表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/58

第五十一話 日影の想い

 朝。日影は、大きく朗らかな声の出発の挨拶により目を覚ました。

 朝食を摂るため居間へ行くと、そこには何かしらの会議をしている天水と杏莉がいた。

「…何しているの…?」

「あの子、友達いたんだね」

「そうなんだな…、担任ではあるが、目に付くところでは日影といちゃいちゃしてるからな…。男友達なんていたのか」

 聞く限りでは、太陽に失礼な会話を交わしているようだ。

「(………。混ざりたいなぁ…)」

 そう思った直後、天水が日影に近づき、清々しい笑顔で言う。

「何だその目は…。会話に混ざりたいんだろ?遠慮するなよ」

「いや、そんなこと…」

 廊下と居間の間に立っていた日影は、慌てて否定するも、手を引かれて食卓前の椅子に座らされ、半ば強引に仲間入りさせられる。

「…何で分かったの?」

 そこがとても気になる。出来るだけ、思考が顔に出ないように気をつけてはいる日影だったが…。意外な所に落とし穴が。

「顔には出ないけど、目で分かるんだよな。これだけ一緒に生活していると、段々と目に隠された感情が見えるようになって来てね」

 『目だったか』と気を落とす日影。

「そうなの…。これから気をつけないと…」

「で、日影ちゃんには一回訊いてみたかった事があってね~」

「…杏莉さんはあまり私や太陽の事は知らないものね…。何でも良いよ」

「何でもか…。じゃ、その言葉に甘えて…。…太陽君とはどこまでいってるの?」

 杏莉が日影に仕掛けてきた質問は、範囲が広いものだった。『恥ずかしい質問では無くて良かった』と、少し安心して杏莉の質問を聴いていると、突然措定外の質問が飛び出す。

「どこまでって言われても…。どういうことなのか…」

「例えば~…。性行為とか!」

「な、ななな…何言ってるんですかぁ!…」

 ほぼ初対面の相手に対してする質問ではない。この不意打ちに、日影は肯定の言葉も否定の言葉も出せなかった。ただ赤面して、するどいめでいかくする。

「杏莉は相変わらず容赦ないね…。私もよく重いジョークに付き合わされていたっけ…。まぁ、小さい時からこんな事ばかり言っていれば、気持ち悪がられるのも無理はないかもしれない…」

「…どこまで進んでるの?真面目に、知りたいなぁ」

 仕方なく、本当の事を答えることに決めた。

「…手を繋ぐこと…くらいかな」

 それを聞いて、杏莉は驚愕した。天水から約1年の交際と聞かされていた為であった。普通なら、1年も交際していればもう少し進展しているはずなのだが。

「え?そうだったのか?てっきりちょっと体触らせたり、押し付けたりはしているものかと思っていたんだが…。いや、ただの『体』ではなく、胸を揉ませて…」

 天水までもがこのような事を言い、日影は、羞恥心により、その場から逃走してしまったのだった。

「…ちょっとやり過ぎたかね」

「あんなことは言ったが、実際そんなことやっていたら、高校生としてはちょっとな…。」

 部屋に戻って閉じこもった日影は、二人からあのような事を言われて、色々考えることにした。

 何故私はそのような事をしていないのか。

 高校生だから、まだ早いとか?

 性に塗れた変態女にはなりたくないとか?

 勇気がなくて、太陽からのアタックを待っているのか?

 将又、太陽に恋愛感情などないのか?

 …いや、それはない……と思いたい。

 ただ、今までの太陽からの行いは、元々、私が太陽にそれなりに好意を抱いていなければ堕ちないようなものばかりだ。

 優しい面などがある反面、不可抗力による性的行為をしてきたり(実は態とである可能性もある)、私で性的妄想をしたり、その他最低な言動の数々。

 こうして考えてみると、普通ならボコボコにして絶縁するレベルの仕打ちを受けている。

 でも、今の日常が悪くない、寧ろ良いとまで思っている。と言うことは…。

 そうか、私は…。

 日影の体に快感が走り、それから意識を失った。


 目を覚ますと、そこには天水と杏莉が。二人は、何故か清々しい笑顔で私を見ていた。

「「性の悦びを知りやがって!………さっきは流石に言い過ぎた。」」

「まさか、閉じこもってこんなことをするとは…。変わったものだ」

 黙ってちょっと乱れた服を整えると、羞恥心により、その場から逃走してしまったのだった。

「まさか、自慰行為をしてしまうとは…」

「まぁ、仕方ない。日影ちゃんくらいの年齢になってくると、少なくとも2人から3人に一人くらいは自慰行為をしているらしいし」


 昼食の時間は、非常に気まずいものとなってしまった。

「あ、そうだ。日影ちゃん、太陽君の事どう思ってる?」

「杏莉…流石にもうやめて差し上げろ」

「…実はさっき、部屋でずっとそのことを考えていたの…。そして、結果が出た」

 それを聴き、二人は息をのむ。

「…私は、本当に太陽が好きだったんだ…。いつもは不可抗力で…ばかりだったけれど、少し勇気を出して頑張ってみようかな…」

「…絶対応援するからね」

「いつか言わせてくれよ?『ゆうべはおたのしみでしたね。』ってさ」

「頑張る。…今日から実践しようっと…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