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賦活

登場人物


清和邑弥せいわさとみ 40歳

保田修一ほだしゅういち 40歳

東条孝とうじょうたかし 15歳

犬懸智美いぬがけさとみ 15歳

御厨礼儀みくりやまさのり 15歳

館山仁たてやまじん 15歳

三浦比奈季みうらひなき 15歳

「この先かな」

閑静な住宅街に車を停める修一。

会える保障などない、だけど、何かが変わる気がしてここまで来た。

面識も無い者がいきなり尋ねて行って、何をしようというのか。

運良く会えたとして、何と言うつもりだ?

「あなた一度死んだの?」

なんて聞けるわけが無い。

修一の取材が確かなものだったとは言えないが、胸騒ぎのような何かを確かに感じたから。

名前を聞いて会いたいと思ったから。

「家にいるかな?」

日曜だからこそ外出している可能性もある。

いや、いる……。

何だろう?この感じ。

高鳴る鼓動。

先日目覚めたばかりだと言うのに、また何かが起ころうとしている……そんな気がする。

「修一さん、ごめんなさい。ちょっと待ってて」

そう言い置くと、車を降り歩き出す。

角を曲がり一歩二歩、傍らの2階建ての家を見上げる。

あの部屋だ……。

誰に聞いたわけでもない、けど間違いない。

何故自信を持って言えるのか。

自分でもわからないけど、魂が反応している。

何だろう?この不思議な感覚。

そして……この光。

自身を包む乳白色の靄にも似た煌きに気付く邑弥。

今まで見たことも無い不思議な輝き。

広げた両掌から立ち込める白い光の帯が、窓の方へ流れて行く。

波?波の音が聞こえる。

年老いた時計のような、優しいさざ波の音色。

静かに時を刻む潮騒に抱かれながら目を閉じる。

青い波動に誘われるように目覚めていく何か。

細胞の一つ一つが活性化するような心地よい痺れ。

閉じた瞳に、波間に照りかえる太陽が見える。

邑弥は気付いていなかった。

いつしか黄金色に染まる自身の体に。


ずいぶんと時間が経った。

邑弥はまだ戻らない。

心配になり後を追う修一。

角を曲がった時、その後姿が見えた。

何をしているのか?微動だにしないそのか細い背中に声を掛ける。

「邑弥ちゃん?」

振り向いたその表情は何故か晴れやかだった。

吹っ切れたような笑顔で修一を見つめる邑弥。

「帰りましょう」

夢幻のような時間。

会ったわけではない。

言葉を交わしたわけでもない。

でも、確かにお互いを感じあえた。

そんな気がする。

館山仁君……いつか、また。

邑弥は修一のジャケットの袖を掴んで、確かな足取りで歩き出した。


「孝ちゃん今どこ?暇してない~?」

スマホに見知らぬ番号、礼儀からの電話だった。

教えた覚えは無いぞ?

「今、家にいるけど……」

智美が聞き耳を立てている。

「俺、ひなきちゃんと一緒なんだけどWデートしね?」

「は?」

ひなきちゃんって誰だ?

「三浦さん、クラスメイトの三浦比奈季ちゃん」

小声で説明する智美。

ふむ。

何と言うか……手が早い。

「で、どこにいんの?」

「山王公園。智美ちゃん誘ってこっち来いよ。カラオケにでも行こうぜ」

「智美なら今ここにいるよ」

「なんですと!?」

暫しの沈黙。

なにやらむこうで話している。

「あ~~~……お邪魔しちゃったかな」

何を勘ぐってるんだ、タワケめ。

傍で話を聞いていた智美が口パクで行こうと言う。

「今から行くから、池のところで待ってて」

「いや、お楽しみ中悪……」

電話をぶち切った。


「お~い」

大きく手を振る女子、駆け寄り抱き合っちゃってる。

この世代の娘はみんなこんな感じか。

妙に年寄りめいた視点の孝。

会うなり両手を合わせ謝る礼儀。

「スマン、ニャンニャン中に」

ニャンニャンって何だ?タワケ。

「で、何で三浦さんと一緒なの?」

「漫画本あさりに行ったらたまたま会ってさ。これも何かのご縁ってことでお誘いしたわけだ」

まぁ、お盛んですこと。

「孝ちゃんこそ何よ。この間はすっとぼけてたくせに」

ああ、彼氏云々の話か。

あれから進展があったわけで、あながち嘘ではなかったんだが。

あれ?そう言えば……まともに好きだとは言ってないよな?

良いのか?これで?

男としてどうなの?首を傾げる孝。

「何悩んじゃってるワケ?」

「あ、いや。ちょっとな」

智美の方を見ると比奈季ちゃんと腕組みして何やら話している。

この世代の娘は(ry

「んじゃどうしよっか。どこか行きたいとこある?」

女性陣に問い掛ける礼儀。

「カラオケ~」

ハモる2人。

「おっけ~い。んじゃ乗り込みますか」

礼儀が馴れ馴れしく肩を組んできた。

その瞬間、静電気のスパークにも似た痛み。

「おわっ!!!」

「痛ぇ~~~」

「何やってんの?」

呆れている女子。

「静電気パチパチ君が……」

説明する礼儀。

いや、静電気じゃねぇだろ?

智美を見ると、微かに頷いている。

静電気とは明らかに違う性質のものだった。

やっぱり、こいつにも何かある。

だけど、どうすべきか。

本人は気付いていないようだけど、このまま放置していいものか。

「孝ちゃんの気に反応しているみたい」

「うぉっ!?」

脳に直接届いた智美の声。

こんなこと出来るようになってたのか。

「んじゃ、あれか。俺達近くにいない方がいいのか?」

頭の中で問い掛ける。

……

返事が無い。ただの屍の(ry

読み取れなかったのだろうか。

まぁいいや、今度ゆっくり話そう。

場合によっては館山に相談する必要も出てきそうだ。

孝はとりあえず、あれこれ考えるのを止めにした。

第三女鄙木(ひなき)姫→比奈季(゜ー゜*)

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