共鳴
登場人物
東条孝 15歳
犬懸智美 15歳
御厨礼儀 15歳
「何ぼ~~~っとしてんの?」
前席の御厨が真顔で俺の顔を覗き込んでいる。
「今にも涎垂らしそうなんですけど……」
我に返り周囲を見回す孝。
「いかんいかん……」
昨夜遅くまで能面野郎の制服をネットで検索したが、結果は出せなかった。
少々寝不足であることは否めない。
「東条ってさ、山王中だったよな?」
「そうだけど?」
「犬懸と一緒だよな?」
智美の名前に思わず身構える。
「彼氏いんのかな?」
コイツ……狙ってやがるのか……。
「ん~~~~わかんね」
いないとは思うんだが、正直判らない。
「結構可愛いよな」
どう答えていいか躊躇していると、智美と目が合った。
ニッと笑いかけてくる。
「おや?」
その様子を見て、御厨が我得たりとばかりに孝の肩を叩く。
「スマン、聞かなかったことにしてくれ」
「は???」
何だお前は?何を勘違いしているんだ?
まぁ、恋敵が少なくなるのは歓迎するが。
……って恋?
ちょwww俺wwwwwワロスwwwwww
「何思い出し笑いしてんの?2時限始まるぞ」
呆れ顔の御厨。
「あ~~~、テストって言ってたな。やべぇな」
そうだった、忘れてた。
なんもやってねwwwww
潔く実力で勝負しようと決めた孝だった。
試験開始から10分後、ペン回しに興じる孝の姿。
やれるだけはやった、この試験に一片の悔い無し!
そう言えば、昨日のあの感覚……。
静かな教室内、ふと我に返る。
サイコキネシスとか言う奴なのかね?
検索ついでに超能力のことも調べてみたが、いまいちわからなかった。
他にもテレキネシスだのテレパシーだの色々ヒットしたが、チンプンカンプンだった。
実際夜中に再現しようとしてみたが、何も起こらなかったし。
やっぱ、気のせいだったのか……弾いたペンを凝視してみる。
いつもより多く回しております……。
えっと……。
あれ?
浮いてね???
「おわっ!!!」
椅子から跳ね上がる孝。
クラス中の視線が集まる。
「そこ、何やってんの。静かにしなさい」
先生ゴメンナサイ、でも今ね……浮いてたんすよ。
ペンを握り締め着席する。
マジかぁ?また寝ぼけてんじゃ?
う~~~~む……。
試すのはもうやめにしとくか、良からぬ事が起きたらコトだし。
でも、もう一度だけ……。
えい!
ピシッ!!!
窓ガラスに走るヒビ。
え?俺?俺じゃねぇよ~!
声を大にして叫びたかった。
皆が割れた窓の方を注視している中、視線を感じる。
「お前、今何した?」
そこには、怪訝そうに振り向く御厨の姿があった。
保健室のベッドで横になっている御厨。
貧血を起こしたようだった。
あの時、冷や汗をかきながらこっちを見てたけど、俺何もしてないぞ?
「御厨君、気分どう?」
尋ねる智美、一緒に連れて行くといって聞かなかったわけだが。
「大分良くなったかも、ありがと」
額のおしぼりを押さえながら答える。
その様子にほっとしていると、智美が肘で小突いて来た。
「孝ちゃん、さっき何したの?」
「え?俺なんも……」
「嘘、赤いのが見えたよ。3回」
ん?昨日言ってたあれか?やっぱ何かしら感知してんのか?
でも、3回って……。
念の為、指折り数えてみる。
2回……だよなぁ。
「東条、お前さっき後ろで何してた?体が振動して気を失いそうになったわ」
「え?」
智美と顔を見合わせる。
「2回目なんかビクって来て、おかげで変になったぞ?」
まさか……こいつも?
「あの、さ……。変な事聞くけど。お前超能力とか使える?」
横たわったまま真顔で凝視してくる御厨。
「ナニソレ?ばっかじゃね?wwwww」
「あは、あはは……だよねぇ。お前が超能力でガラス割ったんじゃないかなってね……」
「ウケルwwwww」
一頻り笑い転げた後、ゆっくり起き上がる。
「てか、お前らお似合いだな。ホント羨ましいわ」
はい?
また智美と顔を見合わせる。
「俺達は別に……なぁ?」
「……うん」
おや?ちょっと残念そうな表情。
「ふ~~~ん。ま、いっか。」
微妙な空気にニヤリとしつつ続ける御厨。
「えっと、智美ちゃんだっけ。俺は礼儀と書いてマサノリ。タカシちゃんに飽きたらヨロシクね」
こいつ、しっかり聞いてやがったか。
しかもあなどれない奴。
密かに闘争心を燃やすタカシちゃんであった。
御厨城主:犬村大角礼儀→御厨礼儀