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我らたいあたり検証班  作者: あおいしろくま
セルカと指輪と伝染する悪夢
19/35

セルカと指輪と伝染する悪夢⑲~エピローグ~

今日は一日二本上げると言ったな。――あれは嘘だ。

というわけで本日三本目になります。

第一章もこれが最終話。エピローグになります(蛇足とも言う)。


では、どうぞっ!

 「小規模ですが、マナの流れの乱れが観測されたそうです。」


 僕が白いイノシシと死闘を演じてから三日後。

 オーリエさんのお見舞いに訪れた僕とジト目さんは、病院からの帰り道を並んで歩いていた。


 オーリエさんは未だ入院中だ。

 あの時、無理をし過ぎたせいで、意識を取り戻してからも退院の許可がおりなかったそうだ。

 ……本人は不満げそうだったけど。


 「あの日、街中でも光の粒が昇っていくのを見たという人がいました。ですので、観測所があの日のフレイルにおけるマナの流れを調べたそうです。」


 「で、調べてみたら乱れがあったことが確認されたと」


 「……そういうことです。」


 セリフを取られて少しだけ不機嫌そうなジト目さん。

 あの日以来、本当にジト目さんの気持ちがほんの少しだけわかるようになった気がする。


 「……なんですか?」


 「なんでもないですよ~」


 「……やっぱり、セルカ様も入院した方がよろしいのではないでしょうか。」


 「はいはい。わかりましたよ~」


 「……なんでしょう。無性に腹が立ちますね。」


 活気の戻った街を二人で歩く。

 病院の近くだというのに、露店の客引きの大声が響いている。色とりどりの露店の屋根が目に眩しい。でも、やっぱりフレイルの街はちょっと騒がしいくらいがいい。

 ジト目さんが眠たげに目をこする。

 なんだか、いつものこの街が帰ってきたんだって感じた。

 

 「……良かったです」


 「……はい?」


 「こんなふうにジト目さんと散歩できて」


 「……。」


 ジト目さんは答えない。

 混み合っている道を避けて、ちょっとだけ遠回りしながら歩く。

 と、少しジト目さんが遅れ始めた。ペース、ちょっと速かっただろうか。少し歩くペースを落として、再びジト目さんに並ぶ。

 ジト目さんは歩きながら通信結晶を操作していた。過剰なほどに礼儀正しいジト目さんにしては珍しい。


 「なにやってるんですか?」


 「いえ、ちょっと同僚に、いい頭の先生を知らないかと聞いていただけですよ?」


 「辛辣っ!」


 なんとか、ジト目さんは通信結晶をしまってくれた。……街を救ったのに三日後に精神科に直行は遠慮したい。


 「あ、そうでした。セルカ様、依頼されておりました件ですが、調査結果が出ましたよ。」


 「ホントですか!?まだ三日しか経ってないのに……」


 「ええ、ちょっと無理してもらいました。」


 ……そんなに眠そうですもんね。


 「ありがとうございます」


 「……では、結果の方をお伝えさせていただきます。結論から申し上げますと、過去に、ピンク色の毛玉のようなモンスターが目撃された例はありませんでした。」


 「そうですか……」


 「おそらく、リシア様の……。」


 「ええ、リシアのクラス専用スキルの影響でしょうね。となると、真相の究明も難しいですかね~」


 「……すいません。」


 「……どうして謝るんですか?」


 「セルカ様の仮説が証明できたなら、しかるべきところに発表すれば名誉が手に入るのですよ?少なくないお金もいただけたはずです。私はそのお手伝いを果たすことができませんでした。……それでも謝る理由としては不足ですか?」


 「いえいえいえいえ!僕が言いたいのは、ジト目さんが謝る必要はないってことですよ。僕のわがままで調査を依頼したんです。感謝はしても、文句を言うことなんてありませんよ」


 「ですが……。」


 「今回の件は、ほとんど僕のせいみたいなものです。それで稼ごうなんて思ってませんよ。それに、再発の可能性がないのなら詳細がわからなくたって構いません。

いつもの風景が戻ってきた。それだけで十分ですよ」


 「……。」


 「そんなに渋い顔しないでください。あ、そうだ!これから一緒に昼寝でもどうですか?」


 「えっ、いや――」


 僕はジト目さんの前を振り返りながら駆け出す。

 ……回廊庭園の穴場スポットとかどうだろうか。僕のせいであんまり寝てないみたいだし、ちょっとぐらい恩返しもしたいしね。


 「……どこへ行こっうてのかしら、セルカ?」


 そこに現れたのは額に青筋を浮かべたリシアだった。


 「いや、今からちょっと昼寝に――」


 「だまらっしゃい!」


 「はいぃぃぃ!」


 怖い。なんで怒ってるのか全く想像がつかないのが余計怖い。むしろあの日の白いイノシシよりも怖い。


 「あの時、なんで薬屋さんの鞄漁ってたのよ!ちゃんと説明してよねっ!」


 「だから、あれは――」


 「おいおい、セルカさんよぉ、あの指輪壊しちまったそうじゃないか。何があったのか詳しい説明を要求したいぜ」


 「まあまあ、みんなそれくらいでやめときなよ」


 『出番的に負け犬な奴は黙ってて!!』


 「おいおい、それは言っちゃダメだろ!?」


 何故かそこには(オーリエさんを除いた)全員が集まっていた。

 ……いきなりカオスな感じになってるけど。


 『で、どうなの(どうなんだい)セルカ!』



 まぁ、こういう時は……逃げるに限るよね!


 「行きましょう!」


 「ですから私は――」



 僕は迫り来る野獣から逃げる為に、ジト目さんの手を強引に握って、喧騒に満ちたこの街を走り出した。

 

 


 

このような駄文に、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

というわけで第一章完結になります。


もし、読んでよかったと思っていただける方が一人でもいらっしゃったら幸いです。

第二章の予定等は活動報告の方に上げますのでよろしければどうぞ。


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