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第二十話 平和な日常は、良いもの、痛いもの。

 朝。恐ろしい事件・事故は無く迎えることが出来た。うちの組織と敵対している組織の罠だったと知って、不安ではあったが、どうやら杞憂だったようだ。

 しかし、別の意味で事故は度々発生していた。

 まず、同じベッドで日影と寝ること。日影の体温だったり、平常時に比べ明らかに高い心拍数…様々なものを感じられた。また、寝返りにより体、そして顔が此方を向き、近づく…。危うく柔らかそうで瑞々しい日影の唇に俺の唇を重ね合わせるところだった。他にも服が捲れて色白で綺麗な肌が露出する。それだけなら兎も角、年相応のパンツが見えたり、ブラジャーが見えたりと、一歩間違えれば俺が犯罪を犯すレベルの事も沢山…。そして、それは何度も起こった。

 このような日影の寝相には正直驚いた。あんなに綺麗な外見の人物が、ここまで恐ろしい寝相だったのだから。

 寝相が悪いということは、ただご褒美があるだけではない。体に裏拳が来たり、足が来たりと何度も攻撃を食らう。そして、何故かそれがとても痛かった。やはりゴリ…いや、何でもない。兎に角、地獄も一杯だった。中にはこのようなことも『ご褒美』と捉えるような人もいるようだが、俺にはさっぱり理解できない。ただ痛いだけで、どこに興奮する要素があるのだろうか。

 後は、王様ゲームやまた、その後やったゲームに対する数々の疑問とかを少々。何故三回回って『にゃあ』だったのか。これは女性陣が女性陣にやらせるつもりだったのだろう。などなど。

 と、色々な理由で俺は寝られなかった。色仕掛け(無意識)にかかっている時に奇襲攻撃(無意識)とか…。酷いったらありゃしない。

「よく寝たわぁ…」

「何とも気持ちの良い朝だ」

「………」

 畜生。この日影の女郎!

「後でパコパ」

「「?」」

 後でパコパコ、基ボコボコにしてやるぜ(闇笑)。危うく、ホテルのロビーで、大声で恐ろしいことを口走るところだったぜ…。社会的に死ぬところだった。

「で、これからどうするんだ?流石に長居は出来ないだろう?」

「そうだな…。太陽に日常的に使える呪文を教える為にも、家に戻らないとな」

「日影はどうしたい?」

「私は…。もっと太陽と色々観たいな…」

 決定。色々散策してから帰ることとなった。


 まずは深い森に入り、自然と触れ合う。

「…すごい…」

「感服するよ」

「見惚れて油断するなよ。こんな所で迷子になったら野生動物の餌になるからな」

 俺たちは先生の下らない注意喚起をよそに、散策を開始する。

 それにしても…蚊が凄い。入って数分、もう皆刺されてしまったようだ。

 先生や日影を前から見てみたい…胸が刺されていないか確認したい……。俺は腫れという名の乳輪が見たいんだ!

「日影気をつけろ…。お前の背後に恐ろしい野生生物がいるぞ」

「「!?」」

 先生のその言葉に日影も俺も後ろを振り向く。しかしその先に野生生物など見当たらない。

「…そういうことね。やっぱり先生は凄い」

 しかし何故か納得しだす日影。純粋に先生と日影に訊いてみる。

「どういうことだ…?」

「「こんな所で変な妄想を膨らませるな。雰囲気が台無しになる」」

「…すみませんでした」

 そして、その後は森の散策が終わるまで終始無言で、無心で自然を堪能した。あんな事を言われて、すぐに会話をすることなど出来なかったのである。

 この散策によって様々なことを身につけることが出来た。

 自然は偉大なものである。

 日影も先生も怒ると非常に怖い。

 アニメみたいにそう簡単に蚊に胸を刺されて、腫れという名の乳輪は出来ない。

 アニメのようにそう簡単に虫や小動物が間違って服に侵入し、体を這い回って目も当てられない状況になることは発生しない。

 モンスターが襲ってきて(自主規制)にならない。

 などなど。そう簡単にアニメみたいなことはようだ。

 これ以上続けると周りから鉄拳が飛んで来そうなのでここでやめておこう。ここで倒れる訳にはいかないんだ…!俺は襲われたくないんだ…!襲うなら日影にしてくれ…。勿論俺の前でな!

 そんなことはさておき、次はどこへ行くのか…。

 

 そして次に向かった先は、湖だった。

 この湖、どこかで見たと思ったら、上の方から見るとハート形に見えると言われているあの湖だった。

「何でここに…」

「それは…分かるでしょ…」

 分かるけれども、よくもまああんな事考えていた残念な俺をこのような場所へ連れて行く気になったなと思う。こんないい子に劣情を(妄想で)ぶつける何て最低だと思った。

「やっぱり日影は人が良いなぁ…」

 小声で呟いてみた。日影に届いただろうか…。

 その日影は何事もなかったかのように湖をただ見つめている…。

 この女郎!やっぱり(自主規制)だ!!

「それにしても、ここへ行くとは…流石だなあ」

「どういうことですか?」

「この湖はハート形だろう?流石にこれで察することが出来るだろう」

「…そうだといいですがね」

 本心である可能性もあるが、ただのからかいである可能性も否定できない。皆が見ている所で、そして誰も見ていない所で何度やられていることか…。でも、本心であると受け取って然るべきだろう。これが本心だった時に、凄く失礼だからである。失礼なことを続けると、流石に心が遠ざかり、最終的にお別れになる可能性もある。

 折角の機会なのに、それを台無しにする訳にはいかないから…。

 何故こういう時に限って心の中の声が口から出ないのか。非常に不思議である。


 そして、愛の告白とか、アニメなら起こって当然のことは全く起こらずこの一泊二日の有意義な時間は終わりを告げた。

「ふう~…。いい時間だった~……」

 そして、日影は俺に凭れ掛かって寝た。この名状しがたい旅行のようなものの中で一番有意義な…。

「グッ」

 顎に鉄拳が飛来。忘れてた…。困ったなあ…。どうにかして直してもらわないとねっ。



 そうして、長いようで短い約一か月に亘る夏休みは幕を下ろすこととなった。

 早すぎて絶望すら覚えるよ。

 学校なんて滅んでしまえ…!!!!!


 


 そして、始業式の日。普段通り変わり映えの無い道を歩き、そして変わり映えのしない学校生活を起こる…。筈だった。

 いつもなら学校の建物が見える所まで来たが、学校は視界に入らない。

 嫌な予感がして、急いで学校の前まで向かうと、そこには人だかりができていた。

 それは何故なのか…。




 そこにあるはずの学校が、消滅していた。

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