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胎動

登場人物


東条孝とうじょうたかし 15歳

犬懸智美いぬがけさとみ 15歳

「タカシちゃん」

珍しく幼馴染の犬懸智美が声を掛けて来た。

小さい頃は良く遊んだものだが、思春期を迎えた辺りから疎遠になった気がする。

別に嫌っている訳ではないのだが、やはり照れ臭さがあったのだろうか。

「どした?」

わざと素っ気無く応える。

「せっかく同じ高校に入れて、クラスも同じなのに何?その態度」

少し膨れッ面になる智美。

幼い頃のままだ、喧嘩するといつもこんな顔をしてた。

「孝ちゃんはやめれ」

「あらw」

下から覗き込むように見上げると屈託の無い笑顔をみせる。

「昔からそう呼んでたから、今さら東条君は無いわね」

正直最近綺麗になったと思う。

だからなのか、見かける度にドキドキしている自分に気付く。

他の男子と話をしているのを見てむかついたりもした。

幼馴染に惚れるとか安易過ぎるだろ、いつも自分に言い聞かせている。

でも、これってやっぱり惚れてるってことなのか?

「何難しい顔してんの?」

「別に普段通りだけど文句あっか?」

「あらあらwご機嫌斜め。たまには一緒に帰ろうかと思ったんだけどなぁ」

ジッと見つめてくる。

その瞳に少しどぎまぎして答える。

「お、同じ方向だし、たまにはいいんじゃね」

女子の集団がニヤニヤしながらこちらを見ている。

一緒に帰るくらいいいではないか。

少し鼻の穴を膨らませて孝は歩き出した。


校門を出て川沿いの土手を歩く二人。

それまでクラブ活動のことや担任のことを喋り捲っていた智美が急に黙り込んだ。

「ん?どした?」

右のこめかみ辺りを押さえる智美。

「耳鳴り……かな?」

辛そうな表情。

思えば二人とも幼い頃から病弱だった気がする。

原因不明の高熱や動機、息切れ。

同時期に発症することが多かったらしいが。

「俺はなんともないな」

そう思いながら智美の肩に手をやる。

その刹那、背後から感情の無い声がした。

「フリョウヒンミツケタ」

振り向くと同時に宙に舞う体。

!?

柔道の出足払いを喰らったような感覚。

何が起きた?

考える間もなく土手に叩きつけられる。

「タカシちゃん……」

頭を押さえながら駆け寄る智美。

その向こうに他校の制服を着た男子学生の姿。

能面のような表情で感情が読み取れない。

その瞳が妖しく光った気がした瞬間、智美が悲鳴を上げ両手で頭を抱え込む。

「なんだこいつは……」

考えるよりも先に体が動いていた。

コイツは危険だと五感が訴えている。

「ジャマスルナ」

その男に触れることも叶わず弾き飛ばされる孝。

「サイキック?」

霊感だの超能力だのは信じない。

だが、これは……?

躊躇している暇は無かった。

智美の瞳から溢れる涙、間違いなくこの男の仕業だ。

「くそっ!」

再度男に飛び掛る。

「智美!逃げろ!」

例によって無表情のまま孝を見据える男。

「弾き飛ばされて溜まるか!」

幼稚園の頃だったか、智美を虐める年長組にもこうやって突っかかって行ったっけ。

何でこんな時に思い出すんだと笑いが込み上げて来た。

ドクン……。

護りたいという純粋な気持ちに何かが呼応した気がした。

そして襲い来る、体のベクトルが狂う感覚。

これがこいつの攻撃か!

上手く表現出来ないが、何かが見えた気がした。

何故かは判らないが、不可思議な攻撃をかわせる気がした。

「っ!このぉ!!!」

男の瞳に明らかな動揺の色。

孝のタックルを受け、後方に吹き飛ばされる男。

いや、感覚はあったが実際に体は触れてはいない。

何だ?今のは。

全身に何かの気を纏っている様な不思議な感覚。

今まで体験したことの無いオーラのようなもの。

能面野郎がゆっくりと顔を上げる。

対峙しつつ、横目で智美の方を気遣う孝。

肩で息をしているが、大丈夫なようだ。

「オマエモカ……」

踵を返す男。

「待て、この能面野郎!」

叫ぼうとして思い止まった、今は智美の方が大事だ。

「智美、怪我は無いか?大丈夫か?」

「うん……」

おろおろしている孝を見つめ、にっこり微笑む智美。

「幼稚園の時もあったね、こんな事」

少ししゃくり上げながら笑う。

「ああ、そうだな」

言葉にはせず頷く。

それにしても、さっきの男は何者なんだろうか。

正体は?目的は?

不良品って一体何なんだ?

暮れ行く空を見上げながら、孝は大きく息を吸った。

東条城主:犬塚信乃戍孝→東条孝

犬懸城主:犬坂毛野胤智→犬懸智美

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