第五十六話 お馬鹿さん/サイコパス
そこには、一人の女がいた。
「うーん……誰だ起こす者は…」
寝ていた女は低い声を発して起床する。
「女……いや、男か」
「男の娘キタ━(゜∀゜)━!」
男の娘が目の前に現れて興奮する太陽。二次元でしか見たことがなかったようで、目を光らせている。
「………太陽、そんなことやってる場合じゃないよ」
「ファッ!?そうだったわ…」
「じゃ、おふざけはこれくらいにして、本題にいこうか」
杏莉が先陣を切る。
「何故こんなことをした」
「こんなことって、なんだい?」
何故かここですっとぼける男の娘。仕方なく、それに答えるべく口を開いた杏莉だったが、ここで問題が発生した。
「えーと……何だったっけ…忘れたよー」
「自分自身が分からない話をふってくるんじゃないよ…」
杏莉の言葉に、呆れる男の娘。彼に続き、日影も呆れて言う。
「忘れるなよ……何故巨大な人工地震を起こしたのかを訊きに来たんだろうが」
「仲間に咎められるなんてね…プププ……」
男の娘に馬鹿にされた杏莉。顔を真っ赤にして騒ぎ立てる。
「うるさい!ちょっと度忘れしてただけだし!」
それを少し離れたところで見ていた高校生二人。
「こんな大人にはなりたくないな」
「こっちが恥ずかしいわね」
「うるさい!ちょっと離れていても聞こえてるからな!」
それから約一時間。杏莉はやっと落ち着きを取り戻した。
「大変お見苦しいものを見せてしまいすみませんでした。で、何で巨大な人工地震を起こしたのか」
「そりゃ、君たちを誘き寄せるためさ。最近は大活躍していると風の噂で聞いてね」
「…何のつもりだ」
「そりゃ………言うまでもないだろう。」
そう言った瞬間、男の娘は日影に向かって一直線。女子高生ということで、最も狙いやすい相手だと勘違いしたのだ。
最も狙いやすいのは、男子高校生、もとい太陽の方だというのに。
男の娘は、一瞬のうちに日影によって捕らえられる。
「何………!?女子高生なのに…何だこの力は……」
「相手を間違えたわね。女子だから、まだ大人じゃないからって、甘く見ていたわね」
「何故君は抵抗しないの?抜け出せるかもしれないのに」
煽りだす天水。そして、杏莉もそれに乗っかる。
「男が女に力で負けるなんて、情けないね」
「うるせえ!コイツがカイリキーなんだよ!」
「カイリキー……」
「これは破壊力抜群だわ」
「俺には言えないことを…」
唐突のカイリキー発言に笑いを隠せない太陽、天水に杏莉。そして、怒りを露にする日影。
「久しぶりに使うわね…。最近は仲間にしてばかりだったから……」
「!!!???」
日影の発言に震え上がる男の娘。怒りを露にした日影の獣のような眼光に、棘のある口調。
「流石にこれは…」
「私たちでも…」
「怖いわ」
人差し指を天に向け、その後、その指を男の娘に向ける。
「さぁ、くらえ……アン・インストール」
「な、何を…ぐわああああああぁぁぁぁぁぁああぁぁああぁぁぁぁぁあああああ……」
「こりゃ残酷だ…」
「酷いキャラ崩壊ね」
「最早ゲーム感覚でやってるよねこの人」
家に戻る。まだ電気は復旧しない。どうやら、発電施設に破損が見受けられており、復旧が遅れているという。
「…結局、何をするつもりだったかは聞けなかった…。残念」
「そりゃ、お前が、日影が言う時間を与えなかったからな」
「いつの間にか捕まえて、脅して、そしてアン・インストールして…」
「流石に可哀想だった」
「…みんな、その目は何………。みんなもやってほしいの?」
「ヤンデレ属性は不要」
ゲームは出来ず、電池切れでスマートフォンも使えず。たまには、皆で会話を楽しむのも良いかも。そう思った一同だった。
「でも、できれば残酷な話とか以外がいいな…。楽しい話とか……」
「そこは日影次第だと思うぞ」
「そうだねぇ」
「………」
「最後に一つ。日影…。サイコパスなんじゃね?」
太陽の『日影はサイコパス』発言に対し、日影は反応に困っているようだ。
「「「いや、真っ先に否定しろよ」」」