敵陣の中で 3
前話が誤って2話分載せてたのですが、自分的に文章が拙いので削除。
今回がその補てん分その1になりますが、
リアル仕事が忙しくて執筆時間がないのと、語彙力がなくて書き直しまくりで取り戻すのはまだ時間が掛かりそう・・。
それにしても、前話で2話分一緒に投稿しちゃうとか、酔っぱらい過ぎ!
それは偶然だった。カリナは何かを直感してイシュミルの目の前に手を伸ばす。
ヒュバッッ!!
「ぅあッ!?」
「嬢ちゃんッ!?」
風切りと共に衝撃がカリナの腕を貫いた。
それと同時に頭上から羽虫が飛ぶような様な音が聞こえてくる。
痛みで意識が暗転するのを堪えながら夜空を見上げると、そこには大量の矢降り注いでくるのが見えた。
「くぅ! ウィンド…違う、ストーンウォールッ!」
風魔法を発動させる直前でそれを止め、代わりに土魔法を唱えた。
飛んでくる矢の数が多過ぎて、風魔法では対処できないと判断したのだ。
足元から石壁が二人を覆うように盛り上がっていく。
ガンッ! ガガガンッ! ズガガガヵヵヵ――…ッ!!
咄嗟に土魔法を選択したのは正解だった。無数の矢がカリナ達を射抜こうと石壁を削るべく襲い掛かる。
凄まじい轟音の中、イシュミルを地に伏せさせてやり過ごした。幸いにも石壁は貫かれることなくカリナ達を護りきっていた。
そんな石壁も二人以外を護るほどの大きさはない。突然の襲撃に気付かなかった周囲から兵士達の呻き声が聞こえてくる。
「な……!? て、敵襲! 敵襲だぁ――ッ!!」
運よく難を逃れた兵士によって緊急事態が発せられ、途端に陣内が騒がしくなっていった。
*****
カリナは体の下に敷いていたイシュミルに声を掛ける。
「イシュミルさんは怪我はありませんかッ!?」
「あ、ああ…。儂よりも嬢ちゃんの方が――」
青褪めたイシュミルの目がカリナの腕から離れない。
それによって初めて気が付いた。左腕の肘から先が千切れて無くなっている事に。
慌てて周りを見渡すと、足元に転がっている手首があった。
「スマン嬢ちゃん…。儂を庇ったばかりに…」
その謝罪の言葉にカリナの方が驚いて振り向くと、イシュミルが肩を震わせて頭を下げていた。
顔色も先にみた時よりも青白くなっていて、まるで死にそうな表情を浮かべている。
「え? あ…、ええと…」
そんなイシュミルにを見て、反射的にカリナの方が恐縮してしまう。
イシュミルの人柄で好意にしてもらっているとは言え、二人の間の身分が違い過ぎるせいで、どう返していいのか分からなかった。
あまりに恐縮するイシュミルの姿を見て。カリナは慌てて取り繕うが、イシュミルの頭は中々頭を上げようとしない。
どんなに強がって見せても、イシュミルの目には未来ある子供の腕が失ったという事実には変わらないのだった。
「えと…、大丈夫です! 見た目ほど傷は深くないですから!」
誰がどう見ても、致命傷の一歩手前と言える程に深手を負っている。
だが貴族の中でも最上級、それも大領主である侯爵に頭を下げられる事態に理解が追いつかないのだ。
一応一般階級ではあっても種族的にはそれ以下で、他者からはからわかれたり侮辱される事はあっても褒められることには慣れていない事もあり、つい舞い上がってしまう。
だがそれは寧ろ、カリナの心を支える要因となる。
実際、深手を負っている事を自覚した途端、痛みが出血と共に溢れ出してくる。
自分の腕が落ちているという違和感によって気が変になりそうだった。
そんな状態ではあったが、ここで取り乱す訳にもいかないと踏みとどまり気を持ち直すことが出来たのだった。
(時間は掛けられない。すぐに止血しないと本当に死んじゃうかも…!)
いつ再び矢の雨が降ってくるかも知れない状況。時間を浪費するつもりはなかった。
カリナは意を決して地面に転がっている手首を掴むと、傷口と繋ぎ合わせるように手首を添えて治癒魔法を発動させる。
「く…、ぐうぅぅウゥゥゥゥ…ッ」
多少は覚悟をしていたが、予想を超えた激しい痛みで声が漏れる。
例えるなら、塩を塗られる様な辛い痛みに傷口を侵され、それと同時に肉と肉、皮と皮が溶け合っていく感触と、急激に高められた治癒力から体力と気力を貪られ絞り出される感覚。
数十秒の出来事でも、耐えきれずに吐き気を催してくる。
「と、トロルもこんな気分になるのかな…? ウプ…ッ!」
冗談で誤魔化そうとした端から余裕が漏れ出ていく。胃が逆流してくるのを何とか堪え治療を続けた甲斐があり、何とか出血は止まり腕を繋がるまでに至った。
「嬢ちゃん、気を確かにせよ! すぐに人を呼んでくるからなっ!」
「はぁはぁァ…。も、もう大丈夫。それよりも今はまだ動かないで。…2射目、来ます!」
勢いよく立ち上がろうとするイシュミルの腕を腕を引きその場に止めると、カリナの言葉に合わさるように再び矢の雨が降ってきた。
それによって見張りの兵士を全て射止められる。その直後に『敵』が陣の内部へと雪崩れ込み、付近では剣戟を響かせながら火花が散らせている。
幸いそこからここまでは距離があった。
急いで状態を確かめる様に腕を動かそうとするが未だ感覚が戻ってこない。
全く動かない腕に次第に焦りが積もっていく。いつまで治療を続けるか悩む事になったのだ。
(血は止まってるなら、今はこれで十分かな。このまま時間を掛けても治るかどうか分からないし)
それは貫かれた際に受けた矢の衝撃により、欠損が激しすぎたせいだ。
このまま下手な治癒を続けても後遺症が残ってしまうかも知れない。
だが、腕には千切れた傷痕が痛々しく残ってはいるが、少なくとも出血は完全に止まっている。
内部の治癒がどの程度進んだのかはわからないが、今はこれで良しとする事にした。
自分の腕の事なのに、何故か他人事のように考えてしまっていると気付き、カリナは苦笑しながら治癒魔法を止めた。
顔を上げるとイシュミルが石壁の影に隠れながら周囲の様子を伺っていた。
「…暗くて殆ど見えんな。 せめて襲撃者が何者かが判ればいいのじゃが」
「ボクが見てみます」
イシュミルに代わり体を起こすと辺りを見回す。
周辺の状況確認など『夜目』が利くカリナには星の光ほどの微かな光源があればそう難しいことではない。
陣の出入り口には備え付けではあったが『敵』の侵入を阻む為の柵が設けられていた。だがその辺りは既に『敵』の手によっては占拠されている。
カリナ達と討伐軍の間では戦いは終わっていた矢先の夜襲。殆どの兵士が対応出来なかったのは油断としか言いようがない。
だが、そんな事より驚いたのは襲撃者の正体だ。カリナはそれに見覚えがあり、思わず目を大きく見開いて敵を凝視する。
「あれは……生死人!? 生死人が武装してます!」
「何じゃと!?」
「ここから見えるだけでも100…いえ、200体! こっちに来てますッ!!」
それらは死臭を漂わせながらカリナ達に迫っていた。




