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第52話 ルナ・最後の宇宙探査

 一連のプラレール運転会の設営が終わったのは18時を過ぎた頃だった。

 東武ワールドスクウェアの最寄り駅、東武ワールドスクウェア駅へ向かう最中、ルナのスマホに連絡が入る。

 相手は東京天文大学の糸川教授だった。


「君は本当に、残念だよ。宇宙への道は、何も我が天文大学へ入る事ではない。Fランの大学だろうが、学費の安い大学へ進路変更しようが、大学でしっかり勉強して、しっかりとした成果を出せば、JAXAに入る事も出来た―。君はもう、宇宙への関心は無くなってしまったのだろうか。」

「いいえ。」


 ルナは首を横に振った。


「ルナ。諦めないのならば―。JAXAの採用情報をしっかり確認しろ。そして、入る気があるのならば、JAXAに入れ。或いは、宇宙飛行士への道を進め。」

「-。」

「ルナ。2月15日。この日を頭の片隅に入れておけ。」

「-。ブルース・マッカンドレスの命綱無し宇宙遊泳は2月9日ですが―。」

「2026年2月15日。種子島宇宙センターより、H3ロケットでJAXAは新型の月探査機を打ち上げる。その探査機に君の名前を名乗らせることになった。」

「-。」

「ルナ・パスファインダー。JAXAの日本人宇宙飛行士の月面着陸探査に向けた、先駆者と言う意味だが、それは表向き。裏には、君が宇宙へ―。いや、そして、月へ向かう宇宙船に乗って、月へ行く事を願った物だ。」


 ルナはいたたまれなくなった。

 そして、夜空を見上げる。

 細い三日月が西の空に見えていた。


「まだ、日光鬼怒川地区へは行かんのだろう?」

「ええ。しかし、皮肉です。2月15日頃は引っ越しの時期です。」

「そう、か―。君、行く前に―。ルナ・パスファインダーの実機を見に、JAXA筑波宇宙センターに来ないか?」

「-。」


 考えた末、一旦返事を保留にした。


(行ったところで―。)


 ルナは月を見上げて涙を流した。

 鬼怒川線の普通列車で下今市駅に着いた時にはもう日が暮れていた。

 プラレール運転会のメンバーはこれから呑み会だというが、「彼女と一緒に過ごせ!」と言われる分には良かったが、本音は「カップルのイチャ付き見せ付けられて堪るか!」という事で、ルナはそこに加われなかった。


(宇宙飛行士もJAXAも、仕舞にはプラレール運転会のメンバーからも―。)


 ルナは目の前の電柱に拳をぶつけてやりたくなった。


「ルナ。」


 アイルが声をかける。普段と違い、何か重く、悲しい声をしていた。


「どうして、自分の不幸から逃げて、自分の過ちを認めず、目の前にある現実を見ず、私を見ないの?」


 ルナは月ばかり見ていた。その為に、石に躓いて転んだ。


「お父様が伝えるか迷っていた―。お父様は、例の論文を読んだ後、何か考えて、憐れみつつも貴方を―。ルナの過ちを咎めていた。そして、こんな事を言っていた。「意味の分からない世界へ吸い込まれたのは、ルナの現実を見ない事への報いだ。」と。」


 言いながら、アイルは自分の住まいにルナを招き入れた。




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