第三十七話 コント
もうすぐ冬だ。長く、暑さにうんざりしていた夏が終わると、秋は全速力で過ぎ去り、いつの間にかこんな寒く…。
などと思っていた矢先、またしても世界は異常に悩まされることとなった。
俺たちは全員、もうすぐ冬とは思えぬ異常な暑さで目を覚ました。それは、夏の熱帯夜をも凌駕する程の暑さだ。
時計に付属している温度計を見れば、そこには37℃の文字が。暖かい冬だとしても、これはいくら何でもおかしい。日本では、冬とは寒いもののはずだ。これは北半球であるが故に当然の理屈だ。
しかし、今はそうではなくなってしまっている。
俺らはまた組織が何かしたのだろうと予想し、向かう。
「また何かやったのか?」
「…そうじゃな…確かにホテルで女の子とお楽しみはしたがね…」
「…こんな状況でボケるとは、やっぱり頭おかしいわ」
「…そういうこと聞いているんじゃないんだよ!」
「私みたいな可愛い妻を差し置いてそんなこと…。これは制裁が必要ね…」
これは流石に総突っ込みにあって然るべきである。流石の俺でも非常時にボケをかますなど舐めた行為はしない…はずだ。
それにしても、このボケに対する先生の反応が恐ろしい。このような反応が普通なのかもしれないが、恐怖をおぼえる。見聞きしているだけでも恐怖をおぼえる。ということは、当事者である彼はもっと恐怖に怯えて…いた。
流石に恐ろしかったのか、口を開いて知っていることを話し始める。
「分からんよ…。我々が起こした事故に便乗して何者かが何かをしたのかもしれんな」
「何でそんなことが言えるの…?普通ならあり得ないことだけれど、便乗してそんなことをするような奴らがいるのかしら」
話の後半、憶測で話したであろうことに対して深堀りしていく。
憶測と言え語るということは、何か理由や意図していることがあるのだろう。
「世界の善(笑)の組織が我々に全責任を擦り付けて、我々を陥れようとしていると…」
「浅はかだ…。まぁ、そう考えるのが自然かもしれないが」
想像通りの反応についそんなことを言ってしまう。
ただ、その可能性も否定できない残念さ。これまでの愚行を反省しないといけないことだろう。
…こうなると、原因が不明ということになる。それでは困る。
「もしかして…暫くこの灼熱地獄の中過ごさなくてはいけなくなるのか…?」
「仕方ないわ…。原因が分からないのでは私たちには何も出来ない」
「…本当に何も出来ないのか?うちらで原因突き止めてやろうぜ!」
「「学校休み過ぎて進級できなかったら責任取れますか?」」
流石にそんなことなど出来ないということで、二人がかりで責める。本当に、進級できないのは困る。学校によっては、成績があまりにも悪かったり、出席状況があまりにも悪いと退学を余儀なくされるという、事実上「留年」というものが存在しない場合もある。
うちの学校はそうではないが、留年と言うのは大問題だ…。
しかし、鬼教官はそれにこう答えてきた…。
「直ぐに原因を見つければいいじゃない。正直授業よりこういうことの方が楽しいでしょう?」
…うん、酷い!w
正直、こんな命懸けの冒険よりは授業のマシ。…寝ていられるというのも大きい。
「…こんな事より授業やってる方がマシだよ」
「……流石に命懸けの戦いに参加するよりは、致死率がそれよりも低い授業の方が落ち着く」
「でも残念!学校は異常気象を受けて休校しているのだ!」
そして、俺たちは先が見えない原因究明をすることになった。
「で、どうしようか?太陽、日影、何かあるか?」
「解決策を考えてから始めてほしかった」
「…諦めましょう、今までもいつもこうだっだ」
取り敢えず、組織の方で調べてみたいことがあるので、調べに行くことにした。組織と他組織との関係だ。もしあの憶測が当たっているのなら、これで候補が絞れる。
「そうか…。しかし残念な事だが、敵対組織はごまんとあるからな…」
そうだった。今まででも沢山組織を相手に戦ってきたが…。話によれば俺らが参戦していない対戦も沢山あったらしい。
「駄目だなこれは…」
そう思っていた。というか、そう思うのが自然だった。
そんな時、急展開が待っていた。
「…何か、いない?」
ふと日影がそんなことを言う。
「何だよ…怖がりだな。お化けなんてないさ~。よしよし」
「そうじゃな…い…」
「あれは…炎帝テスタ…」
「そこまでだ口を閉じろ」
「仕方ないさ。本当にそういう名前だからね」
そいつは、紅く燃えており、人のようで人ではない謎の生物…。
「で、何だっていうんだ…」
「そりゃ、悪魔の帝王の一人、炎帝が起きたということさ…。過去にもこういうことがあったらしい」
「戦わざるを得ないか…」
またしても戦いをすることになってしまうのだった。
ホワイトホール白い明日!待ってろ!
