第二話 仕事へ
気づいた時には、元の場所に戻っていた。
…まさか、学校でもあのようになってしまうのか…?
それは嫌だなぁ、変に思われるからね。
翌朝。こんな早くからインターホンが鳴る。
「…誰だよーこんな時間にー」
…ドアを開けると、そこにはやはり彼女がいた。
よく見ると可愛いかもしれない…。
そんなことよりも、もっと大切なことがある。
「何故ここが分かった?」
「…あなたは私の相棒。一心同体である人物の家が分からないはずはない」
…まぁいいや。多分何度聞いても同じことを言ってくるだろう。
「じゃあ、行くか」
突然手に温かくて柔らかい何かが…。
「何故手を繋ぐ必要がある?何がしたいんだ…?」
「…こうよ」
そして、何かを呟くと同時に、眩暈がした。
気づくと、そこにあるのは俺らが通っている学校が…。
「何故瞬間移動の技が使える?」
「私はダーク・フレイm」
「そういうのいいから」
「…ぐっ…」
…そういうことですか、そうですか。
中二病。でも、それだけで呪文が使えるはずが…。
「…本当は?」
「……手稲先生に」
「ほう、それでそれで?」
「…先生も、組織の人なんだよね」
「そんな身近にヤバい人が!?」
…手稲天水。謎のオーラに包まれた担任である。
たまにブツブツ何かを呟いていたり、その他怪しい点は多々あったが、まさか組織の人間とは。
「突っ立ってないで行こうぜ」
「…いかせてくれる?」
「ん?何を?…ナニを!?」
…顔を真っ赤に染めて何を言ってるんだこの人!どういう意味か分からなくなるだろうが!
「…えっちぃのは嫌いです」
…中二病であり、オタクでもあるのか…困った女だぜ。…アニメが好きな俺が言える立場ではないが。
学校に入る。
教室へ行くと、日影と一緒なのだから、当然クラスメイトからは不思議がられ、そして二ヤついている。…俺らはそういう関係じゃないんです。先生ならわかってくれま…
「遂に日影ちゃんにも彼氏かぁ…」
…分かってないみたいです。何故女子と一緒に来ること。それ即ち付き合っているということになるのか…。変な等式を作らないでくれませんか?
「…先生。そういうことではありません」
と、日影が先生に小声で経緯を説明する。…何故先生にはこんなに話せるのに他の人とは話さないのかな?アニメの見過ぎで俺と同じく現実が嫌になって話せない感じですか?
「太陽…頑張りなさいよ」
「何をですかね…組織のことですよね」
「勉強見てやってくれ。お前は学年一桁だが、日影ちゃんはビリでな」
「…それは無理ですね。」
キリっとした顔で名言っぽく言ってみる。
「可哀想にー。困っている女の子を助けてくれない男子なんて嫌い!よねー」
と大声で言い出す。マジで勘弁してください。みんなに聞かれただろうが!
「…マジかよ」
「サイテー」
「うわー」
…じー
「…ちょっ、先生のせいで余計な非難浴びただろうが!何とかしてください」
しかも日影までじっと俺を見つめている。ジト目で。ヤンデレかな?
「なら言うことを聞きなさい」
「何という横暴だ…」
仕方なく俺は首を縦に振った。
「あ、あともう一つ」
「何ですか。また訳の分からないことを言うんですか?」
「そうじゃないよ。組織のことは大声で言わないでね。私がここで働けなくなっちゃうから」
「そうですか」
よかった。てっきり「日影ちゃんと付き合って、幸せにしてね」とか言われるのかと…。
「あ、もう一つ忘れてた。日影ちゃんを幸せにしてあげてね」
…ですよねー。この女教師なら言うと思ってたぜ。
授業が全て終わり、やっと帰れる…。はずだった。
「…太陽。待って」
初めて日影に名前で呼ばれた…う、嬉しくなんてないぞ!
「…うわあ…そんな露骨に嬉しそうな顔…」
「え!?そんな顔してた!?」
「そうよ。丸わかりよ」
…恥ずかしい。死にたい。昔からよく「顔に出る」とは言われていたが、これほどとは…
「で、何で待つんだ?」
「先生が呼んでいるわ」
着いて行くことにした。
「で、先生。何でしょうか」
「これから組織に3人で行くよ。呼ばれたのさ」
…めんどくせー。
そして、眩暈がした。
気づけばそこに以前見た建物が…。
「何でございましょうか」
「…話があるのじゃ。3人で中へ来なさい」
中に入ると、混沌とした世界が広がっていた。
「3人にミッションを与える。お前たちの学校の近くに出没する、『マホト・ブルーノアンダート』をアン・インストールで消し去る。3人で役割分担をして、5日以内に執行すること」
「承知しました」
…遂に俺らが暗殺を行うことになった…。
「…手掛かりになるものを後で転送しておく」
「ありがとうございます」
「では、行ってきなさい」
その言葉と同時に、さっきまでいた学校の空き教室へと移動した。
「…先生も日影の相棒だったのですか」
「私はただ、日影ちゃんが入学したときに、命令を受けて手伝っているだけさ」
「…そうよ。だから、私は、先生に、何をしても、いいの…」
という言葉と同時に、日影は先生にとびかかる。
胸、尻、パンツ、そして(自主規制)に手を伸ばす。
「…レズだったのか?」
「…レズではない。私は先生で遊んでいるの」
「駄目だろ…。先生も悦んでないで何とか言ってくださいよ…」
「ええじゃないかええじゃないか。…とても、いいわッ」
…駄目だこいつら。先生が奴隷で生徒が先生にイケナイことをするという…。
「俺はエロアニメでも見ているのか?」
「何を言っているの。これは現実よ」
「…こんな現実は嫌だー!」
「…そうだっ、たいよぅ…今日はもぅゃることはぉわった…かぇってぃぃぞ…」
何だこの状況…取り敢えず帰っていいそうなので今日は一人で帰ります。
その帰り道。例のマホト・ブルーノアンダートによく似た男がいた。
キョロキョロ周りを確認しながら、山の上にある神社の方へと向かっていった。
教えてもらった先生の電話にかけて、話す。
二人とも瞬間移動の技で即登場。
「…太陽の初仕事、成功させましょうね…」
こうして、俺の初仕事が幕を開けた。