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第三十六話 竜虎

 組織の禍々しい専用機に乗って俺らは天空魔城なる場所へ行った。

 『魔城』という名前とは裏腹に、近くで見ると物凄く綺麗な城であった。白く汚れのない城壁、整えられた庭…。

 そして、外観だけでなく、内装も素晴らしいものだ。綺麗に整えられていて、塵一つ見当たらない。……何故か生活感が溢れている。

「何だこれは…」

「綺麗だわ…。太陽もこれだけ心が綺麗だったらいいのに…」

「まるで俺の心が汚いみたいな言い方だな」

「実際汚いでしょう。自覚ないの?色々下品な事言ってきたでしょう」

 …色々言ってきてはいるが、ここまで言われる程ではないと思っている。

「何故そんなことを言うように…ツンデレならぬ『ツンドラ』にキャラクターを変えたのか?」

「あら、今はそんなこと考えてなかったのね…」

 いきなり無視するように話題を変えられ、しかもそれが心外な内容だった。このような、心が浄化されるような風景まで下品なことに変えられるまでの性欲猿だと思われていたのなら、弁解が必要だ。

「流石にそれはない。…期待していたのか?」

「…『日影の性器もこれくらい綺麗だったらいいのに』とか考えているのかと」

 …酷い考えだ!普通の友達関係だったら、この瞬間に絶交だったぜ。

「そういう期待があったのか…」

 ふざけてそう言い放つと、瞬く間に日影の拳が目の前の現れた。その速さは、戦闘中と大差ない。

「…遊ばないで散策してクレメンス」

「先生、そういうの止めてクレメンス」

「…何をしに来たのか忘れているね…」

 やっと探索が始まることとなった。入城してから探索開始まで40分を要した。


 1時間くらい探索してみたものの、あまりの広さから全室見られている訳ではない。仕方なく手分けして捜索することとした。

 しかし、何時間探索しても何も気になるものはない。

 城が自然に行方不明になるのを待つしかないかもしれない。まず、城が何か組織と関係しているのか、それとも他の何かかも分からない。

 …まぁ、だからこそ探索することには意義があるのかもしれないが。

 そして、探索していない所は最上階の一室のみとなった。

 皆が合流し、最上階の一室に入室する。

 …最初に感じた生活感が溢れる理由が分かった。部屋の奥には男が鎮座している。

「…ここに人が来るとは…何百年振りかの…」

「!?一体何歳なんだよ…」

 何百年もここにいるというような言い方。人型であるが、魔物の可能性が…。

「10万24歳だ」

「「そういうの止めてもらっていいですか」」

「本当の年齢なんだよ…」

 このようなネタ的な発言は、聞くだけで頭が痛くなる。俺だけでなく、日影も真面目になってしまう。

「で、Youは何しにこの城へ?」

「数百年振りに城が地上から見られる所に現れたから、探索に」

 一応、引率者・先生は正直に答えてみることにしたようだ。これだけの年齢なのだから、魔物の可能性が高い。ふざければ八つ裂きにされるかもしれない。

「そうか…聞いたことはあるか?…この城に入ったものは帰ってきたことはないということを」

 そう聞いて悪寒がした。日影はおろか、先生、そして組織のボスですらそんな話はしていなかった。

「何…!?」

「…???」

「噂は真実だったのか…。で、一体何が起きてそうなっているんだ」

 率直な質問が男に投げつけられる。何を言うのか。発言内容によっては戦闘も辞さない。

 男は、RPGに出てくる魔物のように鋭い目になり、真実と思われることを話し出した。

「何故ってそれは…」

 そう言うなり日影の方へ向かい、話の続きをする。

「この俺様が、美味しく頂いているからなんだよ!!」

 そう言って、男は虎に姿を変え、日影に襲い掛かる。しかし、その攻撃は空振りに終わった。それを察知していたかのように、日影が背後に回っていたからだ。

 しかし、歴戦の猛者、男改め虎にはその程度は計算済みだったようだ。気づけば、また虎は日影の前に…この繰り返しであった。

 大切な仲間が襲われている所をただ見ているだけでは駄目だ。そう思い俺たちは虎へ向かった。

 そして、…俺は虎の体の中に取り込まれた。無様にも、俺は美味しく頂かれてしまったのだ。

 日影や先生の話声がするが、聞き取れない。いつの間にか、そんなところにまで飲み込まれていた。

「先生…!」

「日影…!」

 二人は力を合わせて、禁忌とされている呪文の一つ、『ドラゴン・フュージョン』を使った。

 そして、竜の姿に変身した。二人の同じ心が重なりあったその攻撃は、とても強力だった。

 その同じ心、気持ちは虎の空腹に勝り、灼熱の炎を受けて虎は丸焼けなった。

 …ということは、太陽ももれなく丸焼けに…。目を覚ました時には、二人の目に汗()が浮かんでいた。


「俺はいつになったら真面に戦えるのか…」

「いつになったら修行の効果が出るのか」

「修行は役に立っているのか…」

 酷いYO!

「酷いなあ…。残念な修行をしている先生と日影がそんな事」

「どこが残念なのか…」

「勉強とどっちがいい?」

「修行します」

 流石に勉強との二択なら、修行を選ばざるを得ない。本当に酷い人たちだ!

「最近こういう…ツンばかりでデレが見えないことが多いな…」

「デレる必要がどこにあるの…」

「私にデレろと…?こんな年齢の女がこんな年齢の男にデレるとか、アニメじゃないんだから」

 …どうなっていることやら。前者は兎も角、後者は頭がおかしそうだ。

「…そうやって失礼な事を考えるから」

 …日影の優しい成分が足りない。それを手にする為なら、仕方ない。

 もう少しだけ、自分を見つめなおしてみよう。



 日が落ちるのも早くなり、冷えてきた。

 そんな時、世界は熱に包まれた。

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