フタナナノハナシ 唯華の村にて
宿の人たちへの挨拶を終え、俺たちはひとまず唯華の村を目指していた。
その道中は、もうウハウハだった。魔物が出るわ出るわ、狩るわ狩るわ、奪うわ奪うわ、マジ楽しい。楽しくなかったのは唯華から冷ややかな目で見られてたことだけど、しょうがないだろう?今まで倒してきた魔物はゴブリンばかりだったから、他の種類の魔物がとても新鮮なのだ。コボルトみたいな魔物とか、犬か猫かを混ぜたようなのもいたな。
あと、基本的に倒してたのは俺だけど、パーティ効果と成長促進の効果で、二人ともレベルがそれなりに上がってた。
そんなこんなで数日たって、唯華の村に着いたわけなのだが。
…村には誰もいなかった。一応声を上げてみたけれど、やって来たのは声に引かれた魔物だけだった。
「竜司、ちょっと家に行ってみてもいいかな。確かめたいことがあるから。」
唯華の問いかけに俺が了承を示すと、彼女は一つの家へと入っていった。ついて行くとその入り口付近には、何かの破片が散乱していた。これが結華の使った花瓶だろう。
唯華は箪笥の引き出しを開けて、何かを探しているようだった。
「何をしているんだ?」
「えーとねぇ、このあたりに隠し穴がある筈だから探してるんだけど、どこだったかな。」
聞けばこの村では村に何かが起きた時に、家族への緊急連絡用に手紙などを残す隠し穴を各家に作っているらしい。ただ、唯華は場所を覚えていなかったようだ。
…箪笥はちょっと不用心ではないだろうか。
「あった!」
しばらくして、唯華はやっと隠し穴とその中にあった一通の手紙を見つけた。ちなみに、あの箪笥。からくり箪笥?とかいうやつで、中に隠し箱がある仕組みだった。
手紙の内容はこんな内容だった。ソフィというのは唯華のことだ。
『 ソフィ、君がこの手紙を読んでいるとき、この村には誰もいないんだろう。お前を辛い目にあわせてしまってすまない。
お前が連れ去られてしまった日、この国の人間に見つかってしまってはこの村にはいられないとの決断が出た。その結果、お前を置いて行ってしまう事になったし、行先も、万一を考えて、国外。としか伝えることができない。
お前を守る事も待つ事も出来なかった父さんを許してくれ。愛しているよ、ソフィ。』
「……よかった。」
ぽつりと零れ出る安堵の呟き。ふと見ると、唯華の顎先から涙が滴っていた。
「また家族を失っちゃったんじゃないかと思ったよ。」
「でも生きてる。生きてたらまた会えるさ。」
「そうだね。また会える。また会えるよね。」
その日は唯華の家に泊まり、次の日に国を出る事にした。
しかし、なぜこの村の人たちはこの国に留まり続けていたのか。そんな疑問を抱きながら眠りに落ちた。




