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建ノ宮学園高等学校の写真部にお任せあれ!  作者: 小野寺ハルト


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2/2

九重春葛

夕暮れ。体育館。部活は終わったようで、今ここにいるのは、自主練習に励む女子生徒数人だけである。

(あー、やはり女バレの先輩は素晴らしい…)

…だけである?


どうもみなさん初めまして。九重春葛です。覚えているでしょうか。前回、体育館の天井へ飛翔し忘れ去られたとある人物を。そう、それが僕、陸上部兼写真部の高校一年生、九重春葛です。

という訳でまだ、体育館の天井から降りられていません。

「どうしよ…」

春葛は涙目でしみじみと呟いた。

「ヒマリーー!」

体育館に声が響いた。ヒマリが振り向くと、そこには、頭に白い髪飾りと金の簪をつけた紫髪の女子生徒がいた。手を振ってヒマリを呼んでいる。

「あ、こと―」

「美琴先輩!お疲れ様です!」

元気良く挨拶をする。その声の主はハ―。

バゴンッ…

「美琴ーーー!」

ヒマリが琴音に駆け寄る。

「大丈夫?ケガはない?」

ヒマリに真正面から見つめられ、呆然としていた美琴が目覚める。

「…え…!あ、うん。ケガは無いよ」

「良かったぁ」

安堵したヒマリは胸を撫で下ろした。

「なんか落ちてきたから、思わずサーブ打っちゃって…」

そう言うと、ヒマリは物体が吹き飛んだ方を見る。

「…よくも…やってくれましたね…」

ひっくり返ったバレーボールのボールカゴの中から苦しそうな声が聞こえた。

「不審者!?」

ヒマリがボールを高く上げる。助走をつけ、床を強く蹴る。ボールに向かって手を伸ばし、もう片方は大きく引く。その手が描くは"弧"。それが表すは、完全なる循環。帰結する圧倒的膂力。そして、数刻先に垣間見える…破壊―ジャンプサーブ―サーキュラーアームスイング!!!

「待ってヒマリ!あれハルカく―」

ピーン、ゴゴゴゴゴ

サーブらしからぬ音を立てて、その「ボールだった何か」、圧倒的質量を纏った物体がボールカゴに迫る。

「よいしょ…」

ガタン…カゴの中からハルカが立ち上がる。そして、流れるように腰を落とし、腕を前に出し、手を組んだ。―万物を受容する型、万象を無に帰す器…サーブレシーブ!!!

ギュウウウウウウ!!!

「かはッ…!」

ハルカの前腕中央に浴びせられる衝撃。それを受け止めんとする相反する力がぶつかり合う。

「はああああああああああ!!!!」

ハルカが叫ぶ。腕がミシミシと悲鳴をあげはじめた。

バキッ…

「はっ!」

パン!…ガゴン!

バレーボールが高く打ち上がり、天井に引っかかった。

「はぁ…はぁ…」

「頑張りましたね…ハルカくん」

そこに立っていたのは、大桃自由だ。

「大丈夫か?ハルカ」

心配しているのはナギサだ。

「...うん、大丈夫じゃなさそうだな」

「どうして、ここに?部長、ミユ」

ボーとして言ったハルカの質問にナギサが平然と答えた。

「え?そりぁお前を迎えにだよ」

「………」

(いや、遅ぇよ!2時間くらい待ってたぞ!?てか、最初から置いていくなよ!え?待って、これ一種のハラスメントじゃね?労働施策総合推進ナントカに引っかかるんじゃね?てことは、この部長、将来、権力にかまけて色々やっちゃうのでは?女性社員に向かって、茶!とか言い出すのでは?年下社員にグヘヘとかするのでは?育休とった人の家に数年後忍び込むのでは?…ダメだ…今!!ここで!!ヤるんだ!!!)

