第五十二話 男同士の
一方、太陽は、男友達数人でアミューズメント施設へ行き、そこで様々なゲームを楽しんでいた。
「やっぱり皆凄いな…。どうやったらこんなに上手くできるんだか」
「やっぱり場数の問題だろうな。誰だって最初はこんなもんさ。俺も昔は下手で、周りの意気がっていた奴らに睨まれて睨まれて…」
「何か…大変なんだな」
有明衛の話を聞いて、「俺も」と他のメンバーも話に参戦。
「で、皆凄い腕前になった訳だけれども…。下手くそな奴のプレイ見てぶっちゃけどう思う?」
「まあ、下手くそだなーとは思うよな」
「正直、イラっとする。馬鹿にしているのかと」
「新参でも?」
「そりゃそうさ。やっぱり下手なものは見たくないわな」
どうやら、一部の上手な人間が新参を叩く。これは終わりの見えない残念なものとなりそうだ。
もうすぐ12時になろうかという頃までずっと同じゲームをやり続けた。実に3時間弱。あまり上手くできないし、正直開始30分でつまらなくなっていた。
「ここまでできた俺を褒めて褒めて皆さん」
「いきなりどうした」
「ただの妄言だ…」
思ったことがすぐ口に出る。これは困ったものだ。突然関係のない事を口走ったり、色々。普段は下ネタばかりが口から出る訳だが…。
昼食はファーストフード。すぐ近くにあったハンバーガー店に入店した。
昼時というだけあり、とても混んでいる。少なくとも10分は待つことになるだろう。
「流石に暇だな…。可愛い子でも探すか…」
「そうだなー」
「それは名案だ!」
「タケちゃん有が武!」
豊滝有武の下らない案に乗っかかる一同。勿論、この話に太陽が乗らないはずがなかった。
「やっぱり順番待ちの定番だよなー」
そう言って皆に混ざり美女捜索を開始すると、何故か白川駆俺の目の前に両手を置いて視界を妨げる。
「いきなり何するんだよ駆」
「日影さんを悲しませる訳にはいかないからさ」
「駆は本当に友達想いの良い子だなー」
「そうだぞ!彼女持ちがやるべきことじゃない」
全員揃って太陽を貶しにかかる。
「それなら俺の居る所でこんな案出さないで…」
真剣な声で、真剣な顔で言い出した太陽に動揺したのか、皆少々焦った顔を見せて言った。
「じょ、冗談だよ…。太陽が浮気するような人間であるはずがないだろうしな」
「よし、探すぞー!」
そう言って探し始めて数秒、早速砥山情が美女を発見。
「あ、あの人良くね?」
「確かに」
「ありゃいいや」
「でも、もう少し胸があると良いよなー」
「まぁ、そう簡単にすべての条件に合った人間が出てくるはずないか…」
青春とは良いものだ。男同士の友情は良いものだ。日影たちとのやり取りも良いが、こちらも良い…。
「楽しくて、平和な時間がずっと続けばいいのに…」
「一体どうした…」
「ただの妄言だ」
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
気づけば、もうカウンターの前まできていたらしい。慌てて注文を始める。
「じゃ、これで」
「俺はこれー」
「これが良いかな」
「やっぱりこれだよね」
皆即決したが、有武だけ少々迷っている。
「そんなに迷う程なのか?」
「早くしてね」
「流石に遅いぞ…」
「タケって言う時緊張するタイプとか?」
色々言っている内に、有武は、意を決して注文をする。
「うさぎです」
「やめーや」
皆、ギャグマンガのように崩れ落ちる。
「悩んでそれかよ…」
皆注文を済ませて数分後、完成した商品が無事手元へやってきた。
「ふうー…。待った甲斐があったぜ」
「迷ったらファーストフードだなー」
「外れが少なくて良いわ」
「栄養的には問題だけど、ついつい手が出てしまう…」
「そして、大量に食うのがお約束だよなあ」
食べ過ぎには気をつけないとと思いつつも、結局は満腹になるまで食べる一同だった。
ファーストフードは正義。
昼からは、皆で映画館へ直行。偶然にも全員観たい映画が一致したため実現した。
男友達数人で映画。青春らしくて良い。
「映画始まるまでの間っていつも暇だよな」
「そうなんだよなぁ…」
「もう少し開場を遅くすれば良いのに…」
「何しようか…」
「美女探し!」
「タケは本当に美女探しが大好きだなぁ…」
今回は誰も賛同しなかった。流石に、この空間では上手くできないと感じたからだろう。周りを見渡せば、それは明白だった。
「流石にこんな男だらけの空間に女がいるはずないわな」
「いたら奇跡。泣いて喜んで、拝みに行って性的行為に走るレベルだ」
そう言った瞬間、女性が入場してきた。
「いってらっしゃい」
「やらないよ!?…本当はやりたいけどさ、こんな人が見てるような所でやったら絶対お縄だしな」
そのような言葉が出てくると、やはりこう返す男たち。
「…誰もいなかったらやるのか?」
そして、それにこう返す男。
「…勿論さ!」
「やっぱりな」
「ま、男として当然だよね」
「正確には『童貞』も加わる訳だが」
「うるせえ!」
映画を観終わってからは、これも定番中の定番、カラオケへ。
「映画も良かったし、ゲームも良かったし、最高の締めくくりにしようや!」
「「「「おー」」」」
アニメソングやJ-POP、バラード等々、数々の曲を歌い、店を出た頃にはすっかり日が暮れていた。
「これぞ青春!っていう1日を過ごせる日が来ようとは…」
「男との遊びはあまりないけど、普段は日影さんとキャッキャウフフしてるからいいじゃん」
「そんなことしてないから…。出来るものならしたいよ。性行為でも何でも」
「すればいいのに」
「いや、勢いでやったら、その後絶対気まずくなるし…。それくらいならしない方がいいかな」
「まあ、どうせ大人になってからやるんだろう。俺らが血眼になって彼女探している時にな」
「…そう考えると無性に腹立ってきた」
「落ち着け」
本当に、こういう日常が続けば良いのに。そう思った。
しかし、それは、そう簡単に叶うものではなかった。