第75話 特別教習明けの東京
ルナの特別教習が終わる。
制服は皴になるといけないからと、アイルが預かる事になった。
下今市駅から、特急列車で浅草へ帰る。
しかし、スペーシアXは満席らしく、別の特急列車で帰る事になった。
JR直通の特急きぬがわ2号に、鬼怒川温泉駅から乗車して、大宮まで行って、大宮から上野までは高崎線か東北本線の普通列車だ。
以前、鉾根と里緒菜と一緒にデラックスロマンスカーに乗った際の会話で、JR直通列車はこの世界に無いと思われたのだが、実際には存在していた。
(車両は何かな。)
と、ルナは思う。
アイルの世界ならば、165系か157系辺りが妥当だろうと思っていたが、ルナの世界と変わらない253系が使用されていたので、ルナは拍子抜けした。
鬼怒川温泉まで、観光準急「大樹」に旅客として乗ったルナとアイル。
アイルは今日から、旅館の仕事だという。
「ルナが一緒に働くようになったら、「大樹」に勤務する日も増やしてもらえるよう掛け合いますね。」
アイルは微笑むが、ルナは(私情で勤務シフトを変えるなよ。)と思う。
列車の時間の都合から、アイル一人が、鬼怒川温泉駅でルナを見送ることになってしまったが、アイルはそれでも構わない。むしろ、それが良いという様子だった。
「では、またね。」
アイルは言いながら、ルナに唇を合わせた。
そして、ルナを乗せた253系特急「きぬがわ2号」を見送った。
ルナは車内で一息つく。
やはり、特別教習と言う事で疲れたらしい。
下今市を過ぎた辺りで眠ってしまう。
気が付くと、列車は東北本線(宇都宮線)を走っていた。
だが、すれ違う列車は115系ではなかった。
「えっ!?」
ルナは驚嘆する。
それは、ルナの世界のE231系だったのだ。
大宮駅に着いた。
大宮駅も列車接近メロディーが流れ、駅構内はモダンな内装になっている。
停車している車両も、E233系やE231系。
大宮総合車両センターを覗くと、そこにはE131系や209系。
そう。
ルナの世界の車両が停まっているのだ。
ルナは(まさか!)と思って、スマホを見る。
すると、そこにあるはずのアイルの連絡先と、アイルの実家の連絡先が消えていた。
(あっけない。帰って来てしまったのか。元の世界へ。)
ルナは安堵する。
だが同時に、大きな喪失感を感じた。




