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第三十三話 赤の衝撃

 遂に、組織を悪と判定してくれる者が現れた。やはり、俺らの目に狂いはなかったのだ。そう思っていた。

 そんな時、新たな話が飛び込んできた。それは、『組織に立ち入り検査があり、それ以降は警察などからマークされなくなった』というものだった。先生からこの話を聞いた時は衝撃を隠せなかった。話を聞いてすぐの時は「どうせやっていることを見つけられないようにしただけだろう」などと考えていたのだが、徐々に「もし本当は悪では無ければ…」などと考えてしまうようになった。

 チャイムが鳴り響く。またしても授業中に組織の事を考えてしまった。しかも、話も聞かず、板書も書かず…今日もノートは真っ白。あるのは罫線と今日の日付くらいだ。…これでは、成績が入学当初とは天と地のような差になるのは仕方がない。日影に写させてもらえばいいのだが…『話を聞かずに余計な事を考えたり寝たりするのが悪い』と突っ撥ねられる。

 それはいいや。…あまり良くないか。

 日影は組織についてどう思っているのだろう。訊いてみることにした。

「組織についてなんだが…。日影の意見を聞かせてほしい」

 尋ねた瞬間、大きな溜め息を吐き、そしてちょっと俯いた。それから顔を上げるまで5秒もかからなかった。

「多分太陽と同じ意見よ。悪だとは考えている。しかし、確証はない」

 やはりそうか…。日影も同じような意見だな…。そう思い、席に戻ろうとしたとき、日影に非ppられて止められる。

「なんだよ…?」

「で、授業中にそんなことを考えていたの…?それだから世界一の馬鹿になるのよ」

「なに!?お前が世界が見えるのか…?!そして、世界には俺よりも成績が悪い奴がいないというのかッ…!!」

 世界一って…この学校は日本一偏差値の低い公立高校じゃないぞ…。この学校よりも偏差値が低い学校だって…。まぁ、偏差値が全てと言う訳ではないが、やはり今は偏差値以外では比べようがない。

 俺の渾身のボケを聞いて、日影の眼から光が消え、何となくだが虫でも見ているかのような眼で見て、言葉が言い放たれる。

「馬鹿じゃないの…?」

 一蹴された。やっぱりなと思う返答ではあったが、実際にこのような返答が来ると心に来るものがある。

「酷い!傷ついた!俺傷ついたよ!訴訟だ!」

 こういう時間って素晴らしい。ちょっとの間だけだが、組織のこと、勉強のこと…色々忘れてリラックスできる。俺的に凄く楽しいと感じられる。そして、日影も何だか楽し気に見える。 

 そして、男同士ではないというところがポイント高い。入学当初は、まさか女友達が出来、こうしてリア充アピールできるとは思いもしなかった。あとは…。

 皆、冷たい視線送るの止めて!興奮するジャン…!じゃなくて、恥ずかしくなるじゃん!

 日影が俺の周りにいないときには俺に近づいて楽しく話をする男友達も、この時だけはいつも遠くから見守るように…。まぁ、日影を奪われるよりはマシだからいいか…。

 チャイムが休み時間の終わりを告げる。

 …俺が離れていくのを見る日影の眼は、少し寂しそうだった。

 やっぱり日影は、俺のことが……。ここまで露骨に出ているのに気づかなかったら、もうラノベ主人公どころの話ではない。何も汲み取れない残念な奴になってしまう。


 昼休みになった。

 机の上に弁当を広げ、日影と一緒に食べる。

 下らない雑談をしながら、飯を楽しむ。ああ、凄く青春してるなあ!

