表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DSWB  作者: 檀敬
10/10

十、Darkling Black

 深い眠りに落ちた俺は、夢も見ていなかった。

 ただ、そこには漆黒の闇が広がっていた。

 完全シールド型のハードメタルタイプの宇宙服を着て漆黒の宇宙にいる時も、今こうして眠りに落ちて真っ暗な闇の中にいる時も、どちらも変わらないことに俺は気付いた。


 漆黒の宇宙。

 真っ暗な闇。


 俺にとっては最初、それらのことは恐怖する存在だと思っていた。

 暗黒を意味してきた過去の表現は、恐怖や悪のイメージだったからだ。


 そのことを誰かがプリミティブに問うただろうか。

 ホントに暗黒が恐怖なのかと。

 そして暗黒が悪なのかと。


 俺は気が付いた。

 そうじゃないことに。


 何もかもが落ちてゆく、この自由落下な浮遊感。

 身体の重さは素より、心の重ささえ感じない無重力感。


 なんて自由なんだ。


 メアリーはいとも簡単に言い放った。

 あたしは『無』から生まれた、と。

 無という言葉を闇に置き換えてもいい、とまで。


 メアリーは人間じゃない。

 でも、メアリーは人間だ。

 いや、そのどちらでもない。


 それでいいじゃないか。 

 何がいけないんだ?

 誰も何も困らないじゃないか。


 その瞬間、その瞬間だけだったかもしれないが、俺はメアリーの気持ちが理解出来たような気がした。


<テオ、聞こえる? あたしよ、メアリーよ>

 俺は微笑んだ。

 当然のことだった。

 そうなることは、あの瞬間に分かっていたことだ。

<聞こえるよ、メアリー>

 俺はメアリーに応えた。

<あたしの言った通りだったでしょ>

 俺はうなづいた。

<あぁ、そうだね>


 メアリーの姿は見えなかった。

 漆黒の宇宙の中に輝くブラックホールのように。

 真っ黒な闇に飛ぶ烏のように。


 でも、見えるから何だというのだ。

 見える必要なんて全くないのに。


 俺はメアリーを身近に感じていた。

 俺の手の届くそばにメアリーがいる。

 一ミリメートルも離れていない場所にメアリーがいる。

 それだけで十分だ。


 俺は至福の涙を流した。


 次の瞬間、自室の照明が眩しかった。


 俺は夢から醒めたのだ。

 あれを『夢』と称することが出来るのなら。


 あれは夢なんかじゃない。

 闇の中の現実。

 漆黒の宇宙の真実。


 メアリー、また逢おう。

 俺はいつまでも君のことを……。

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

 皆様の率直なご意見、ご感想に耳を傾けたいと思っておりますので、この作品の感想欄または「空想科学祭2011」の感想板にお書き込みをしていただけるとありがたいです。

 また「空想科学祭2011」の企画サイトには、もっと素敵なSF作品が目白押しですので、そちらもお読みいただけたらと思います。



【付録】DSWB:設定資料一覧(二〇一一年十一月十三日追加)


 『空想科学祭2011』が終了しましたので、設定一覧なるモノを追加してみました。

 だけど、この一覧で解り易くなるかどうかは不明。「ここまで考えていましたよ」という意思表示であって、それ以上のものとも思えないけれども。

 一読していただいて、物語に深みを感じていただければ嬉しいです。



●貨客運搬船「ユニバース号」仕様一覧


○機関仕様:

ディメンショナルスーパーストリングス(DS)エンジン第四世代タイプ×二基

(チェンバー変換効率七十八パーセント・最新型より二世代前のエンジン、という設定)


○搭載量:

スペースカーゴコンテナ(断面直径三メートルの六角柱形状で、長さは十メートル)を七断面個×五列の三十五個を運搬可能。

(宇宙船総量数的にはローレンジだが可積載総量数的にはハイクラス、という設定)


○客室:合計・十ベッド

スイート・一室(四名分スペースの二名分)

アッパー・一室(四名使用の広い部屋)

レギュラー・二室(二名分×二室)


○船舶業務:

コンテナカーゴ貨物の運搬(スペースカーゴコンテナ・三十五個)

旅行客の運搬(旅客十名)


○運行宙域:

アウターペルセウス腕近傍から外天の川銀河の辺境域

地球から七千光年のペルセウス座・散開星団 h+χ(エイチカイ)での輸送業務

西側の星団 NGC-八六九"hエイチ"から東側の星団 NGC-八八四"χ(カイ)"への輸送がメイン



●貨客運搬船「ユニバース号」乗組員組織一覧


乗組員総員:船長以下、二十七名


船長キャプテン船舶の全ての総責任者(一名)

支配人マネージャー客室部門の総責任者(一名)


○管理部門(部門員:三名)

・パーサー(出入国手続き及び船舶運営業務)

・アカウンタント(船舶運行及び客室運営に係る物品全般の在庫等の管理及び経理出納)

・コンシェルジェ(乗客接待業務・支配人とは別の権限を持つ)


○運行部門(部門員:十二名)

・甲板部(六名)

 職員:一等航海士チョッサー二等航海士兼通信長オフィサー三等航海士サブオフィサー

 部員:甲板長ボースン操舵手クォーターマスター甲板員セーラー

・機関部(六名)

 職員:機関長 一等機関士エンジニア二等機関士サブエンジニア

 部員:操機長 操機手オイラー操機員ワイパー


○客室部門(部門員:十名)

・調理部(三名)総料理長 シェフ コック

・給仕部(三名)給仕長 バーテンダー ウェイトレス

・管理部(二名)ハウスキーパー スチュワーデス

・医務部(二名)ドクター ナース



●登場人物一覧


主人公:

氏名:テオ・オーラン (二十四歳) 

職業:ワイパー(操機員)ユニバースカンパニー入社六年目で、ユニバース号に乗務して四年


ヒロイン:

乗客・その一:

氏名:メアリー・ピアーズ (十八歳・見かけ上)ジョージの孫娘と詐称して乗船

職業:ジョージの孫娘と詐称して乗船

本名:開発コード・PBH-〇〇一MARY 通称(愛称)はメアリー

経緯:制作完成後三ヵ月の教育期間中にセルゲイに持ち出される

素性:パーフェクトバイオロジカルヒューマノイド 博士は「ホムンクルス」と呼んでいる

備考:ジョージのことを「博士」と呼ぶ


乗客・その二:

氏名:ジョージ・ピアーズ (五十八歳)

職業:退役軍人と詐称して乗船

本名:セルゲイ・フォッサム

経緯:メアリーを持ち出して出奔

乗船目的:メアリーと共に隠遁生活を送るため。自分の自信作を眺めながら生活したいという望み

本業:バイオロイド開発の先端第一人者(GSF・兵器開発部門:人造兵士開発課 プロフェッサー)


脇役一覧(主だったサブキャラクターのみ):


チョッサー(名前なし):

一等航海士。テオの先輩で、いつもテオのことを気に掛けている。


パーサー(名前なし):

パーサー業務を受け持ち、ユニバース号を仕切るオールドミス

テオのことを可愛く思っていてテオを特別扱いしてくれるが、テオにはありがた迷惑な存在



 ……お楽しみいただけましたでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