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第十四話 名状しがたいラブコメの波動のようなもの

 あれから、任務の数は大幅に減った。また、内容も軽いものへと変化した。

 3日に1回程度だったものが10日に1回程度となった。…それでもやっぱり多いが。

 先生は仕事が忙しく学校に籠りっぱなしで、俺らだけと言うのは久し振りの事である。ということで、日影を誘ってどこかに出掛けますかね…。

「…どうしたの」

「久々に二人っきりだし、出掛けようか」

「…!!」

 すると、さっさと用意を済ませてきた。そんなに一緒に行きたかったのか?まぁ、ここ最近物騒な事に巻き込まれ過ぎて少々うんざりしていたことだろう。俺は日影成分が摂れなくて辛かったぜ…。

「さぁ、どこへ行こうか」

「…何も決めて無かったの?流石ね」

 取り敢えず適当にその辺をブラブラ…いや、ラブラブしようか!

「何だか野獣の目になることが増えてきたね…」

 どうやら妄想中は『野獣の目』をしているらしい…。野獣が可哀想だろうが!


 目に入ってきた喫茶店に入った。外見は微妙だが、中は随分としっかりしている。

 適当に注文を済ませると、

「羨ましいですね。そんな歳の頃の僕は一人ぼっちで悲しい生活でしたよ。…ということでハート形クッキーの憎悪乗せをどうぞ!」

 …道理で俺と同じ感じがすると思ったぜ。今度ぼっち同士で古傷なめ合おうぜ!

「面白い人ね。まるで太陽みたいだわ…クスクス」

「おいやめろ」

「はいどうぞ」

 下らないことをしている内に注文した物が来た。

「…何でストローが二本刺さってんの?」

「何でってそりゃ…。『ラブコメの波動」を感じたので!!」

「ここには太陽の仲間が一杯いるようね」

「止めろ!俺がオタクみたいな言い方するな!」

「これだからオタクは」

 痛いです。何故こう心に刺さることを次々と…。やっぱり今までの妄想がばれて…?それはないか。

「でも…一寸いいかも…二人で顔を近づけて同じ物を飲む…う~う~…」

 そのうーうー言うのをやめなさい!昇天してしまうぜ…。林檎のように赤い顔…あぁ、一層の事食べてしまいたい!…色々な意味でね。

「よし、そんなにやりたいのか。さぁ、まずはこっちから。ほら、もっと近づいて…」

「調子に乗るなぁ!」

 その声と同時に近づけていた俺の顔にばくれつパンチを食らった。俺の頭は混乱した!

 その後3時間俺は目を覚まさなかったらしい。


「まったく…ひ弱な男ね」

「お前がカイリ…何でもないです」

 スッと握り拳を見え隠れさせてくる。酷い女だ!

「よし、次は映画だ!」

「それしか思いつかないのかしら…。残念な男ね」

「黙って付いて来てくれよ。今回は自信しかないぜ!」

 …などと言ったのが運の尽き。いざ映画館に行ってその映画を見せると…。

「な、どうだ、良いだろ…って寝てるし!」

 映画が始まって7分の出来事だった…悲しいよう。

「…残念ね」

 起きたはいいものの、不平をずっと漏らす。だったら出て行って下さい。大好きな作品を真面に見ずもせずに叩かれてたまるか!映画終了30分前の事だった。

「…その…よかったわ…」

 映画が終わって映画館を出てからの事だった。

「なら何であんなこと言いまくったんだよ…」

「反応が面白いからねぇ。一回一回しっかり一寸ずつ違う反応をしてくれて凄く良かったよ!」

「俺で遊ぶなよ…。」

 物凄い満面の笑み。守りたい、この笑顔…。と言いたいところだが、俺を玩具にしてこんな顔している訳なのだから、積極的にぶっ壊していかないと!

