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Run away! 1

冬。

作者: 貴幸

「ハルトさん、寒いです。」


何故この人はこんなにも寒いのに屋上にいるのか。


「じゃあどっかいけばいいだろ。」


「うぅ…」


なにも言えない。

いつも通りハルトの隣にしゃがむ。

雪が少しつもった。


「くしゅんっ。」


くしゃみもでる。

やはり寒い。

諦めて帰るしかないのだろうか。

ハルトはマフラーもつけてる。

いいなぁあったかそう。


「…お前すぐ顔にでるよな。」


「そうですか?」


ポーカーフェースは得意な方だと思うけど。


「マフラー欲しいって顔にかいてある。」


そういうとハルトは私にマフラーを巻きつけた。


「…!?!?」


あまりに優しい行動に不安になる。

まさか熱があるのでは。

おでこに手をあてようとすると嫌がった。

というか殴られた。

理不尽…。

マフラーつけていていいのかな。

ついさっきまでハルトがつけていたものだ。

く、口元まで覆っていたマフラー…


「ハルトさん、本当にマフラー良いんですか?」


「どっちにしてももう遅いだろ。」


「そうですね、洗って返しますから安心してください。」


「いいよ別に。」


なんで今日はこんなに優しいんだ。


「ハルトさん、ここ雪積もったらこれませんね。」


雪かきもしないここは塞がれてしまうだろう。


「まさか雪かきするんですか?」


冗談まじりにきく。


「んなことやるバカが何処にいるって言うんだ。」


普通に正論を言われた。


「図書館行く。」


図書館という言葉にすこし ワクワクする。

でもふと現実に戻る。


「図書館って放課後しかあいてませんよね」


「ここは普通いつでもあいてねーよ。」


ハルトは鼻で笑ってみせた。

ああなんだか先生に見つかる前に帰りたくなってきた。


「ハルトさん、寒くないですか?」


「普通。」


そう言ってる本人は震えてる。

…何故いじをはる。


「ずっとここにいたんですか?」


「うん」


「何時間目から?」


「二時間目から。」


それから二時間ずっといたと…。


「寒いに決まってるじゃないですか、それ。」


手をつかむ。

冷たい、死んだみたいだ。


「もう外でないでくださいよ…。」


少しもったいぶった表情をし、空を見た。


「…雪。」


「雪?」


「雪で遊ばせたかったなとか…。」


何の事を話してるのかはわからないけど、とても悲しそうだ。

…とても。


私はハルトの手をぎゅっとつかんだ。


「何つかんでんの。」


手を振り払われた。

やっぱり嫌がられた。


「でも、あったかいな。」


そう言うと私を抱きしめてきた。

意識が宙にまいそうになる。


「ハ、ハルトさん?」


しっかりとした手で肩をつかまれてる。


「熱あるかもしれない…俺…。」


いや、絶対にある。


「保健室いかなきゃですね。」


鼻水をすすりハルトは少しいやそうな顔をした。


「病院は嫌いだ…。」


病院とはいってないんだけどな。


「保健室ですよ、早退しましょう。」


「そしたらお前が一人になるだろ。」


ぽろっと言われた。

え、私?


「私は大丈夫ですよ…?あ、お見舞いに行きますね。」


「うん…。」


無意識なのか、胸に顔をうずめてくる。

拒むに拒みきれず、なんだか変に恥ずかしい気分だ。

あぁ、もうこの人完全に風邪をひいている…。


「ほら、ハルトさん、たって。」


「あのさ」


「なんですか?」


今日はやけに話してくる。



「なんで人って死ぬの。」



空気が一気に凍りつく。

それは、私も知りたい。



「じゃあ、ハルトさんは一生生きていたいですか?」



返事は返って来なかった。

なんだろう、風邪をひいて思った事がぽろぽろ出てるのかな?

ハルトはふらふらとしながらも立ち上がった。

ようやく保健室に行く気になったのだろうか。

振り向くとハルトは私の目を見た。


「カナ、学校終わったらはやくこいよ。」


優しく微笑むと頭を撫でられた。

撫でられた部分があつい。


「は、はい。」


またハルトはふらふらとしながらも保健室へと向かっていった。






「カナって呼ばれた。」



普段はお前か苗字なのに。


「お見舞い行くって言っちゃったなぁ。」


外は寒いのに、顔だけがあつかった。




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