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徒然エッセイ

創作物のオリジナリティに関する考察

作者: アンリ

真面目なようなコメディのような内容です。

 白と黒。

 その違いははっきりとしている。

 白は白。

 黒は黒。

 とてもはっきりとしている。

 服をネットで注文するとき、ブラックオアホワイト、そう書いてあれば写真を見なくても注文を間違えることはほとんどないのではないかと思う。

 では灰色、グレーはどうか。

 白と黒を混ぜた色だというのは疑いの余地もないだろう。

 では、黒にどのくらいの割合で白を混ぜたものをグレーというのだろうか。

 おそらくそれは定量的に決まっているわけではない。

 いや、ある程度の濃さの範囲であれば、白と黒を混ぜた色は灰色、つまりグレーだと決めてしまってもいいと思うし、誰もが主観で決めているはずだ。

 ではグレーはどこまで薄くなれば白になり、どこまで濃くなれば黒になるのか。

 この境界をきっちりと見定めることはすごく難しい。

 

 なぜこのようなことを言い出したのかというと、創作物のオリジナリティの定義について考えたくなったからである。

 ここでいう創作物とはこのエッセイもそうだし、小説や詩、楽曲、絵画や彫刻、レシピ、デザイン、なんでもだ。

 創作物はオリジナリティを求められる場合と求められない場合がある、と思う。

 求められるのは当然、発表の場でそういう規定がある場合だ。

 このサイトもそうだし、最近では東京オリンピックのロゴもそうだと思う。

 創作者の意図は関係ない。その創作物を完成させるために労した時間や費用も関係ない。偶然でも奇跡でも、後発側は自作品のオリジナリティを保障しなくてはならない場合がある。

 求められない場合、もうちょっとぼかすと、本当は遵守すべきだろうけど黙認される場合もある。何かのキャラクターの絵が何かのプリントに描かれている、なんてよくあることだ。


 前置きはさておき。

 創作物にオリジナリティが求められる場合があるという前提で書くと、ではオリジナリティの定義とは何か、と思うわけである。

 それは冒頭の白と黒の定義のようにはいかない。

 いや、白と黒ははっきりしている。

 問題はグレー、白なのか黒なのか曖昧なグレーだ。

 

 ここで例題。

 ロボットについて。

 怪力少女のロボットがいたとする。

 これだとよくある話だ。

 だがこのロボットが「んちゃ!」と笑顔で言ったらどうだろうか。

 もうあの有名なキャラクターしか思い出せないと思う。

 では自分をサムライだというちょんまげのついたロボットはどうか。

 これも別に珍しくもない。

 だがこのロボットの好物がコロッケだったらどうか。

 では青い猫のロボットの好物がどら焼きだったらどうか。

 大したことがない事象でも、三つの特徴が組み合わさるととたんに既存のキャラクターが思い描かれてしまう。


 では三つは揃わないように気をつければいいのか。

 先に書いたロボットの特徴の組み合わせを変えてみたらどうなるだろうか。

 怪力+サムライ+どら焼き。

 少女+コロッケ+青い。

 「んちゃ!」+ちょんまげ+猫。

 ……どなたか判定してもらいたい。

 これら三つのロボットが出てくる作品にオリジナリティはあるか。

 白? 黒? それともグレー?


 次は歴史もの。

 歴史ものは史実や既存の創作物があるからまた別の難しさがある。

 お題は戦国時代の武将としてみたい。

 しょっちゅう誰かが扱っているような、手垢のついた題材だ。


 織田信長が主人公の小説があるとして、一人に三つずつ、こんな特徴を与えてみる。


 織田信長:気性が激しい。天下一品のドS。性別は女

 豊臣秀吉:信長によく従う。天下一品のドM。猿に似ているが犬が好き

 徳川家康:忍耐強い。信長を超えるSになると天に誓っている。血を見ると興奮する

 明智光秀:賢く物静か。すぐ裸になる。信長のSと秀吉のMの性質を書物にまとめて天下一の学者になるのが夢

 伊達正宗:片目がない。Mのようだが痛覚がないだけ。信長に一目ぼれした際目をくりぬいて贈ったがふられた


 この五人に与えたそれぞれの特徴、一つ目は史実と同じものとしている。

 そこに二つずつ、過去の何かしらの創作物でありがち(?)な特徴づけをしてみたがどうだろうか。

 彼ら五人は白? 黒? グレー?


