第十一話 答え
俺は、一体何をしているのだろうか。
高校生の本分であるはずの勉強(部活はやっていないため除外)を怠り、訳の分からない事に力を注いでいる。
何なのかも分からない謎の組織に入り、生きていく上で必要なのかも分からない殺人的な行為を行う。
勉強の時間が潰れる。名状しがたい彼女のようなものができる。親が死ぬ。訳の分からない術を習得する。住む家が変わる。この短い期間で其れまで当たり前だった日常が、大きく捻じ曲げられ、改変されていった。
……今までの、普通の生活を取り戻したい。
………
……
…
久々に、任務も何もない普通の朝を迎えた。
もう、風が吹くと半袖では寒さを感じる時期となった。
今日も普通に登校する。
「あぁ、今年は色々あったなぁ…」
「…まだやっと夏から秋になろうかと言う時期だというのに、もうすぐ今年が終わるみたいな感じで…」
「仕方ないだろう…。本当に、日影に会ってから大きく変わったものだ」
「…そうなの?」
「当たり前じゃなイカ」
本当に、前述した通り色々あった。元の生活に戻りたいと切に願うくらいに。
「…わ、私が、嫌、なのかな…」
「そうじゃなくてだな…。組織のことだ」
口外すれば俺がアン・インストールされかねないので声には出さないが、正直、あの組織は面倒だ。
学校の楽しい時間は潰れ、訳の分からないことに時間を費やす。たった三年間しかない高校生活を溝に捨てているような感覚だ。
それに、任務だの言っては何かを滅亡させたり、人を消し去る、元い殺してしまったりする。これが此方にとっては非常に面倒臭い行為だし、相手には非常に申し訳ない気持ちで一杯になる。何の狙いがあってこのようなことをさせているのかが分かっていれば少しはマシなのだが…。
まぁ、それが良いことか、悪いことかによって大きく変わるが…。
「…いきなりどしたの?頭可笑しくなった?」
「…さらっと酷いこと言うなあ君は…。真剣に組織について考えていたのさ」
「組織ね…」
「何か日影は分かるか?組織について」
「正直、私も下っ端の方だし、全然分からない…。先生に訊いた方が良いかもしれない」
やはりそうなるか。
あの婆からは組織の臭いがプンプンするぜ!
任務が無いって最高だ。最初から最後まで授業を受けられる。
急な尿意・便意や体調不良が発生しない限りは途中退席をせずに済む。ここまで途中退席のし過ぎで少々危なくなってしまっている為、嬉しいことこの上ない。
と言った普通の日常を少し取り戻した話は兎も角、組織についてもっと深く知らなければならない。
「先生、…組織について詳しく知ってることない?」
「組織か…今の私が知っていること、元い話しても良いことは…『国際刑事警察機構』、つまりインターポールにマークされているというところくらいかな」
「…マジで言ってるのそれ」
もしもそうだとすれば、俺の心配していた『悪の組織』である可能性が出てきてしまうことになる。
「本当の事さ。私の友達がインターポールにいてな、そのことを知ってしまったのだよ」
「『話しても良いこと』ってことは、話しちゃいけないような秘密もあるってことか?」
「あぁ、君たちみたいな下っ端には漏らすなと言われている内容も一杯ある」
「た、例えば…?」
「例えば…現代表はショタコンと言われており、男の娘や女装男子を…」
「そういうことじゃなくて組織全体についてのことを言ってくれますか」
「上層部の人の性奴隷の試験を受け、見事合格すれば上層部の人間として上層部のことを知ることが」
「…やっぱり他の人に訊く」
「あーちょっと待って、大切なことを言い忘れていた」
「何?今度は下らない秘密を暴露するのは止めてね」
「…悪の結社であるのは確実だ。ここまでは本当に周囲から『悪』とされている他の結社や人を消しているだけだが、其れも段々減ってきた。そろそろ一般人の大量虐殺に踏み切るかもしれない」
「…マジ?」
「あぁ、マジだ。この国の、いや、この世界の中心になって裕福な生活を送ろうと企んでいるようだ」
「くっだらねぇ理由で俺らは利用され、人が死んでいったということか…」
「その通りだ」
「…先生は、何もしないのか?」
「一応色々考えてはいるんだよ。どうやって組織を転覆させて元の日常を取り戻すかをね」
と言って先生は去っていった。
どうやら、俺の不安は見事に的中してしまった。
それは兎も角、先生は一体何者なのか…。あの組織のどれ位の地位についているのだろうか。
性奴隷が如何こう言っていたから、もしかしたら先生がその性奴隷として上層部の一員と言う可能性も無きにしも非ずと言ったところか。
…それにしても、これからどうするべきか。
悪の結社であると分かった今、転覆させなければならない。それは分かった。
しかし、このような強大な組織をどのように転覆させるのか。それが問題だ。
そして、これだけ秘密を暴露してしまった先生はどうなってしまうのか。
心配でならない。
その深夜。
「きゃああああああああああああ!!」
刹那、悲鳴が鳴り響く。
その悲鳴の聞こえた方向に行った時には、既に遅かった。
…そこには、謎の男がいた。
そしてその男は、悲鳴の主、日影に手を伸ばす…。