第三十四話 ~高速解決劇~
先生は一体どう思っているのか…。それによってこれからの事が大きく変わってくる。
組織の考えを支持するのか。もしもそうであれば、俺や日影だけではどうしようもできない。誰か他の力が必要になる。
世界を支持するのか。そうであれば、俺や日影、幸宣歩さんがいれば何とかなりそうだ。
「君たちか。ちょっと話があるんだ」
福井先生が話しかけてくる。折角日影と楽しいキャッキャウフフな時間を過ごしていたというのに!廊下で。…だからこうなったのか。これからは場所には気を付けるようにしよう。
「どうしたんですか」
「手稲先生知らない?」
そう訊かれ、朝から行方不明になっていたことを思い出した。朝食はラップをかけられて食卓に置いてあったっけ…。
「…見ていない。深夜まではいたのだけれど…。学校に来てない感じなの?」
「そうなんだよ。一体どうしたものか…。」
一体どうしたものか。何を考えているのか、何がしたいのか…。疑問だ。
先に学校へ行って何かをしているのかと思っていたのだが…。一人で気持ちよくなっているとか…。…ちょっと色々あり過ぎて頭がおかしくなっているみたいだ…。
「ところで、福井先生は組織について知っていますか?」
先生について訊いてくるくらいなのだから、先生の知り合いだろう。そして、俺らのことを知っている。それは、先生から俺らの話を聞いているからだろう。組織に関しても何か聞いている、若しくは組織と関係がある可能性がある。
ただ、先生のお友達(意味深)であるだけかもしれないが。
「組織か…手稲先生の行方不明と今回の件が関係あると睨んでいるのね…。」
「そうなの。流石にそろそろね…」
「そうね…そう思うのは勝手だけれど、あまり声を大にして言うと、狙われるかもしれない。気を付けて」
「そう言われても…。やはり仲間を集めて突撃しないと目の前が真っ暗になってしまうからね…。まだやりたいことはいっぱいあるんだ…」
「例えば…?」
「痴漢行為、性行為に乳」
「指導!!」
何でだろう。尋ねられたから答えただけなのに!先生が生徒に暴力を振るうなんて!訴え…。
「…先生はどう思っているの…?」
「まだ、何とも言えない。他のところと手を組んでこんなことをしたとも考えられるし、嵌められたとも考えられる。まぁ、実際のところは、上層部に訊くしかないが…」
どうやら、先生は先生から詳しい話は聞いていないようだ。
ふと窓の方に目をやってみると、より一層紅く見えてくる。
そして、大粒の雨が降り注いでいた。
新たな組織の仲間を見つけることが出来た。これで少し前進した。
しかし先生が…。と、日影と話していると、日影のもとに連絡が入ってきた。
『空が赤く染まった原因は、組織のつくった謎の成分だ。そしてその成分は、地球の環境を破壊する恐ろしいものだ。すぐ組織の入口へ来てほしい』
「これは…」
「まずい…」
入口へ急いで向かうと、先生と知らない男が…。
「先生、この…」
『この人は?』と訊こうとした瞬間、それを先生に遮られる。
「そんな尋ね方しては駄目だ。組織のボスさ」
衝撃だった。まさか、組織のボスである者がこうして現れるとは。ということは、これは予期せぬ事態であった可能性が浮上する。
「…どうして、こんなことに…」
「誰かが間違って実験器具を破壊してしまってな…。儂も詳しいことは知らなかったのだが…。まさかこんなに危険なものだったとは」
「止めるために力を借りたい。太陽には物理的なものを、日影には魔術的なものを」
「物理的…?」
「魔術的…?」
そう言われてもピンと来ない。魔術的というのは呪文や魔力だろうが、物理的というのは…そのままの力だろうか…。それとも、何か別の…。おっと鼻血が。
「こんな時にそんなこと考えるとか…。人として終わってるよ」
「人間を止めたいの…?」
「おい待て」
こんないつも構ってくるあたり、二人とも終わっている。
…などと悠長にしている暇はない。今は一刻を争う事態なのである。
「…そういう話、したいところだが…。今は一刻を争う時。早く向かうぞ」
「…先生や日影より真面な人だなぁ…」
「…あ?」
「…え?」
威圧された。…普段なら1、2分ボケに突っ込みにとやるが、今は流石に暇がないので止める。
などとやっているのも時間の無駄だ…。
俺たちは奥の方にある謎の部屋に到着した。
「ここが…か。凄い赤い球があるな…。これで何をしていたんだろう」
「人間に害を与えるありとあらゆるものを倒せるいい薬品だと聞いていたのだが…。成分を見ると殺戮兵器としか思えない…。どうしてこうなった」
「どうすればいいの…?」
「日影はマジックバリアを張って、太陽はその機械のレバーを引いて」
それから1秒でバリアが完成。どうなってるのこの人。もしかして人間じゃない?…異種間恋愛も悪くない。
それにしても、ボスと一緒になってレバーを引いているが、それはなかなか動いてくれない。
大きな力を欲しながら必死にレバーを引く。
そんな時、俺は力が湧いてくるのを感じた。
「あ、あれは…!」
「まさかね…」
あっと言う間にレバーは動き、機械の暴走が止まった。
「それにしても…。ここに来て勝手に呪文を覚えるとは…」
「プラスパワーか…。太陽も遂にそういう呪文が使えるようになって…」
何だか馬鹿にされている気分になって腹が立つ。
ここで一つ、ボスに訊かなくてはならないことがある。
「…ところで、この団体は害悪組織なの…?」
そう口を開いたのは日影だった。
団員のその言葉に驚いたボスだが、一瞬で堅い顔に戻る。
「そんなはずないさ。儂がそんな輩に見えるかね…」
「見えますね」
次々と爆弾を投下していく日影。こいつは死にたいのだろうか…。
「過去には手を組んでいたりもしていたけれども、今はもう潔白さ。自ら悪行ははたらかないしな」
安心した。ただの口だけである可能性もあるが、この騒動を収めたのだから。
全てが計画通りというなら話は別だが、そんなことを考え続けている訳にはいかない。
何でもかんでも疑う。それは良くない。
ただ、まだ怪しいという考えは消えない。もっと、もっと何か…。
そう思っていたら、すぐに他の何かが起こる。