表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/58

第二十九話 野球大好き米里くん

修行に明け暮れる毎日。早朝から深夜まで、勉強する間も惜しんでこんなこと…。鬱病になる5秒前…とまではいかないが、かなり苦しい。本当に鬱になりそうだ。

 その分、呪文を覚えたり、技を覚えたりと着々と進歩してきている。日影や先生にとってはとても良いことである。いつも何も出来なくてもどかしい思いをしている俺としても、これは良い事なのかもしれない。

 ただ、俺は、これのせいで、やらなければいけないと思っていたあることを放置していた。

 …この組織の凶悪性を訴え、先生に伝えて、仲間を作り転覆させるという計画だ。

 悪の組織であることは明確だ。しかし、先生は疎か、日影ですらも疑いも無く(もしかしたら少しは疑っているかもしれないが)組織の命令に従い、イエスウーマンを続けている。

 何とかしなければ…。

 しかし…

 

 朝。今日は体育大会、…いや、球技大会だ。

 会場は校庭のはずだったが、変更されてしまった。謎の勢力の圧力らしい。組織か…?いや、それは流石に…。

 ジャージで外に出るとは、とても久し振りなことである。中学の陸上競技大会以来か。

 そこへは電車で行くことになるのだが、電車に乗ってからあることに気付いてしまった。

 まだ暑さの残るこの時期、偶に短パンを履いている人がいるのだが…。俺みたいな者にとっては地獄であることこの上ない。現役女子高生の生足を堪能できるのだから、嬉しいと言えば嬉しいことだが、さわさわしたくなってしまう。…俺みたいな奴が痴漢を行うことで、関係ない男性たちが、通勤・通学時に先頭の方にある女性専用車両に泣かされることになる(女性専用でない、2両目若しくは3両目まで行くことになるが、時間ギリギリだと間に合わないことも多い)のか…気をつけなければいけないな。人様に迷惑をかけないようにしないと。

 …少し長くなってしまったようだ。

 それにしても、短パンの女子が多い。この車両だけでも二桁はいるか…?

 ふと、右側の男の手が視界に入る。その手の向く先は…女子の脚!

「…や、やめて、ください…」

 必死に我慢し、恐怖で怯えるその女子。

 いいぞもっとやれ!…とか、やめろォ(建前)ナイスぅ(本音) とか言いたいところだが、流石に生痴漢はそうはいかない。

「なあ、日影…」

「ん?」

 その話をした途端、日影の目の色が変わり、その男へ向かって一直線(成人男性が腕を伸ばした時の長さ2つ分程度の距離だが…)。

「あら、あなた、何をしているのかしら…」

 男はびっくりして振り返る。

「あ?何もしてねぇよ。何だお前やんのかゴルァ!」

 そう言って男は日影に向かって殴りかかる。日影の事を知らない人間であれば、殴れば倒せると思ってしまうだろう。小さい体で気の弱そうな顔。…でも力はゴリラ。キラーエイプ。カイリキーである。

「ふん」

 日影はその腕を掴むと、綺麗にぶん投げる。ぱっと見65㎏くらいありそうな男をいとも簡単にひっくり返す日影、恐るべし…。

 次の駅。その男は御用となった。女性の貞操を狙う凶悪な犯罪行為である、痴漢。それは、女性の敵というだけでなく、最近は男性の敵にもなりつつある…。男性が襲われることも然ることながら、女性専用車両などが出来、男性が暮らし難い社会が形成され始めている。自分から、周りの仲間にだけでも、痴漢しないように訴えていかなければ…。そう思った。


 上記のような事が発生したものの、他には何もなく会場へ到着。

 少し遅れてしまい、校長の話の途中で後ろから入り定位置に着く。

 何か、遅れて入ってくると必ず笑う人がいて不愉快なんだが…。俺が遅れたのは悪い事なのだが、ちょっと許せない。分かる人は是非いいね!を……

 すぐ校長の話が終わり、早速競技が始まる。

 早速俺らは試合があるようだ。相手は上級生、2年4組…やってやるZ!

「日影…俺の雄姿を見てくれよ…!」

「頑張ってね~。応援してるよ~」

「…日影も選手登録されてるから!球技苦手だからって逃げようとしないで!さあ!」

 …周りの視線、もう「つめたくかがやくいき」みたいだね。威力絶大、とても冷たい。う~ん、最悪!

「これから、試合を始めます」

 待ちに待ったこの時がやってきた。今までの修行、特訓地獄の中、これを心の支えにしていたと言っても良いだろう。

 まずは、俺らの攻撃だ。一番バッターの篠路は、男子の中でも群を抜いて非力だ。他の球技も出来ないようで、仕方なく入ったんだとか。案の定ピッチャーゴロを放つ。

「まぁ、仕方ない…切り替えていこう」

「無理だよう…僕なんて…」

 そして、気が弱くて悲観的な男。本当に困ったもんだぜ。

 二番、三番と連続内野安打でチャンスを作って俺がバッターボックスへ。

「あぁ、格好良いな…」

「…え?普段は格好良くないの?」

「うん、普段はちょっとね…」

 陰で俺の悪口を言っている日影を発見。打てなかったら思い切り罵倒してやるからな!

 四番相手だからか、相手の球にも力が籠る。しかし、その程度で打ち負けては元野球少年団の肩書が泣く。

 うまく打ち返し、センターの頭を超えるツーベース。これが決勝点となった。

 その後は俺もファインプレーに阻まれヒット出なかったが、全て外野まで飛ばせた。なかなか良い結果である。

 その後、俺は日影の元へ直行。先ほどの悪口について色々言わなければ。

「俺、普段そんな格好悪いか?」

「えっちぃのは嫌いです」

「あーはいはいそうかよ。他には?」

「後は…顔、エロゲー主人公より崩壊してるよね」

「…やめろ…それを言うな…現実を突きつけるのは止めてくれ!」

「他には~」

「いくつあるんだよ…」

「そりゃ、いつも傍で沢山見てるからね。沢山言えるさ」

「いつも傍で沢山見てるとか…いつの間にかそんなに俺を意識してくれるように…」

「…!!///」

 顔を朱に染め俯く日影。勝つって気持ちが良いよね!

 勝ち誇った顔をしていると、周りに人が集まり、俺に向かって罵声が浴びせられる。

 俯いている=泣いているというよくある勘違いが引き起こした悲劇だった。

 俺も日影も必死で彼らを宥めていたら、いつの間にか次の出番が迫っていた。


 相手は3年生。去年は優勝したチームらしい。しかし俺は怖気づかない。兎に角打って打って打ちまくる。それだけで勝てるんだ!ただ、かなりの激戦になることが考えられる。

 …他のメンバーは、皆絶望的な顔だ。止めてくれよ…。

「これから、試合を開始します」



 この試合、案の定激戦となるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