第十九話 裸のおつきあい?
長い練習の日々は終わりを告げることとなった。
まだ夏休み中ではあるが、やはり全て潰してしまう訳にはいかなかったか。ラッキー。
ということで、今日は久々にアニメでも…。
「おーい太陽ー。でかけるぞー」
「はいはい今から行きますよーっと」
急に先生に呼び出されて居間へ行くと、三枚の紙切れを手にして座っている。
「それは…」
「聞いて驚け、旅行券だぞ。そしてその宿泊先は………。混浴もあるぞ!日影と一緒に…その後は分かるよな?」
嬉しい。超嬉しい。日影と一緒に風呂…。こんな時が訪れようとは…。俺はもうすぐ死ぬのか?殺されるのか?
でも、問題は先生も混浴に入ってくるかどうか、そして何より俺の理性が…。
「太陽とお風呂…。うふふふふふ…」
日影もすっかりその気になっているようだ。困ったことである。
ということで、その温泉旅館に到着した。
自然に囲まれたこの温泉旅館は、有名な観光地がすぐ傍にありとても大きく豪華な旅館だった。
普通に泊まれば、3人なら軽く30万は飛ぶような旅館の筈なのだが…。
凄く不安になる。何かしらの詐欺に引っ掛かったのではないかと。まぁ、先生の残念な性格上、引っ掛かる可能性は低いはずなのだが…。
「…先生、騙されたんじゃないのか?」
「…それはない………と願いたい」
おい。益々怪しくなる。
「まぁ、今はこの環境を楽しもうよ…。ね、太陽…」
優しい甘い声、そして上目遣いで、俺の視界にバッチリ入る位置でその言葉を放った。
止めてくれや、今すぐ襲いたくなるじゃないかっ…!
色々怪しい点はあるが、中へ入り、部屋へ突入。
その部屋は、建物の外観や入口などの内装に恥じない高級感満載の部屋。
高そうなテーブルに高そうな巨大テレビ、そして高そうな床にスリッパ、ゴミ箱…。どこからどう見ても高級ホテル。
これが詐欺で手に入れた旅行券でないのならどこで手に入れたのか…。組織が絡んでいたり、また、組織が、持っている闇ルートとか、色々考えつくのだが…。そんなことはいいや。
で、一番の問題は…。
「あ、私はこっちのダブルベッド一人で使うから、二人は一つのダブルベッドで仲良くね」
「「!!!!!」」
困ったことになった。女の人と一緒に、隣り合って寝るなど何年振りなのだろうか…。
親ならまだしも、同年代の女子が相手である。危うく発狂するところだったぜ…。
このような二次元の世界にでも迷い込んだかのような展開…。組織の陰謀とか詐欺にあってるとか考えたくないな、よし、考えないようにしよう。
「さーて、どこ行こうか…」
「折角ここへ来たんだから、この自然を堪能しない訳にはいかない…」
という日影の要望で、外へ出て周りの豊かな自然を堪能することにした。
それにしても…実に綺麗で凄いものだ…。自然を見て、こんな感情が沸き起こるとは…。
言葉が出ない。この物凄い自然にも、…そして、何故かビクビクしていて挙動不審な日影に対しても。
「どうした?こういう所、好きなんじゃなかったのか?」
「何か、嫌な予感がするの、奥から禍々しい何かが…」
まさかと思って五感を研ぎ澄まして確認してみる。
…どうやら、俺も先生も嫌な予感を察知したようだ。
まさか、ここにもあの組織の敵がいるとは…。
「…行くの、止めとくか?」
「…太陽の力を試したい」
…残念なことに、その敵と戦うこととなるのだった。
「おやまあ。まさか、貴方と言う方とこんな所で遭うことになるとは…。おや。その二人はお子さんかな?」
「違うわ。それで、こんな所でどうしたっていうんだい」
「貴方がここに来るという情報を手に入れてね…。叩きのめしに来たのさ」
どうやら、残念なことに詐欺とかではなかったが、まんまと何かの罠に引っ掛かっていたようだ。態々、こんな自然だらけで人がなかなか立ち入らないような所が近くにある高級ホテルを選んだのは闇討ちするためだったらしい。
「残念だねぇ。お前さんはお一人かい?それで私に勝とうだなんて…5000兆年早いわよ」
5000兆年って…こいつは先生の足元にも及ばない相手なのか…?覇気だけは物凄いのだが…。まぁ、RPGのボスみたいな見掛け倒しといった具合か…。
と思っていたが、どうやら俺の予想の斜め上を行くようだった。
「太陽。今だ!」
「はいっ!」
先生の掛け声に合わせて、何とか使えるようになった火炎放射の呪文を使ってみる。
「ぎょええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
火達磨になり、悶える敵。何だこいつは…こりゃ先生もあんなこと言う訳だ…。と思っていたその瞬間。
「な、ん、て、ねっ!」
と何事もなかったかのような声を出すと、その炎の中から出てきたものは、彼だった。
「これで終わりだよ。はああああああ!!!」
その言葉とともに武器が先生に向かって大きく振りかぶられる。
