したということだ。


まあ正直録画機能がそこまで役に立ったためしはないのだが勝手に作動するものは仕方がない。


どうせ大したことはないだろうが一応動画を確認する。


『一件目です』


画面に映っているのは見覚えのある男三人組。


あれ、これ友達だ。

おかしいな、遊びの約束してなかったはずなんだが。


妙だなと思いつつもとりあえずは再生。


『ピーンポーン。

「おーい、弥栄。どうせお前暇だろ、心霊スポット行こうぜ」

「なあ、マジで行くのか?」

「なんだ竹垣、ビビってんのか?」

ピーンポーン。

「あれおっかしいな、あいつ別に出かけるとか言ってなかった気がするんだが」

「やめとかねえか?ほら、弥栄もいねえんだしさ」

「大丈夫だって!最悪出てもお祓いしてもらえばいいだろ!」

「いやまあそうかもしれねえけどさ」

「んー仕方ない、3人で行くか!」

「オッケー!」

「おう……」』


なるほど。

こいつら心霊スポットに行ったのか。


いや良かった。

寝てて本当に良かった。


こちとらお化けとか幽霊とかはもっぱらダメな男である。

都市伝説や意味が分かると怖い話とかを見ても眠れなくなるほどのビビりだ。


あいつらそれをわかって俺を誘ってくるからな、勘弁してくれ。

いつも全力で拒否していることを弁えてくれ。


『二件目です』


録画された動画は勝手に切り替わり、若干のインターバルの後に動画が再生される。

今回はどうやら一件で終わりではなかったらしい。


インターバル中の画面を見ると先ほどの竹垣が一人で写っている。


『ピーンポーン。

「なあ、弥栄。お前本当にいないのか?なあ、頼むから居留守なら出てきてくれよ、お前ならあいつらを止められるだろ?あいつら俺が言っても全くダメなんだよ、ここでお前の必殺技『超絶拒否』を使わずにいつ使」

「おーい竹垣!何やってんだ!?」

「……もしも居留守なら恨むぞ」』


なんだそのクソダサい必殺技は。


まあ実際いつもは俺が殴ってでも止めてるからあながち間違いではないかもしれないが。


大丈夫なのかなこいつら。


明日学校でどうだったのか聞くとでもしよう。


『三件目です』


画面には宅急便の服装を着た男性がいた。


『ピーンポーン。

「宅急便です!」

……

「ありゃ、不在か」』


その後宅急便の男性が不在票をポストに入れているタイミングで動画が終わった。


しまった、まさか宅急便が来るとは。

何かを注文した覚えが特にないので実家から仕送りでも送られてきたのかもしれない。


不在票を取りに行かなきゃいけないなと思ったのだがまだ動画が残っている。


多いな。


『四件目です』


画面を見るが何も映っていない。

いや、下のほうにぎりぎり頭のてっぺんみたいなのが見える。


子供か?


『ピーンポーン。

……』


小学5年生くらいの男の子が全力で走っていく姿が映っていた。


ピンポンダッシュだと……?

この御世代になかなか懐かしいいたずらをする小学生がいるものだ。


まあまあな迷惑行為であることは間違いないのだが一周回ってほほえましくなってくる。


俺じゃなかったら通報されかねないからやめとけよ、名前も知らない少年。


……まだ動画がある。

なんでこんなに多いんだ?


『五件目です』


サムネイルには朝来た友人の内の二人が写っている。


『ピーンポーン。

ピーンポーン。

ピーンポーン。

「弥栄!おい弥栄!やばいことになった!まずい!本当にまずい!」

「だからやめとけって俺は言っただろ!?」

「うるせえ今更後悔しても後の祭りだろうが!どうするどうするどうしよう!?」

「神社かお寺に行くか!?」

「つっても一番肝心な佐伯を置いてきちまったぞ」

「あ……」』


終わり!?

これで終わり!?


なんだ!?

こいつら何をやらかしたんだ!?


佐伯をどこに置いて来たんだお前ら!?


『六件目です』


サムネイルには何も映っていない。

またピンポンダッシュか?


『ピーンポーン。』


何も映っていない。

ただただ一番最初にインターホンの音がした以外何も聞こえない。


いや怖いわ。

なんだよこれ。


多分いたずらだよな、それかインターホンの故障?

