ヨンノハナシ 旅立ち
「勇者方がどなたかは分かりましたね。ですが竜司殿も平均的な人間よりはずっと強い。決して弱くはございませんので気を落とさないでください。」
だが俺は、王が『多種族には劣りますが』、と呟くのを聞き逃さなかった。
「とりあえずはステータスのことを説明しましょう。」
そう言って王は話を進めた。まぁ、ここも俺がかいつまんで説明する。
ステータスの上昇は、最初に倒した討伐体が大きく関わる。何故ならこの世界では、最初に倒した敵のステータスがスキル以外丸ごと手に入るからだ。
レベルアップでの上昇は、レベルアップ時に倒した魔物のランクで大概決まる。ランクはF〜Sの7ランクあり、ランクが高い程数値が上がりやすいというわけだ。
「説明が終わりましたところで、竜司殿の処遇についてなのですがーー」
「その事についてなんだが、俺は旅に出る。俺がここにいても邪魔なだけだし、第一俺がここにいる意味がないだろう?それに俺は自分が呼び出されたこの世界をみてまわりたい。勇者でない俺は何もする事がないんだからな。
まぁ、多少の餞別と、この世界の一般常識はもらいたいんだが。」
俺がそう言うと、王はしばらく悩んだ後
「分かりました。こちらが無理矢理、しかも間違えて呼んでしまったのですから貴方の意思を尊重します。」
聞いてみるとどこの世界も一般常識なんてものは同じようなものらしい。
違うといえば、稀に魔法を使う人間や魔物がいる事や、通貨ぐらいだろうか。因みに通貨は、
銅貨|(10),銀貨|(100),金貨|(500),白金貨|(1000),王金貨|(5000),神金貨|(10000),神王金貨|(100000)
と、なかなか日本と似ていて覚えやすい。まぁ、後半名前負けしてる感は否めないが。
旅立つ時に、クラスメイトと別れの挨拶をしたが、皆俺の身を案じ、斎賀なんかは俺に抱きついてきやがった。ステータスの差でこの身が砕けるかと思った。
王からは、王金貨50枚と、刀?をおくられた。何故?、と聞くと、
「東国の鍛治師が打った名剣と言われるが、城には使える者はおりませんし、勇者方も使えないという。そこで竜司殿ならばどうかと思ったわけです。まぁ、使えないようなら取り替えますがどうでしょうか?」
刀は祖父に習って十全には使える。刀もかなりの業物のようだ。握りも長年使ってきたかの様に手にしっくりとくる。文句の一つもない名刀だ。
「いや、この刀、気に入った。もしかしたら、生涯使い続けるかもしれないな。」
それが城での最後の会話となり、俺は新たな世界へと一歩を踏み出した。