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第78話 月探査機「ルナ・パスファインダー」

「まだ、日光には行かないだろう?」


 と、糸川教授は切り出した。


「はい。」

「ルナ・パスファインダーの打ち上げが決まった。仮日で2月15日だったのだが―」


 糸川教授はJAXA月探査機「ルナ・パスファインダー」が、種子島宇宙センターからH3ロケットで打ち上げられる事、その日はいつかと伝える。


「それでだ、今、「ルナ・パスファインダー」はJAXAの筑波宇宙センターにある。」


 ここで、糸川教授は何を言おうとしているのか分かった。


「最後の機会だ。ルナ。JAXA筑波宇宙センターに来い。」

「ええ。是非、行かせていただきます。」


 ルナは頷いた。


 ルナは自宅アパートで、以前、日本のH2Aロケットが種子島宇宙センターから打ち上げられた様子を見ていた。


 H2Aロケット13号機。

 ルナ・パスファインダーの前に、月へ行ったJAXAの月周回衛星「かぐや」を乗せたロケットだ。

「かぐや」はH2Aロケット13号機で打ち上げられ、月の上空を1年に渡って周回しながら月を観測。その際には、月から見た「地球の出」や「地球の入り」の撮影も行われた。


 その映像を、ルナはかつてテレビで見ていた。月の地平線から青い地球が昇る光景は、今でも記憶に残っている。


 今回のルナ・パスファインダーは、H3ロケットによる初の宇宙探査機打ち上げでもあるが、ミッションには月面着陸、そして、小惑星探査機「はやぶさ」の技術を応用した月の石の採取からのサンプルリターン。つまり月に行った後、月の石を地球に持ち帰って来るのだ。


 自分と同じ名前の探査機が、月へ向かう。

 それは、かつてルナが胸の奥で思い描いた「月へ行く」という夢を、現実の形で示してくれる存在だった。

 この探査機の成功は、日本の技術を用いた日本人宇宙飛行士による月面着陸に向けた第一歩になる。故に「ルナ・パスファインダー」という名前が適切だ。


 ルナはJAXA筑波宇宙センターに行くに当たり、糸川教授に再度連絡を入れる。それは、アイルの世界と区切りをつけて前に進もうとする意志と、自分の夢を夢のまま終わらせないという意志を込めた願いだった。


「ふーむ。そこまで考えていたのか。」


 糸川教授は考える。


「分かった。可能かどうかをプロジェクトマネージャーに聞いてみよう。話は分かった。俺からも話をするが、筑波宇宙センターに来たら、再度、要請しろ。」


 と、糸川教授は言った。

 



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