第七話 よくわからん
ここ最近は、任務もなくゆったりとした生活を送っている。平和はいいことだ。
そして、この先生の家…凄い、興奮するぞッ…!
そんなことはさておき、我々はまだ高校生なのである。
先生の家…と言うことは、勉強をしない訳にはいかない。と言うか、強制的にやらされている。
「…折角の休日が勉強で潰されるとは…」
「いい?高校は、遊びに行く場所ではなく、勉強しに行く場所なの。だから、学生の本分は勉強なの。勉強しないでどうするの。今の世の中、いい学歴じゃないと、いい仕事は出来ない。今苦労しなかったら、今後の長い将来、苦労することになるの。それから…」
兎に角話が長い。日影は、悟りを開いたのか、黙々と、そして延々と勉強している。
「さぁ、そろそろ休憩の時間だ」
唯一の救いは、約1時間勉強すると約20分の休憩ができるところだろうか。
人間の集中力は、長くは続かないという。集中力が切れた後も続けてやっていても、集中力が高い時に比べて記憶力などが劣るという。そのため、何時間も続けて勉強する人ほど満点近く取れることはあっても、満点自体は遠いらしい。
また、勉強は頭、そして目を酷使するため、休憩にゲームなどの目を酷使するものは避けた方が良いという。
「今日はこれで終わり。二人ともお疲れ様」
「やっと終わったよ…」
「………」
無言でテレビに向かう日影。どうやらゲームをやるようだ。
外見的にはガリ勉っぽい秀才だが、実は超ゲーマーであり、アニメも好きなんだとか。
尚、あまりにもはしゃぎ過ぎていたための行為だったのか、一緒に泊まった時のような大胆なことはしてくれなくなった。恥ずかしがり屋の女の子、可愛い!!
「凄いものだなぁ…」
ゲームの腕は相変わらず圧巻だ。
RPGは手際よく進み、格闘ゲームも恐ろしく強い。どんなジャンルも易々とやっていた。
「…やってみる?」
突然声を掛けられた。それは、お誘いの言葉の様子。
「…よし、やってみるか。この俺の実力を!」
…結果はお察しください。
「そうだー。二人とも、菓子食うか」
…もう午後3時になっていた。朝食べてから勉強し、昼を食べてからもちょっと勉強し…遊び…。
休日とは、何故こうも進むのが早いのか。困ったものである。
「…見たことないお菓子だなぁ…」
「あぁ、これは『正気の山』と『狂気の里』だよ。組織でもらったやつ」
「…毒とか入ってないだろうなこれ…」
「…何これ、怪しい…」
どう見ても怪しいものである。名前もそうだし、外見もとてつもない。
原材料名も「正気」と「狂気」しか書かれていない狂気のお菓子である。
でも、食べるしかない。折角のお菓子を食べない訳にはいかない。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ…あれ?」
普通においしいものである。とてもいい時間だ………。
『3人とも、今すぐ来なさい』
「はっ、仰せの通りに。」
始まりました。任務がないとか言っていたら任務が来る。何てことだ。
『今度の任務はこれだ』
どうやら、『カリスト』なる組織の本部に入り、綺麗に抹殺するとのこと。
俺たちを含む39人で、1000人もいるところで暴れるというのだ。とても大変なものになりそうだ。
『結構な重労働になるかもしれんが、頑張ってくれ給え』
何だか、捨て駒のような感じである。が、逆らうことなどできやしない。逆らえば俺らが消されるからだ。
「仰せの…通りに…」
先生も苦しそうに言っていた。
戻ると、覚悟したように先生は言った。
「…行きましょう。サボって殺されるよりはマシだからね」
そして、地図を頼りに向かっていく。
「…長いものだな」
「まぁ、隣町だからね」
「…きゃっ…!」
叫び声が聞こえて振り返ると、そこには日影しかいない。
「どうした…?」
「……………」
何かをブツブツ呟いているようだ。中二病に見えて仕方がない。
結局、到着するまでずっと何かを呟いていた。
「でかいなあ」
「これはきついね」
「…どうして…」
こんなでかい場所で39人が1000人をアン・インストールすることは非常に難しい。
「アン・インストール・ジェノサイド…」
初めて聞く呪文。それを唱えたのは日影だった。
相手の組織の建物に命中。
「建物に当たってるじゃん…意味あるのか…?」
その瞬間、建物ごと光り、消滅した。
「えええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
「…まさか、こんな技を覚えていたとは」
「なぁ、日影…。いつこんなの覚えたんだ?」
「さっき。何か呟いてたでしょ、あれよ…」
何だか、あっさり終わってしまった。
「帰るか…」
「さぁ、ゲームの続きだ!」
「やりましょう」
「先生もやっちゃおうかな~」
全員でゲーム…いいものだね。
…その後はよく覚えていない。
朝起きると、二人が消えていた…。
『…ゆうべはおたのしみでしたね…』
後ろを振り返ると、謎の人間がそこにいた。
『二人は預かった。返してほしければこれからすぐここまで来るのだ』
地図を渡され、姿が消えた。
一体どうなっているのか、俺は理解できなかった。