第八話 最高に残念な休日
俺は、地図の差している方へ向かう。
相手は一体何を考えているのか。
組織に恨みがあるのか、身代金目的か、俺を呼び出す為の盛大な罠か…。
色々な考えが頭を過ぎる。
また、相手は男で、攫われたのは女である。若しかしたら、性的な行為をするためと言う可能性も…。
その上、相手が男一人とは限らない。一人しか出なかっただけで、本当は数人いたり、女性も中に混ざっている可能性もなくはない。
若しもそうなら……。
「…何故お前らだけで愉しもうとするんだ!俺も混ぜろ!…俺だって…俺だって………!」
………じゃなくて、とても腹立たしい。そして、仲間の貞操を守れなかったという悔しさが一生付き纏うことだろう。
まぁ、俺はそんな酷いことにはならないことを願う。それしか今は出来ない…。
などと考えている内に、目的地に到着した…って全然進んでいない。どうやらずっと立ち止まって妄想に耽ってしまったようだ。
何かを考えながらだと遅くなったり泊まったりしてしまうので、仕方なく無心で歩く。
僅か20分で着く距離だった。…20分って僅かか?そんなことはどうでもいい。
取り敢えず近づいてみる。
大きい建物だがボロボロで、人がいるような気配はない。俺も、誰かを誘拐するのであれば、こういう建物を選びそうだ…。まぁ、特徴が多いため簡単に見つかる気もするが…。
…突然、また謎の人物が現れた。が、前見た人物とは違うものだった。
『我がアジトへようこそ、哀れな子羊君よ。ごゆっくりおくつぐ………………おくつgrgk……』
「…噛みましたな」
大笑いして煽ると、姿が突然消えた。
…で、一体中に入って何をしろと言うのか…?
俺は、よく分からぬまま中へ入っていった。
外見が途轍もなかったため中もそうなのだろうと思っていたが、そうでもなかったようだ。
ただ、電気は一切点いておらず真っ暗だ。子供の頃はこういう場所が好きだったなぁ。
お化け屋敷ではお化けを脅かしたり、胎内めぐりも楽々だった。
と思い出に浸っていると、奥に人が見えるのが分かった。
恐る恐る近づいてみると、そこには大きな機械が…。
「こんなんじゃ駄目でしょ…」
「…もっと工夫が必要」
…何やら話しているようだ。しかも、よく見ると先生と日影が相手を尻に敷いているように見える。
「…何やってんだ、二人とも…」
「太陽が来た。もう終わり…」
「約束は守らないとな。有名企業だしね」
「そ、そんな…ま、待って…HIKAGENONさん…AMAMITTIさん…」
そんなに大事なのか?甚だ疑問だ。
とても困ったような顔を見せる男だが、こっちはもっと困っているのである。
二人が誘拐され、余計な心配をかけたというね。
「で、何やってたんだよ…日影…」
「…あの有名なメーカー、遊びの楽園株式会社さんのゲームをね…」
「そんな下らんことで…こんなことを…」
しかも、クソゲーばかり出すことで有名な遊びの楽園株式会社だ。ある意味性的なことをやられていたレベル、いや、それをも超える腹立たしさだ。
「…先生、腹立つからアン・インストールしていい?」
「ま、誘拐っていう犯罪を犯した訳だし、組織としても、メンバーが犯罪被害に遭ったんだ。許してくれるはずだ」
「…アン・インストール…!」
綺麗に相手は消え去った…。
「これで終わりか…何か最高に下らなかったな」
「ま、毎度毎度任務よりはマシじゃない?」
「…こっちは、怖かったんだから…そんなこと、言わないでよ…」
実はずっとびくびく震えていたのだが、どうやら恐怖に怯えていたようだった。
…怖いのを和らげるために慰めていたのかと……
風を切る音とともに、勢いよく何かが頭に衝突する。
「な、なんだ!?痛てぇ!?」
「…変な妄想するから…」
顔を真っ赤にして呟く日影、いとうつくしゅうていたり。…あまりの恐怖でずっと立つこともままならなかったらしい。
「ま、無事に来てくれてよかったよ。遅いから途中でやられているかと思ってたぞ」
「…何でこんなに遅いのよ…」
「何で助けに来たのに俺、責められるんだ…?」
…思い当たる節はあるが、黙っておこう。
「…ねぇ、男の人ってみんなこうなの?」
「そうだね。そういうことを考える人は多い。でも、太陽は悪い男じゃないさ。私が保証する」
「…何の話かな?」
「んー。関係ない話かな」
…どう考えても俺の話…もとい、俺の悪口を言ってないか…?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
兎に角、無事でよかった。
「…何もされなかったんだよな?」
「日影ちゃんは無抵抗だったから何もされなかったけど、私は抵抗し過ぎて危うくリ〇コンバ●ブ突っ込まれるところだったわ…」
「…何事もなかったようだし、みんなで帰るかー」
「私の話聞いてたー太陽君ー?」
兎に角無事でよかった…。
が、休日がこういったことで悉く潰されるのは勘弁だ。