第三章 泗(過去)
真っ暗闇。
闇は全ての光を吸収する。
全ての希望を。
全ての期待を。
全ての楽観を。
完膚無きまでに吸い込み、飲み込み、吸収していく。
正直、心の片隅で――深刻に悩むふりをしながらも、いつかは解決するのだと、どうにか何とかなるものだと、思っていた。じっと我慢さえしていれば、いつか大人が解決してくれるのだと、どこかで思っていた。
だけど。
だけれど。
状況は何も変わらなくて。
いや――恐らくは、前よりも悪くなっていて。
先生に相談したのが間違いだった。イジめられてます、辛いので助けて下さいなんて直球で頼んだところで――彼らに何ができると言うのか。奴らに『やめろ』なんて言ったって――結果は、火に油を注ぐだけで。『チクった』なんて騒がれて、前以上に陰険で残酷な方法で、いたぶられて、遊ばれて、笑われて。
死ぬまで、こうなのかな。
希望がなくなったことで、自重が増したような気がする。踏み出す足が物凄く重い。目の前が暗くて、向かう先が分からない。
どうすればいい。
どうすればいい。
僕は、どうすればいい。
誰も教えてくれない。
誰も、助けてくれない。
傷つけられて追い詰められて退けられて否定されて――それが僕の人生だと言うのなら。
それが、生きるということなら。
そんなの、もう耐えられない。
限界だ。
逃げるしか、ない。
どこへ?
どうやって?
そんな場所も手段もないことは、すでに確認済みだった筈だ。だけど、まだ検討してない場所が一つだけある。そして、そこへの行き方も――。
ロープ。
薬。
包丁。
カミソリ。
踏切。
屋上。
お風呂。
海。
重い頭に、様々な映像が明滅する。方法は無数にある。その中から、できるだけ確実で、苦痛の少なそうなモノを選択する。
もう、死ぬしかない。