どちらにせよ相当不気味である。


『七件目です』


これは……佐伯?

佐伯だよな?


明らかにやばそうなオーラまとってるし、肩に謎の手が乗ってるし、ずいぶんとげっそりしてるけど無事だったんだな!

いやあよかった!


『ピーンポーン。

「弥栄あ、助けてくれよ。頼むよ、こいつをどうにかしてくれよ」

ピーンポーン。

「あいつらひでえんだよ、俺のことを置いていきやがったんだ」

ピーンポーン。

「弥栄あ、お前も俺を見捨てるのかよ」

ピーンポーン。

「クソッ、全員許さねえからな」』


佐伯、お前は俺に何を求めているんだ。

八つ当たりで何かしらのやばいもの家に連れてきてんじゃねえぞお前。

本当にやめろよ、冗談抜きで訴えるぞ。


許さねえのはむしろ俺のほうなんだからな?


『八件目です』


映っているのは、いや。

何も映ってない。


俺には怨念にまみれた風黒髪ロング女なんて見えない。

誰が何と言おうと見えな、クソ、待て、勝手に再生すんな、これどうやって止めるんだ。


『ピーンポーン。

「みえてる?」』


見えてない見えてない見えてない見えてない。

何も見えてない。

そもそも俺は関係ない。


ていうかなんでこいつ一人で残ったんだよ。

佐伯どうした佐伯。


『九件目です』


『ピーンポーン。

「ねえみえてる?」』


『十件目です』


『ピーンポーン。

「ねえねえねえねえねえねえねえねえ」』


『十一件目です』


『ピーンポーン。

「みえない、みてない」』


『以上で録画の再生を終わります』


動悸が収まらない。

吐き気がする。

眩暈がする。


気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。


とにかく、万が一の時のために盛り塩をしなくては。

怖い。


やり方をちゃんと調べないと逆効果だと聞いたことがある。

怖い。


食塩でも大丈夫なのかがわからない。

怖い。


怖い。

怖い。

怖い。


でも、録画ラッシュは終わった。


謎の女も見えないことにしてくれたっぽかった。


大丈夫、何の問題もない。


その時、役目を終え黒く染まっていたモニターに再び動画が映し出された。


『ピーンポーン。

「宅急便です!ちょうど近くを通りかかったのでもう一度来たのですが!」』


一瞬死を覚悟したが、どうやら昼間にも来た宅急便の人がまた来たらしい。


「すいません今行きます!」


声を届けるボタンを押し、玄関に駆け出す。


正直今のタイミングで玄関を開けるのは不安以外の何物でもないのだが、宅急便が来てしまった以上無視もできない。


「弥栄様ですね?」

「はい、そうです」

「こちらの荷物にサインをお願いします」

「はい」


やはり実家からの仕送りだったか。


「それでは失礼しました」

「ありがとうございました」


非常に爽やかな笑顔を浮かべる宅配業者のお兄さんが帰っていったので、すぐさま扉を閉める。


大丈夫、女はいなかった。


多少可哀想ではあるが恐らく佐伯の元に戻っていったのだろう。

いや、余裕で自業自得だから憐れむ必要もねえだろうが。


部屋に戻るとまたモニターが点灯した。


『「しまったしまったしまったぞっと」

ピーンポーン。

「すいません!宅急便なのですが、もう一つ荷物がありました!申し訳ないです!」』


なかなかテンションの高い男だなと思いつつも、再び玄関へと向かう。


「すいません、サインをお願いします」

「はいはい」


これはあれか、前に出した懸賞がどうやら当たったらしい。

よしよし、運が向いてきている。


「今度こそ失礼しました!」

「はーい、ありがとうございました」


部屋に戻り、ベッドに倒れこむ。

一日のほとんどを睡眠に費やしていたというのに随分と疲れてしまった。


友達選びについて真剣に考える必要がありそうだと思いつつ、俺はゆっくりと目を閉じた。

意味怖って理解されてるかされてないかわからないよねっとこっそり後書き追加。


一番最後のモニターだけインターホンより先に声が入ってるけど

これ、なんで起動したんだろうね。

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