第四十六話 おかしな男/想い
石山大志なる大男は、俺らに詰め寄って更に会話を発展させていく。
「で、この二人の高校生くらいの子たちは…子どもか?随分若くして産んだんだな」
「子どっ…そんなはずないじゃないか…ただの教え子さ」
「教え子とイチャイチャかい?子どもの頃の夢を叶えられて良かったね」
何やら面白そうな話をしている為混ざろうと思ったその時、石山の方からこちらに声を掛けてくる。
「天水とはどんな関係なの?」
「禁断の…」
「背徳恋愛的な関係です」
ノリの良い日影。俺のボケに馬鹿みたいな言葉を重ねる。
「お~…。詳しく聞かせてよ」
「聞くな。二人は敵を前にしてふざけないでくれよ…。余計な解説をしなきゃいけなくなったな…」
更に石山は近づいてきて、内緒話をするような状態て話しかけてきた。
「二人はぶっちゃけ、この組織…サイゼーヒ…だったかな?についてどう思うのよ」
まさかの質問だった。一応、思っている事を全て彼に話すこととした。
「そうなのか…。この組織に疑念を持っており、幸宣歩と手を組みたい、そして俺の発言から、俺も仲間に加えたいということか…。そういうことならいいぜ」
「幸宣歩さんと友達だったの?そりゃ有難い」
「感謝しないといけないわね」
「まだなの~?」
先生の声がしてくる。
「もう少し待ってて?」
「もう30分経っているんだけど」
「…ホモはせっかち」
「私は女だ」
急かされたため、仕方なく石山と連絡先を交換し、続きは電話やメールで行うことにした。
それにしても、先生の周りには面白い人…と言うかおかしな人が多いなと思った二人だった。
「何の話をしていたんだ…随分長かったが」
「私たちの仲間に組み込もうと思って」
私たちの仲間と言っても、組織にとっては最悪の敵であるわけだが…。
そして、奥に進んでいった敵を殲滅する為に進む。
しかし、いつの間にか殲滅されていた模様。…この組織の転覆はやはり難しい。下の地位でもそれなりに強い。
家に帰ってから、石山とメールで連絡をとり、まだまだ補足情報を加えていく。
部屋に日影も招き入れ、3人での会議。一つの部屋に男女二人。普通なら緊張する場面なのだが、緊張と言うよりも…変な気分になるね!
「変なこと考えてるんだったら参加しなくてもいいよ」
「勘弁してください」
ふざけている内に石山から俺の電話にメールが届く。
『幸宣歩と連絡をとってみたら、「俺に頼まれるなら」と承諾してくれたよ。ところで、二人はどんな関係なの?お遊び?』
2文の文章が来た。その内容は、彼にしたお願いの返答と、ただの蛇足であった。
「やっぱり変な人だなあ…。なぁ、ひか…」
日影に声を掛けようと日影の方を向くと、日影の電話にも同じ内容のメールが送られてきており、何故か真剣な顔をしている。
「太陽は、私のこと…」
口を動かしていたようだが、続きの言葉は聞こえない。多分後半のふざけました感満載の文を見て、俺と日影の関係の再確認をしようと言うところか。
「俺は、ちゃんと恋人で、男女の関係で…そして、良きパートナーとして…。遊びの関係ではないかな。まぁ、一緒に遊んでいる時はある意味『遊びの関係』だが…」
目を泳がせ、明後日の方向を見て、そして少し頬を赤らめて言っているこの姿を見て、どうやら思いが伝わったようだ。
「そっか。私はね…」
少し考えたような素振りを見せて、良い雰囲気をぶち壊す言葉を発してきた。
「私としては遊びの関係かな~」
良い雰囲気をぶち壊す言葉を大笑いして言ってくる。ふざけて言っているものではあるが…。
「俺は真面目に答えたんだから…真面目に答えてくれよ…」
「何か、目が泳いでたし、明後日の方向向いてたし、凄く建前感が」
「本気だから…。俺は酷い嘘は吐けないよ」
俺の言葉を聞くなり、日影は顔を下へと向いた。
「…そっか。じゃあ、石山さんに返信しようか」
何かモヤモヤする反応だ。だが、石山をあまり待たせる訳にはいかない。
『その件に関しては本当にありがとう。後半の件に関しては、俺としては恋人として、本気で接している。実は、組織に疑念を持ちこのような事をしている訳だが、その疑念がまだ確信には変わっておらず、(問題が起こっても、問題を起こしても、組織のボスが本気で火消しをしており、その度に確信しかけていた疑念を確信に変えられない)手稲先生をこの仲間に加えることがとても厳しい。時間があるときでよいから、組織を監視してほしい』
メールを打ち終えて送信して一息つこうとすると、横から日影につつかれる。
「…どうした?」
「…また、二人で色々したいね…」
「どうした急に…。まぁ、出来ると良いな。いつになったら暇になることやら」
「…そうね…まぁ…」
「まぁ、俺は今のこの状態も楽しいかな」
それから日影が何も言わなくなり、寝たのかと思い日影の方を確認すると、目には可愛い背中が映るだけ。
「…どうした?」
「なんでもない…」
それから俺は何も言わず、この甘酸っぱい雰囲気にこの状態に酔いしれることにした。
しかし、すぐにそれは終わりを迎えた。突如電話が鳴り響き、二人とも驚いて電話を確認する。
彼とのやり取りは夜遅くまで続けられた。
春休みも終わりが近づいてきている。
そんな時、日影が俺の部屋に突然現れた。
「話があるの」
「え?話?なにかあったか?」
「…一緒に出掛けましょう」
春休み終了間近にして、やっと楽しい春休みがやってくる。