 そんな時、日影が何かの気配を感じたかのように素早く窓の外を見て、怪訝な顔をする。

「どうした…?」

 窓の外、基、空が赤く染まっている。火山噴火があった訳でもない。空で赤潮が発生するはずがない。

 俺も、日影と同じような顔で外を見るしかなかった。

 それに釣られて皆が外を見て、廊下に出て何か騒いだり、教室内で慌てふためいたり…。

「なあ太陽。何か、RPGでラスボスが復活したみたいな空だな」

「そう言うこと言うのやめたまえ…」

 組織、基、サイゼーヒというラスボスが俺らにはいるんだから…。

「あ、先生からだ」

 日影の元に先生から何らかの連絡が届いた模様だ。日影は、それを見るなり俺を引っ張って玄関まで急いでいった。

「な、何なんだ…?」

「『な、何なんだ…?』と訊かれたら」

「答えてあげるが世の情」

 彼らはそう言い放つが、長そうなので遮っておく。

「やかましいわ」

「世界の破壊を防ぐため」

「日影…。続けなくていいからね」

 そしてやっと先生が学校の奥から到着した。

「先生、一体何が…」

「もしかしたら、組織があの計画を始動させたのかもしれない」

 何故か表現を暈してくる先生。嫌な予感しかしない。何となく想像がつくが、念のため先生に…。

「どんな計画…なの?」

 …先越さないで日影…と言いたいところだが、今はボケをかましている暇はない。

「実は、私が唯一組織の方針の中で反対していた計画があって…。それが、『ゆくゆくは自分たちが一番になりたい』というものだった。それの為に、前々から色々作ってはいたが…。遂にそれが完成したのかもしれない。このままでは…。嘘だと言ってよバーニ」

「や め ろ」

 最後の最後にネタを突っ込んできたせいで、どこまでが本当で、どこからが嘘か分からなくなってしまった…。もしも言っている通りなら、それは本当に『嘘だと言ってよ』とは言いたいが。

「あ、天水様…」

「し、失礼しましたぁ!」

 先生を見るなり逃げ出す相手。あれだけ頭おかしい演出して登場しておいて、去り際はある意味頭おかしいものとはこれ如何に…。

「私たちの場所だけでも守らなければ…」

 やっと騒動が終わって一息つこうとしたとき、今度は先生のところに連絡が入る。

 それを見た先生は血眼になって何かの準備をする。

「一体何が」

 一応質問してみるが、答えは返ってこなかった。

「何があったの…?」

 今度は日影が質問したが、何も返ってこなかった。


 授業が終わり、帰ると、テレビでニュースを確認することにした。

 先生は、『遅くなる』と書いた紙とラップに包まれた俺らの夕食を食卓に置き、外出したためだ。

 案の定赤い空のことに関して長々と伝えている。

 俺も日影も、何とかして情報を入手しようと、必死にテレビに齧り付く。

 そして、俺らはこれが本当に大事であることに気が付いた。

 世界が、何とか元に戻そうと動いていると報道しているのだ。

 俺らも何かがしたい。そして、先生は何をやっているのだろう。

「いつになったら休めるのか…」

「…組織がなくなるまで、じゃない…?」

 こんなやり取りしか、出来なくなってしまった。

 暫くして、夕食の時間。俺らだけの食事。二人で禁断のトークでもしそうなシチュエーションではあるが、こんな事態になっていてはそんなことできない。

 結局、その日のうちに帰ってくることはなかった。

 そして、深夜2時。日影はふと目が覚めてトイレへ行くと、用を済ませた後に先生の部屋を確認してみた。

 先生はいつの間にか帰ってきており、大きな寝息…いや、大きな鼾をかいて寝ている。

 隙を見て先生の電話を開いて組織からのメールを確認すると、明らかに赤い空に組織が関係しているであろう内容が書かれていた。

 ただ、それでも分からないことが一つある。

 何故空が「赤」に染まったのか。

 何の意味があるのか…。疑問で仕方がなかった。


 翌朝、俺は日影から深夜の話を聞いた。

 そして、俺らは組織側ではなく、それを止める世界側を支持することにした。

 さぁ、先生との格闘の始まりか…。

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