「大丈夫?」

ハルカが振り向くと、そこには美琴、桜宮美琴がしゃがんで、心配そうにしていた。ハルカの肩に手を乗せている。

「み…!美琴先輩!」

ハルカの顔が少し赤くなる。ミコトはハルカの腕に目を移すと、息を呑んだ。

「ハルカ君、これ…」

ハルカの腕はボールの形に凹んでしまっていた。

「うーむ。これ折れてるね。とりあえずこれ塗ったきな」

と言ったのはミユ。なぜか白衣をつけ、髭を生やし、聴診器をハルカの腕にくっつけている。差し出されたのは、レッドブール。エナジードリンクだ。

「いや、見ればわかるわ。てかエナジードリンク?何で塗んなきゃいけないんだよ、飛ぶぞ?」

ハルカがツッコむ。ヒンヤリ。ハルカの腕に何かが触れた。

「凹んでる…」

美琴はそう言うと、凹んでる部分を撫でた。

「……!あ!ごめん!こんな、折れてるのに、凹んでるなんて、不謹慎だよね!」

と、慌てて謝る美琴。顔を少し紅潮させ、恥ずかしく、気まずそうな様子で顔を俯かせながら、ハルカを見つめる。

きゅーーー。ハルカの腕が光る…

光が収まるとハルカが美琴に向かってグットサインを出した。

「大丈夫です。治りました」

ハルカの腕は元通りになっていた。

「え?な…何で?嘘…!」

美琴は驚きを隠せない様子。だが、ナギサとミユは一切驚かず、少し感心した様子だった。

「あれ?なんか大丈夫そうだね。良かった良かった」

ヒマリが飄々と言う。

「良かったじゃないですよ!折れたんですよ!僕の腕!」

「まぁまぁ良かったじゃん。ギャグパートで」

「そういう問題じゃないし!そういう事いわないで!」

薊香菊鞠(あざみかひまり)。彼女はバレーボール部に所属する二年生。美琴の幼馴染である。

「でも、天井から落ちてきたのがまさかハルカだなんて思わないよ。不審者すぎるって!まー、とりあえず、ごめんね♡」

ナギサが春葛の肩に手を置いた。

「ハルカ、いくら美琴を懸けた、となってもな。あいつには勝てない。色んな意味でな。最悪、この世にいられなくなる」

ヒマリはネットの片付けを始めている。バレーボールネットの2本のポールを両手に軽々と持っていた。

「……それでも!諦めて死ぬくらいなら、僕は、挑んで死にます!」

「諦めると死ぬんだ…」

「てか、部長!遅いですよ。僕2時間くらい天井居たんですけど」

ナギサは一瞬キョトンとしたが、すぐに思い出したようだ。

「あー!そうだったそうだった。でもね、俺もすぐ思い出したんだよ?それで戻ろうとしたんだけど…カッコつけた手前、恥ずかしいじゃん。で、ごねてたらバレー部帰ってきちゃってー…」

「まぁ、ごめんね♡」

「キッショ…」

ハルカが呟いた。

「とりあえずお前はあれだな。」

「ちょっ、それは!」

「美琴ー!かーえろ?」

いつの間にか片付けを済ましたヒマリが美琴に声をかける。周りを見渡すと、体育館には、もう自分たち以外誰もいないようだった。

「うん。じゃ、またね、ミユちゃん。」

美琴は、ミユの頭を撫でる。そして、ハルカに尋ねた。

「ハルカ君、足、大丈夫?」

心配そうな美琴。ハルカは平然と答える。

「はい!来週には復帰できると思います!」

「そうなの!?良かった!そんなひどくなかったんだね」

美琴がハルカに笑いかける。ハルカから、ものすごい幸せの輝きが放たれていた。

「眩しい…!」

ナギサが呟く。

「じゃ…ハルカ君と…」

美琴はナギサを見ると、イタズラっぽく笑った。

「...ナギ助も、じゃあね」

「おい、それ…母さんの俺の呼び方だから!」

美琴は、あははと笑うと、手を振って背を向ける。

じゃね、と言うと、ヒマリも一緒に体育館を後にした。

「俺たちも帰ろうぜ…用務員さん、そろそろ来るし」

「そうですね。ナギ助部長…」

ぬるりとハルカが立ち上がった。

「お前…またすねんなよ。だから、俺は美琴と幼馴染なの!で、お前が思うような関係でもないの」

「わかってます!わかってるけど!羨ましい!」

と、ハルカが走り出しそうになる。

「おっと!走るな走るな」

ナギサがハルカの肩を掴んで止める。すると、ミユがハルカの目の前に何かを突き出した。

「そうですよ。ハルカさん。君の怪我が悪化したらどうするんですか」

「はい。すみません。ありがとうございます…。うっ!ミユ…やめて!それ、スースーするから!」

ミユの手にはフェルビナク軟膏がフタ無しで握られていた。

「ふっ!怪我…治った?」

ミユが誇らしげにキメる。

「いや…治ってない…」

「よし!帰ろう!」

ナギサがそう言い、3人も体育館を後にした。


「はぁ...」

校門の前、ポケットに手を突っ込み、ハルカが佇んでいた。腕時計を見る。時計は18:52を指していた。

「塾、行くか…」

ギリギリ、夕焼けの橙が残るかという空の下。ハルカは駅へと歩きだした。

本日のアフターフォト①

ズズッ!ラーメンを啜る音。

ナギサ:今回、オチも盛り上がりも無かったよね?

…もぐもぐ…

ハルカ:まぁ、僕の死闘があったってことで。

ヒマリ:私と美琴の登場回なのに!こんな仕打ちないよ!

ハルカ:仕打ちとか言うなよ!

ぷはぁ!

ミユ:お黙り!モブカス!

ハルカ:ひどい!言い過ぎ!モブじゃねーし!

ナギサ:まぁでも、やっと一話から日が変わりそうで良かったよ。

ミユ:ですね。ハルカさん、あなたのせいですよ。

ハルカ:それは…まぁ、そうか?ん?なんか、僕が悪いみたいになってない?

ナギサ:ふぅ、ごちそうさまでした。

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