第85話 世界の反撃
「ガン!」と、鈍い音がした。
何かを殴った感触、そして、痛みが一瞬の間をおいてやって来た。
ルナは自分が何をしたのか分からないまま、痛みが走る腕を見、その場に立ち尽くす。
(なんだ?)
ルナは首を傾げる。しかし、そこには何も居ない。
(フェンスに当たったのか?)
そう思って周囲を見るが何も無い。
ルナは首を振り、踵を返した。
空虚に叩き付けたはずの腕が、重さを返して来た。
それが何か分からない。しかし、何かが殴り返して来たように感じた。
13番線ホームの車止めまで来た時、けたたましい発車ベルが聞こえた。
常磐線ホームの物だろうと思った。
しかし、もう上野駅で発車ベルが鳴る事は殆どないはずだった。
13番線を振り返ると、そこには14系寝台車のブルートレインが見えたと思えば、短い汽笛と共に、甲高いブロアー音が遠くから聞こえて来て、列車が動き出したように見えた。
「このブロアー音、EF64だ!」
ルナは確信した。だが、それはその瞬間に映像になって音が消えた。
(あぁ―。)
ルナはまたも騙されたと思い、もう怒る気力も無くなって、入谷口改札口へ向かう。
ICカードを出す時、切符入れが落ちた。
「おっと―。」
ルナは拾い上げる。
その中には、浅草15時ちょうど発の特急「スペーシアX11号」のコックピットスイートの切符が入っていた。
浅草から出る、最終の特急「スペーシアX」だ。
アイルの世界と区切りを付けることと、「ルナ・パスファインダー」の成功祈願。そして、何よりも自らを奮い立たせるために、日光へ行くルナの旅の切符は、まだ手元にある。
しかし、行った先に何があるというのだろうか?