 たぶんだが、白、黒、グレー、どう答える人もいるのではないかと思う。

 特に織田信長。

 気性が激しくドSで女。

 どこかにありそうな設定だ。

(注:ありがちだがそういう設定の作品自体は作者は知りませんし、あったとしても否定するものではありません。理由はこれ以降に記載しています)


 実はこの五人に与えた特徴、前に書いたものほどありがち、後ろに書いたものほどオリジナリティがあるように書いた(つもり)。

 こういう明智光秀や伊達正宗を扱った作品はそうそうないと思う。


 では、彼ら五人としてではなく、五人ひとまとめの作品があったらどうか。

 SかMかに焦点を当てたコメディタッチの漫画か小説。

 たぶんないはずで、オリジナリティはかなりの高確率で白と判定されると思う。


 では前者の三名だけであったならどうか。

 気性が激しくドS、実は女の織田信長。

 猿に似ているが犬が好きで、信長によく従う究極にドMの豊臣秀吉。

 信長を超えるSになると天に誓った、血を見ると興奮する、けれど忍耐強い徳川家康。

 彼ら三名の登場する作品のオリジナリティ、白と判定される確率は五名登場時よりもぐっと下がると思うのだがどうだろうか。

 白なようなグレーなような、どこかにあるかもしれないような……。


 前者の二名だけならどうか。

 これは間違いなくグレー判定が最多だと思う。

 作品中の登場人物も三名以上で特徴づけないとオリジナリティが出にくいといえる。


 同じお題、戦国武将で焦点を変えてみる。

 気性が激しくドSな女の織田信長と、Mなようでただ痛覚がないだけの特殊体質かつ信長に一目ぼれして片目をくりぬいて贈ってふられたことのある伊達正宗。

 この二人が出てくる作品にはオリジナリティはあるだろうか。

 たぶん、白かグレーと答える人が多く、白と答える人が最多だと想像する。

 なぜか。

 それは伊達正宗の特徴が強烈すぎるからだ。

 たぶん、この伊達正宗一人が登場する作品であってもオリジナリティは保障されると思う。

 つまり、特徴づけの仕方によっては、三名以上に作品固有の特徴を与えなくてもよいということになる。


 とはいえ。

 また焦点を変えてみる。


 先に書いた伊達正宗はそのまま流用するとして、残る登場人物がいわゆるよく見聞きするような特徴づけしかされていない場合はどうか。

 気性の激しい織田信長、猿顔の豊臣秀吉、そんな秀吉と闘い天下をもぎとった徳川家康、信長にいじめられてキレて本能寺の変をおこしたとされる明智光秀。

 伊達正宗の設定だけが浮いているというのはここではおいておくとして、残る四人に目立った特徴づけがされていない作品があったとする。

 これは白? 黒? それともグレー?


 この最後のお題、オリジナリティを判定する鍵はストーリーにしかないと思うのだがどうだろうか。

 先に書いたとおり、この五人の登場する作品の主人公は織田信長だという前提がある。

 そうなると淡々と歴史を語ればほぼ黒に近いグレー(というか面白みがないので読まれない?)。

 伊達正宗が何らかで織田信長にからむシーンが数回でもあれば白とグレーの中間。

 伊達正宗に与えた特徴づけのせいで戦国時代が奇妙な方向に変わればほぼ白。

 つまり、作品のオリジナリティは登場人物だけにはよらないのだ。


 だが最初のお題、ロボットにまで戻って。

 どんなストーリーだろうとも、怪力少女のロボットが「んちゃ!」と笑顔で言えば、もうそれはあのキャラクターしかないと思う人がほとんどだと思う。

 つまり、登場人物に強烈すぎる特徴づけがされると、ストーリーはオリジナリティに影響を与えないということになる。

 怪力、少女、「んちゃ」。

 どれも大したことはない特徴づけだが、集まると非常に強烈なオリジナリティを発揮する場合があるということだ。

 これら集合体が有名コンテンツによって利用されてしまった後ほど、その傾向はあるだろう。

 たとえば海賊。

 腕が伸びる、ただそれだけの、今となればありがちな特徴づけ一つであっという間に作品にオリジナリティはなくなる。


 結論。

 創作物にオリジナリティを保障したいときはどうすればいいか。

 つまりは黒と勘違いされかねないグレー判定を回避するための方法は何かというと……。


 小説、漫画等のストーリーものの場合。


【登場人物の設定を無難、ありがちなものとしたいとき】

・組合せ方が他作品とかぶらないように、少なくとも三名以上にばらつかせて設定する。

・ストーリーの方に入念にオリジナリティをつける。

・腕がいい人限定:文体で最大の特徴づけをする(ただしこれは壁が高い)


【登場人物の設定を強烈にしたいとき】

・特殊な登場人物数に反比例してストーリーからオリジナリティを減らせる。

 つまり、強烈なキャラクターが大勢いたらストーリーは無難でもいい。ただの学園ものとか、医療ものとか。

・強烈なキャラクターは既存コンテンツに使われているとグレーどころか黒判定されかねないので注意が必要。よく調べるか、運悪く重複していたら共通する特徴を削除するのが手っ取り早い。



 デザインの場合もほぼ上記と同様。

 自分の作品と他の作品、共通点と相違点を明確にし、共通点は多くても二つとする。

以上の考察をもとに、自分でも今後の創作物に生かしていきたいと思います。

(小説だけでなく仕事もそう……がんばろう)

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして、こんばんは。 「感想」になっているかわかりませんが……。 法的なことを言うと、「依拠性」という話になりますね。 ただ、私にとっては感情的な問題なので、あえて「似ているものが出…
[一言] 短編はもったいない!
[一言] うはっ。信長が女。どっかで聞いたような。 楽しめました^^
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