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第二十六話 悲しい地獄の特訓

 朝。早く起こされ、俺たちは神社へ特訓に行く。

 どういう特訓なのか、とても心配である。特訓と言っても、出来ることは様々だ。

 例えば、体づくり。やはり戦闘できる体をつくるのは重要である。

 他にも、様々なアイテムが自由自在に使いこなせるようになる為の特訓だったり、様々な呪文が使えるようになる為の特訓だったり…。

 そのような甘い事を眠たくてぼんやりした頭で考えていた。

 神社に着くと、実に先生らしい事を言ってきた。

「さぁ、色々な特訓をするぞー」

「「色々な特訓?」」

「そりゃ、体づくりだったり、呪文覚えたり、その他技を使えるようにする為さ」

 やっぱりな。先生なら全部やると思ってたぜ!ふざけるなババア!朝っぱらからそんなことが出来るか!

 しかし、先生の目は本気で、俺は特訓することを余儀なくされた。

「右手に力を集中させて」

「こうやって構えるの」

「はい、腕立て1000回」

 短時間に色々やらされ、苦痛だ。動けなくなるほど動かされ、立てなくなるほど立たされた。

 その結果、学校へ行くという頃にはどこもかしこも痛みで全然動かない。

 …しかし、無理して歩かせる先生。この人は俺をどうしたいんだ?殺したいのか?

 不穏な単語が頭に浮かんで離れなくなってしまった為、この話題の続きはやめよう。

 日影とこうする日々が始まってからというもの、学校では日影との絡みが増え、他の生徒とは離れがちになってしまった。自分から行かないのもそうだが、近づいてくれる人が少なくなったのだ。

 なんとか小鹿のように震えた脚で学校に着くと、友達やそこまで親交の深くない人たちに尋ねてみる。

「何か…あのオーラは無理だわ」

「やっぱり、良い雰囲気だからね、壊したら殺されそう」

「リア充爆発しろ」

「リア充は豆腐の角に頭をぶつけて死んじゃえばいいのよ」

「リア充は非リアの敵」

 酷い言われようである。何と言う僻みだ。妬みだ。物凄い狂気に満ちた返答が多かった。

 ………お前らなんか豆腐の角に頭をぶつけて死んじゃえばいいのよ!(ツンデレ)

 今日は中学からの友達と話してみることにしよう。

「そういえば蓮大…体育大会どうする?」

「太陽…日影ちゃんはいいの?」

「偶には他の人とも会話したいからな」

 会話しないで浮くとか、寂しすぎるからな。中学までは、彼女もいなかったし外見もパッとしないかった俺は、一人若しくは友達(勿論少ない)と一緒というのが多かった。その友達も目立っていた訳ではない、ただのアニメ好きだったからな…。この蓮大を除いて。

「それにしても、こんな太陽に彼女が出来るとは…。良かったね」

「それほどでもないぞ。良いこともあるが、悪いことも結構ある」

 特に組織なるものが関係して、面倒な事になってしまっていのだから。悪いことは、「結構ある」どころの騒ぎではない。一般の人よりも面倒事が多いからね。

「で、体育大会では僕はバスケをやるけど、太陽はどうする?」

「そうだな…やっぱりバスケが…」

 久々に可愛い可愛い蓮大君と絡めるいいチャンスだ。中学の頃のようになろう。そう思った時。

「…太陽はソフトボール。これは既定事項」

 仕方なく俺はソフトボールに決めた。(決めさせられた)


 LHRの時間。遂に体育大会でやる協議を決定する時だ。

 「体育大会」という名前から、色々な競技があると思ったら、まさかの少なさだった。

 黒板には、『サッカー(男女各1チーム)』『ソフトボール(男女混合)』『バスケットボール(男女各1チーム)』『バレーボール(男女各1チーム)』『リレー』と、5つしか書かれていない。「球技大会」の間違いじゃないのか?まぁ細かいことは良いか。政治家等はこういったように細かいところも強引に追及することであれだけ事を大きくしているのだろうか(適当)。

 そして、俺は日影と一緒にソフトボールへ。男6人女子3人で組むソフトボールには、俺ら含め丁度の人数が集まった。

 集まったメンバーで打順から何からを決めることにする。20分の長考(爆)の末、こう決まった。

 1番 センター 篠路

 2番 セカンド 簾舞

 3番 サード 西岡

 4番 ファースト 俺

 5番 ショート 清田

 6番 ピッチャー 伏見

 7番 キャッチャー 福住

 8番 ライト 中沼

 9番 レフト 日影

 一応、野球少年団をやっていた時期があったということもあり、4番でしかもファーストだ。

 一方、日影はレフトで、下位打線を担当する。期待値はほぼ0らしい。

 尚、これは俺や日影の意見は一切反映されませんでした。理由は二人でイチャイチャしていたからです。勿論羽目を外したりはしてないよ!ハメたり(意味深)もね。

 他の競技の人たちも決まり、体育大会の練習が始まる。

 …しかし、残念ながら、俺らは放課後は参加できない。一応その旨を伝え、特訓場へ直行した。


 そこには、まだ明るい時間帯だというのに先生がいた。

「…仕事さぼるのは流石に…」

「ん?仕事ならしっかり終わらせてきたぞ」

 どうやってやったんだ。ご都合主義の呪文か何かだろうか。

「…それにしても、どうして特訓を?しかも私まで…」

「太陽はしっかり戦えるように、そして日影はさらに強くなれるようにする為だ。また、私の自立という側面もある」

 恐ろしい事に、その特訓は夜7時まで続いた。

 俺は体の感覚が無くなるほど特訓させられ、日影もかなり燃え尽きている。尚、一番やばいのは先生。アイテムに何度も意識を乗っ取られかけていた。

 帰ろうにも、歩いて帰るだけの体力もないはずなのだが…。

「いいか、家に帰るまでが訓練だ」

 ということで、歩いて帰る羽目になってしまった。体力付いたら先生をボコボコにするという新たな夢が出来上がった瞬間だった。


 その特訓は、翌日も翌々日も行われた。毎日毎日早く起きては特訓して学校へ行き、終われば特訓して家に帰り、それから日影と逆転した順位を上げるための勉強の特訓…。順位が下がったのも色々やらされて勉強が出来なかった為である。テストの点を取らせたいなら、まずはこの特訓を止め…。

「余計な事考えてないで飯食えよ。特訓は止めないぞ。死ぬまでは」

「長すぎる」

 ただ、その分良い時間も出来た。

 家に帰ってからは、よく日影と一緒に休憩することとなった。それまで訊けなかったことを一杯訊き、日影からの質問に答える。何気ない普通の出来事が愛を生む。何と素晴らしい。

 それに比べ先生は…。おっと誰か来たようだ。

「先生、どうしたの」

「久しぶりに任務が来たぞ」

 久し振りの任務。前の任務はいつだっただろうか。任務でもないのに戦闘に巻き込まれたことはよくあったが…。


 


 その任務は、巨大害悪組織、「ハマイオーニ」の殲滅だった。

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