愛想の良い青年と禁忌を破る老婆
ある村に一人の青年がおりました。その青年は生まれつきの美貌と愛想の良さから、村中の人々に愛されているのです。農作業の傍らに剣術の訓練もしていて、二の腕が引き締まったナイスボディを維持しています。しかし一方。この村には青年とかけ離れたとんでもなく邪悪で見るからに危険そうな人物がいるのです。その者は推定年齢60歳の老婆でありながら、子供のように幼稚な考え方をしていて、平気で村の罰則を破り、生きているのが無間地獄に等しい罪深い人物なのです。日頃から若者をこき使って自分は楽しようと目論む薄汚い老婆ですが、ついに村で伝わる禁忌の魔術に手を染めてしまいました。あまりにも強力で殺傷能力の高い魔法故に2000年以上封印され続けていました。普通の村人ならば破ってはいけないと自己判断して禁忌魔法には手を出しません。しかし、この醜い老婆は脳内年齢が7歳前後だからか、やっていい事とやってはいけない事の区別もつかないのでしょうか。普段から糞塗れのように悪臭を漂わせている老婆は、あろうことか魔力を持て余して家々を焼き払い、村人達に危害を加えています。事態の収拾を収めようと果敢にも決意した好青年の若者だけが老婆に対抗する決意を見せました。
「あたしに逆らうとどうなるか思い知らせてやるからね!」
敵対心剥き出しの老婆は怒り狂いながら即死魔法を連発していました。即死魔法は膨大な魔力を費やすため、並の魔法使いでは唱える事も不可能です。ところがこの老婆は禁忌によって魔力を膨大に増やして即死魔法の連発を実現していました。老婆は勝ちを確信した顔で魔法を唱えているようですが、相手が悪かったです。青年は魔法を使えませんが、持ち前の若さと体力を駆使して全ての即死魔法を避けたのです。いくら魔力が増大したと言えども限界があるので、老婆は目に見えて疲れた様子でハアハアと肩で息をしています。どうやらスタミナ切れのようです。
「チェックメイトだ」
「何を言うんで! これまであたしが散々可愛がってきたじゃないか。命を取るなんて、あんた……酷過ぎるやろうが!」
これまで歩んできた人生そのものが罪深い老婆は、今に及んで命乞いをしてきたのです。しかし、老婆と比べて正義感の強い青年は決して許さず、剣を軽く振りました。足元にはコロコロと汚らしい老婆の顔が白目を剥いて転がります。青年はその汚物を拾って天に掲げると、村人達は一斉に万歳三唱を行いました。
「やったぞー。あのクソババアをついに殺しやがったぜ!」
「貴男はなんて勇敢な人なの……すごいわ!」
「今日は赤飯じゃああああああ! 祭りじゃ祭りじゃ!」
こうして、村ではクソババアの死を喜んだ村人による祭りが三日三晩行われた。今回の死闘で勇者に等しい活躍をした青年は、村人から出された豪華絢爛の食事を頂戴して幸せ太りしたそうな。
めでたし、めでだし。