「そうだ。今度は私に付いてきて。太陽ばかりずるいわ」

「ほう。日影がどんな面白いところへ連れて行ってくれるのか…。楽しみだ」


 着いたのは学校からあまり離れていない高台だった。

「こんな絶景が望める場所が近くにあったとはな…」

「ふふふ。私は、と言うか結構こういうロマンチックな所が好きな女性は多いわよ。覚えておきなさい」

「そうだったのか…」

 その絶景と言葉に絶句した。何も言えない。それくらいのものだった。

「なぁ、日影…」

「なによ…」

「これからは、出来るだけここに行こうぜ」

「…ええ」

 物凄い満面の笑み。守りたい、この笑顔。こっちは身を挺してでも守りたい。命と引き換えでも…それは無理だな。

「それにしても、何故俺はこんな場所に気付けなかったのか…」

「男の人はロマンチックな事をあまり求めないもの。まぁ、中には気付く人もいるけれど…」

「どれだけ太陽が馬鹿で見る目が無くて性獣なのか分かったわ」

「よくも良い雰囲気を粉々に破壊してくれたな!」

 そして、俺と日影の、大きな笑い声がその空間に広がった。

「いいねぇ。ラブコメの波動を感じるよ」

 が、突如その良い雰囲気を思い切りぶち壊してくれる爆弾発言が背後からした。

「ゲッ。先生…」

 先生もここを知っているのか…。女性とはロマンチックな物事が本当に好きなのか…。肝に銘じておかないとな」

「先生のおかげで、一歩前に進めた気がするわ」

「良かったな、日影よ。見ているこっちが嬉しくなるよ」

「…どういうことだ?」

「…ここは、私の思い出の場所なのさ…」

 ふとしんみりとした顔になり、話を続けた。

「私が二人と同じくらいの年齢の時、彼氏がいたんだ。彼はとても凄くて…良い人だった。相思相愛で、自他共に認める学校一のカップルだったんだ。しかし、彼は突然とある女にとられた。でも、私は諦めず何度も私の手に戻そうと頑張って告白をしてきた。しかしどれも不発に終わった。そして、ふとこの場所に目が止まり、私はここに彼を呼び出して告白した。するとびっくり。OKだった。その話が学校中に流れた後、ここは地域屈指の恋愛パワースポットとなったのさ」

「パワースポットか…。それにしても長くて下らない話だったな」

「私は酷い生徒を持ったものだな…」

「……」

 日影は何も言わない。何故かと思って見てみると、頬を赤く染め、物凄い満面の笑みを見せていた。守りたいこの笑顔…。本当に。写真に撮りたい。そしてそれで自慰行為を…。

 急に日影は鋭い目で見てきた。何故かと思えば、

「その野獣の目、嫌い…」

「まーた下らん妄想をしていたな?相変わらず目に、顔に出る残念な男だなぁ」

 うるせえ。男は大体そういうものなんだ。許せ!


「あぁ、今回も大変だったぜ…」

 家に帰って部屋に戻ってからの第一声。本当に今日は疲れたわ。色々あって…。

「まぁ、任務はなくてよかったな…。今度はどうしようか…」

 そう言いながら向かう先は日影の部屋だ。

「日影ー。一緒に…」

 ドアを開け、部屋に入るとその先には半裸の日影が…。あ、やばい。

「………」

 無言でドアを閉めた。すると、

「…入ってもいいわよ、別に…」

 驚きだ。まさか入れてくれるとは…。と言うことは俺のあれも挿入…。

「ただし、変なこと妄想しないならね」

 それは無理でしょう。だって男だもの。人間だもの。みつを。

 部屋に入ると、何故か服を完全に着ておらず半裸のままだった。

「お、おい、何を…」

 それからの記憶は何もない。


 ふと気が付くと、俺の部屋にいた。そして、朝になっている。

「う~ん…。昨日は何をやっていたんだろう…。記憶がないな」

 リビングに行くと、先生がまたしても爆弾発言を…。

「昨夜はお楽しみでしたね」

「な、なに冗談言ってるんですか先生…」

 何があったのか言ってくれなかった…。と言うことで皆様のご想像にお任せします。




 恋愛とは、良いものだ。

 望んでいた普通、日常はこれだ。

 ずっとこんな生活が続いてほしい。ただそれだけだ。

 しかし、俺は実態の見えない謎の組織の人物。様々な任務が出たりする。

 こんな平安は、そう簡単に続くはずがなかった。

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