第二十一話 世界を滅亡に陥れるような闇の組織
学校消滅。あり得ないことが起きていた。
「何だ…と…」
「これは…ちょっとよく分からない」
「う~ん…何が起こっていることやら…さっぱり分からんね」
何故こうなったか…。誰も一瞬では考えつかなかった。
「可能性としては、何者かが次元を歪めて学校だけ消滅させたとか」
ふと先生が言った。多分それなんだろう。
しかし、問題は、誰がそれをやったのかである。
可能性としてはまず、組織が挙げられる。学校生活のせいで俺らが任務をあまり請け負うことが出来ない。それは組織的には由々しき問題である。俺と日影はともかく、先生は上部と繋がっている者。そんな人が使えないのは痛いだろう。
また、我々の組織ではない別の組織が俺らに目をつけて行った行為であるとも考えられる。俺と日影はともかく、先生は上部と繋がっている者。味方にしてしまえば、我々の組織などいとも簡単に潰すことが出来るかもしれないし、また、人質にすることで脅迫行為も出来るだろう。
しかし、先生狙いなら態々学校ごとこうして消す必要があるのか?
まぁ、先生だから学校に来るものであるから、こうして誘き寄せることも出来る。しかし、無関係な一般生徒や教師もいる訳で…。
「もしかしたら、あいつの…」
そう呟いて先生は校舎があった場所へと進む。
「きっと何かを察したのね…私たちも行きましょうか」
先生と一緒に進むが、何も起こらない……………。
と思ったその瞬間、突然空気が切り裂かれ、次元の裂け目が現れた。
そして、俺らはそこへと吸い込まれ、次元の裂け目は何事もなかったかのように閉じた。
「ここは…どこの組織だ…?」
「あいつが所属していた組織かもしれない」
「…凄い覇気ね」
本当に、覇気だけは凄い。あいつは屁みたいだったが、今回は相手の本拠地だ。
「どうでもいいが、何かこの建物学校っぽいよなあ」
「…そだね」
そして、俺たちは禍々しい妖気に包まれた名状しがたい学校のようなものへ突入していく。
中には、今までとは違って全然人がいない。
戦闘機会が少ない…。血などを見るのがあまり好きではない俺にとっては好都合だ。
その上、色々考える時間が出来る。……まぁ、組織が怪しい云々の話よりも日影で色々な妄想をしているだけだが…。だが、それが良い!
普通にしていれば誰もが認める絶世の美女…は少し誇張かもしれないが、とにかくこれが現実なのかと疑うほどである。まぁ、それは先生も同じだが。
所謂「フツメン」である俺の周りに、二人の二次元の世界から迷い込んできたかのような女性がいる。とても凄い事である。確率的にはどれくらいの確率なんだろう…。そこで俺の思考は停止した。数学なんて授業ですら嫌なのに、こんな時にそんなものが出てきてしまうとは。
それはさておき、俺たちが所属する組織…。何故上層部にしか名前が伝えられていないのか。そんなにやばいのか…?
そう思い、スマホで「世界を滅亡に陥れるような闇の組織」について調べてみた…。
そこには、一際目立つ文字で「サイゼーヒ」なる組織名が記されていた。やっていることとしては、「警察などの協力に託けて敵対組織(世界各地の全組織)を破壊し、世界の実権を握り、自分たちの野望の為に働かせることを目標としている組織。見境なく襲い、見境なく仲間に引き込むか、殺すかする」などと記述されている。…それは、俺たちの組織に酷似している内容だった。まさかと思ったが、一応心の中で否定しておいた。
他にも、様々な組織名が記されている。「シロバニア」、「ハマイオーニ」、「ブライデヒーキ」などなど、闇の組織として名を馳せている組織ばかりが並んでいた。
そういった中で、唯一知らなかったのがこの「サイゼーヒ」。ただ、名前を上層部しか知らないということは、世間一般の人が知っている訳がない。ここで其れを纏めるというのは難しいことだ。
それにしても…う~む…。
やっぱり日影で妄想した方がずっと楽しいな!よし、これから…。
「あとはこの最奥の部屋…基校長室だけだな」
「それにしても、誰もいないとは驚きね…」
どうやらいつの間にかゴール前まで来ていた様子。妄想はお預けである…。畜生め!
絶対に許さない。顔も見たくな…………。
取り敢えず、中へ入ることにした。
そこには、一人の男が…。
校長だった。
「何故、ここへ…」
「それは、分かるだろう。とぼけるな」
「……そうだねえ…」
そう言って校長が、名状しがたい校長のようなものへと姿を変えた。
「やっと現れたか…。バルログ・クライネソープ…」
先生から放たれた名前は意外にも可愛い感じの名前であった。最後の「ソープ」が何だか引っ掛かるが気にしない。
しかし、始まるのは、想像を絶する激戦だった。
「遂にバトルか…ここまで長かった」
「何かあったの…?」
「あぁ、こいつは、ブライデヒーキという組織にトップだよ。こんな所で校長をしているなんて最初は想像もつかなかった。しかし、それを知った時…」
と、先生が日影の質問に対して律義に答えている間にバルログは先生に迫る。しかし、先生は歴戦の猛者。そう簡単にやられる訳がない。
バルログの動きによる空気の動きを直ぐに察して、先生は氷の呪文で早速殺しにかかる。だが、バルログも組織の長。そう簡単にやられるはずもなく、その技を炎の呪文で焼き尽くして消滅させた。
「先生の技が相殺されるなんて…何ていう人なの…?」
思わず日影も心の言葉を吐露してしまう程の相手…。いけるのか?
「相変わらず強いねえ天水さんは」
「其方こそ。前は私の呪文に押し負けてしたのに、今は同等のレベルにまでなって」
そう言って先生が取り出したのはシャープペンシル…型の銃だった。弾の代わりに尖った針を詰め込み、それを何かで発射するものだと考えられる。
そして、それをぶっ放した。
しかし、バルログは直ぐに手が動かなくなる呪いの呪文をかけようと試みる。
その瞬間、バルログに炎、もとい闇の炎が襲い掛かり、その呪文をかけることに失敗した。
因みに、この闇の炎を出したのは日影である。日影が参加することで、一気に有利になることだろうが、俺としては非常に心配である。
日影にバルログの攻撃が向かうこと。まだ高校一年生である日影は、実戦経験は先生やバルログには遠く及ばない。その為、無駄な動きを見せてしまったり、一瞬隙が出来たりして簡単に攻撃をクリーンヒットさせられることも十二分にある。
また、そういった攻撃だけなく、男であるバルログが日影の魅力を前に、発情してしまうことだ。
真剣バトル中なのだから可能性としては攻撃を受けることよりも低い。しかし、攻撃を建前にしてそういった行為へ動き出す可能性も十分考えられる。
ジャキン!!
部屋の中で鈍い音がして、何があったのか確認しようとしたその時。
突然体に激痛が走り、体から何かが出る感覚がした。
―そして、俺はそこで意識を失った。