近づいていくと、周辺が更に暑くなったように感じる。
「何だこの暑さは…」
「炎の帝王だからね、仕方ないね」
「早く倒して普通の生活をしたいわね」
戦い…とてもつまらないものだ。高校に入ったら、アニメみたいな楽しい日常を送れると思ったのに!
…こういうのもアニメの展開ならありそうだが、そんなのノーサンキューだよ!
早く勝って、家で日常アニメでも観たいなぁ…どれにしよう。
「ん?あれ?…置いて行かないでクレア」
「アニメなんて死んでからでも観られるでしょう」
「死後とか二次元の世界ですらないじゃないか…」
「弛んでるなぁ…戦闘前だって言うのにねぇ…」
「…そうだなあ、随分と甘く見られたものだ」
いつの間にか目に前に炎帝がいた。あまりの暑さに俺らは驚愕した。
「何だこの異常な暑さは…」
「炎だからね、仕方ないね」
「気をつけろ…。こいつの炎は当たれば即死ものだぞ」
あかん(白目)。
「…こんな弱そうな奴ら…。俺の大好物だ」
そう言って、炎帝はいきなりおそいかかってきた。
ひかげはひらりと身を躱した。
「何故だ!」
「遅いからだよ!」
襲いかかろうとしてから、攻撃の動きが終わるまでに20秒もかかるのでは当たらないのは当たり前である。
「思ったよりも弱そうだな」
そう思っていた。しかし、俺は憶測を誤った。
「…何てね」
一瞬寒気がした。
俺は振り向くと、目の前に大きな炎の球が現れた。
そして、俺は炎に包まれた。
俺は、何とか習得できた水の呪文を使うも、既に服は丸焼け、皮膚も焼けて肉が露出している。
「もう一回遊べるドン!」
気を紛らわせようとでもしたのか、糞みたいなタイミングでネタを繰り広げると、再び俺の方に炎が…。
身構えたが、俺には何も起こらなかった。そして、いつの間にか炎は消えてなくなっていた。
「太陽の呪文はまだ不完全だ…。こりゃもっと特訓ですわ」
嫌DA…!俺はアニメを見るんだ。…いや、観るんだ。
「もっともっと炎はいるか?」
いきなり話をぶった切ってくる残念な炎帝。この人は一体どこの芸人さんですかね?
「いらんから…。戦闘中だというのに弛んでいるなぁ」
「盛るぜ~超」
「盛られるのは、お前じゃー!」
今度は日影が話をぶった切って水のはかいこうせんを放つ。
…えっと、戦闘中だよね…?
「コントみてえなことやってんなあ…」
部外者みたいなことを言う先生さん、貴方もメンバーですよ。
「な。面白いだろ。来て良かっただろ」
「毎回コントみたいに相手が自滅するなら面白いがねぇ」
しかし、炎「帝」である分、その辺の雑魚敵とは一味も二味も違った。