第九話 地獄
ところで。
これでも俺はまだ高校生。しっかり学校に行かなければならない。
だが、最近はと言うかダークサイド日影を見てからは中抜けが目立つようになった。
「何か忘れている気がする…」
「ねぇ太陽、そろそろ中間テストだけれど…勉強してる?」
…そうだった。そういえばそういうものもあった。
そういえば、ダークサイド日影と出会ってから、生活が一変した気がする。
友達が遠慮して体育以外はあまり会話しに来てくれなくなった。勿論、どちらかが用事で一緒に帰れなかったりすると、友達と一緒に帰路につく、と言うこともあるが…。まぁ、基本単独行動することがないので、そんなの俺が呼び出しを食らったり、追試になったりと言うくらいしかない。
…頭が良くて何でもできる、外見も良い、仲間も多い、才色兼備、八方美人である日影は羨ましい。というかずるい。寝て、起きたら体が入れ替わっていたりしてくれないだろうか…。
また、親が死んだ。こんなことになるとは、想像もできなかった。
住む家が変わった。生まれてから、引っ越しをしたことはなかった。しかし、親が死んでからは完全に先生の家に住んでいる状態だ。
本当に色々変わった。もっと探せばまだまだ沢山出てくることだろう。
「全然やってねぇな…」
「…何、この間は…」
どうやら、1分くらい黙って考え込んでいたらしい。
「じゃ、頑張って」
颯爽と去っていく。
「待って……。教えてくれよ~…」
どうやら、他人に教えるというのが苦手なようだ。
今日は中抜けもなく、帰路につくことができた。尚、日影付きである。
「で、どうすれば点とれるようになるんだ…?」
「ちゃんと睡眠不足にならないように睡眠をとる。それだけ」
「いや、それだけなら俺だって…」
「授業中に寝るようじゃ認められない」
…何でだYO!だってつまらないじゃない。みんななら分かってくれる…よね。適当過ぎて辛いです…。
「なら勉強法だけでも…」
「私の勉強法は企業秘密、特許技術だから教えない」
「…はあ…そんなに教えたくないのかよ…」
また適当なことを…意味は違うが。
「それは置いといて、こんな時期に仕事とか…ないよな?」
「私のところには入ってきていない。ただ、いつ入るかは分からない。もしかしたら、テストの時に入ってきて、0点とかも」
「それは勘弁してくれ。まぁ、被害が大きくなるのは日影だがな」
「そうだった…太陽をいじるのに夢中だった」
「何だ、俺は遊ばれてんのか」
女に遊ばれるのは何か癪だな…まぁ、こんな馬鹿で変態である俺に構ってくれるだけまだマシか。普通の女、または波長の合わない女なら俺はすぐ捨てられることだろう。…童貞も持ち去らずに。
などと考えていると、案の定横から禍々しい妖気とともに冷たい視線が送られる。下ネタを受け付けない体質らしい。…だとしたら、俺とは波長があるはずがないと思ったりするのだが、気にしない。
「…本当に教えてくれないのか…」
「教えるの、下手だから、無理」
「それ先に言おうか!」
やはりそうだった。
「…人に教えられないことは、恥でも何でもないぞ。逃げることよりはな」
「テストから逃げようとするのは止めてね」
「折角フォローしてやろうと思ったのに、それは仕打ちが酷くないですかね?」
「太陽なら大丈夫、ついてこれる」
…何だ、スパルタ教育でもやろうってか?
………
……
…
上等だぜ!男が女に負けてなるものか!…ところで、これって古い考えなの?周りから変な目で見られているのだが…。
何とか家に帰って来れた。授業は疲れる、視線に疲れる、いじりに疲れる。きつい、気が遠くなる、危険。もはや3Kである。
「はあ、全然集中力が続かん…」
「人間は集中力が長く続かないものなの。1時間に1回、小休憩を取りながらやるとずっと続けて勉強をするより効果的」
「そういうこと分かるなら言ってくれればいいのに…」
「流石に知ってるかと…クスクス」
「笑いながら言うなよ…」
それにその笑い方不吉である。よく、人を馬鹿にしたりするときに使われるものではないか!
まぁ、その教えのおかげで勉強は今までにないほど捗ったからいいが…。
「あぁ~今日も大変だ~」
呑気に帰ってきたのは諸悪の根源、テストを作っている邪悪なる教育従事者である。
「そこの先生、勉強教えて」
「それくらい自分でやりなさいよ…。こっちは色々仕事が…」
「先生は俺が追試になってもいいと言うのか…」
「当たり前さ。正直私の評判が下がらなければどうなったっていいさ」
「うわぁ…」
酷い言い方、酷い仕打ちである。日影以上の悪魔がここにいた。
こいつらは俺に「死ね」とでも言いたいのか…それほどの仕打ちである。
日影のはまだ「いじり」で通るかもしれないが、先生のは一歩間違えれば「いじめ」レベルである。
実は語っていないだけで二人には沢山遊ばれてきた。
「いじり」と「いじめ」は僅か1字しか違いがない。つまり、いじりといじめは紙一重。こいつらを含めてみんなに知ってもらいたいものである。
まぁ、一人寂しいよりはずっといい気もする。ただアニメばかり見るのでは完全に根暗認定されてしまいそうだ。
「おーい飯だぞー」
飯は美味いから許す。料理教えてほしいくらいだ。
…何だかんだで許すから付け上がるのかもしれない。
夜。やはり勉強は繰り返しやって覚えることに意義がある。そう思っているが…。
しかし、やはり社会出て働き始めると休み時間、日数は確実に減る。
今、やりたいことをやらずして、いつやるというのだ。
…ということで、ゲームをしていた。
「格闘ゲームはやっぱりこれに限るわ…」
「で、何で日影、お前がいるんだよ…」
「休憩は大事。勉強は必要な分だけやればいい。限られた自由な時間、自分のしたいことをして有意義な時間を過ごしたいから」
…変な所で意見が合い、波長が合う。これだからこんなになってしまうのか。
…すると突然、謎の感覚に襲われる。…これは、久しぶりだ…。
『任務を与える。この地図が示している【アリアハン】という組織を滅亡させよ。以上』
「…承知しました」
アリアハン…?これ、何かで聞いたことある地名…。まぁ、そんなことは置いておこう。
また、任務が入ってしまった。そして、長期戦が予想される。
何とかしてテストまでに間に合わせないと、組織の人間としてはともかく、高校生としては大変なことになってしまう。
何故こんな面倒な、そして本当に平和の為なのか分からない怪しい動きが続くのか。
謎と面倒臭いという思いが溢れる。
しかし、今はやるしかない。これが良い行為でも、悪い行為でも…。