そして、何かが切れる音がして、何かが噴き出す音とともに放たれる鉄の臭い。
生暖かいその液体が俺や日影、そして先生や相手にも大量に降り注ぐ。
そして、相手の四肢が地面に落ちていくのが見えた。
「「良かった…」」
俺と日影は心の底から出てきた言葉を腹の奥から搾りだした。
「どうしたの?私がやられると思ったのかい?そんなはずないさ。まぁ、少し気づくのが遅れていたら危なかったけれどねー」
「うぐぐ…頼むから…セッ●スさせてくれ…。無理ならその大きくて柔らかそうな胸を揉ませてくれ…。それが駄目なら綺麗なそのマ〇コを…」
「揉ませろって言ったって、もう手ないだろ!やかましい!」
彼の心の奥底から放たれたその言葉。凄く気持ちが分かる。胸が大きく、声はちょっと可愛気がある。そして、日影曰くムダ毛処理などは徹底的に行っており、いつも綺麗な肌を保っているという…。俺も日影が彼女じゃなかったら先生に欲情していたかもしれない。
それはさておき、先生も先生で物凄い奴である…。
その懇願を見事に踏み躙って見せた。見事に顔をぐちゃぐちゃに踏み潰して…。奴の顔は痛々しい。
こうして俺が語っている間にも先生による弱い者いじめが続けられている。
「ははは…は…」
彼の哀れな姿、そして先生の恐ろしい姿に、言葉が出なかった。
「何て日だ!」
「う~…。どうして…」
「いやー、悪いねー」
混浴の風呂に、3人仲良く浸かっている。
まさか、こんな所であんなことになろうとは、思ってもいなかった。
それにしても、先生の体は本当に良いものだと思う。腕や脚、その他諸々の肉付きが良く、またムダ毛は無い。胸も大きく,少なくともFカップはありそうだ。そして、肌の垂れなどは見当たらない。もはや、その体の凄さはアニメキャラ級だ…。
日影は、意外にも胸がそれなりにあった。どうやら、着痩せするタイプらしい。体型は所謂中肉中背で程よい身長・体重に程よい肉付き、程よい体の白さ、そして何よりその女の子のいい香りが何とも俺を刺激する。
「あぁ、二人とも襲いたいっ!!!!」
…。俺の大声が風呂の中に響き渡った。そして俺はまたしても言ってはいけないことを声に出してしまったことに気付く。
「「何考えてるの~~!!///」」
二人とも顔を真っ赤にして俺を風呂へと沈めた。
…その後、俺はしばらく息をしていなかったという。
気が付くと飯の時間になっていたようで、大量の料理がテーブルに所狭しと並んでいる。
どれもこれも高級そうな食材を使った高級そうな料理だ。
…味も良い。先生の料理が不味く思えるよ…。
「余計な事考えてないで食え」
…見破られていたらしい。どうなっているんだこいつは。
「このホテル自体が敵対組織のもので、食事に毒盛られてたりとかは…流石にしないか」
「…毒が盛ってあったから私が消しといたわ」
日影はどうやら俺よりも先にその可能性を疑って行動をしてくれていたらしい。流石日影だ。
「…本当に感服するよ、日影には…。そういう日常的に使える呪文とかも覚えられないかなあ…」
…。
「そうだなあ、じゃ、学校が始まったら家に帰ってきてから練習時間設けるか」
…余計な事言ってばっかりで辛い。もしかして俺、高いホテルで日影とイチャイチャできる(っぽい)から興奮しているのか…?。
それはさておき。毒を抜かれたその飯は、これ以上ない程の美味さだった。度肝を抜かれた。
残念なのはただ一つ。最初は毒が盛られていた事だ。
そして部屋に戻ってから、俺の考えで王様ゲームをやることになった。
箱の中に命令が書かれた紙が入っており、王様になった人は箱の中から紙を引いて、その紙に書かれていたことを命令として言う。そういうことに決まった。
「「「王様だ~れだ」」」
「何で先生もやるんですかねぇ」
「そりゃあ、私だけ見てるだけとか悲しすぎるだろ…」
まぁいいや。
「お、俺か…」
紙を引いて、紙を見たわけだが…。
その紙には、『2番の人をヨツンヴァインにさせて3回回らせてにゃあだよ』などと書かれていた。誰だこれやったの!吹くところだったじゃねえか!
「えー…2番の人」
「お、私か。どれどれ。何でも聞いてやろう」
「ヨツンヴァインになって三回回ってにゃあと言ってください」
「…えぇ…?」
…楽しい時間を過ごせたよ。
…嫌なこと、残念なこともあったけれども、やはりいいねえ、こうして遊べるのは…。
そうして、もう寝る時間。
「にしても、いいベッドだな…すぐ寝られそうだ…」
…前言撤回。日影が近すぎてなかなか寝られない。
それは、日影も同じなのだった…。
とても良い時間が過ぎていく。
とても良いことだ。
しかし、この世の中、良い事ばかりが続くわけではないのだ。
今度は、攻撃呪文ではなく、日常的に使える呪文を習得する羽目に…。
まぁ、組織の任務に翻弄されまくるよりはマシか。