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第48話 日光への送り込み・特急「りょうもう」

 時の流れと言うのは早い物だ。


 既に11月も後半に差し掛かりつつある三連休。

 ルナの手元に、JR東日本長岡車両センターに最後まで残っていた旅客用電気機関車4両が、この三連休の最後の日である11月24日に「ありがとうEL号」の運用をもって、旅客列車から引退するという情報が入って来た。


(死神機関車って呼ばれたEF64の1031号機もか―。)


 ルナは溜め息を吐いた。


 先日、ルナの前に「ゆうづる」を牽引して現れたEF80電気機関車を実質的に常磐線から置き換えたEF81電気機関車もこの4両に含まれていた。

 EF81‐140号機は、EF81電気機関車の中で最後まで残った1両だ。

 今冬までは上越線内の霜取り運用や、長野総合車両センター等への回送運用に就くEF64に対し、EF81は冬を越えられず、「ありがとうEL号」の運用の後はなんの運用も無いため、「ありがとうEL号」の後すぐに廃車回送されてしまうと噂が流れている。


 だが、アイルとアイルの世界と言う異質な存在の干渉のために、ルナは感覚が麻痺してしまったのか、EF81の140号機が最後のEF81だと言う実感も無いし、まして、JR線から旅客用の電気機関車が全て居なくなるという実感も無い。


(それもそうだ。東北新幹線の「はやぶさ」が、なぜか東京発九州行きブルートレインの「はやぶさ」になって現れたのを見せ付けられたらよ。)


 ルナは思いながら、浅草駅の改札を抜ける。


 7時40分発の特急「りょうもう3号」が3番線に入線していた。

 使用される東武200系は、かつての1720型デラックスロマンスカーが更新工事を受けて登場した車両だ。


 今回は少々費用が嵩むが、スペーシアXやリバティーで栃木を経由して直接、東武ワールドスクウェアまで行かず、「りょうもう」で群馬県の赤城を経由し、大間々からわたらせ渓谷鐡道のトロッコ列車に乗って間藤まで行き、間藤からバスで日足トンネルを越えて日光へ行くという暴挙に出た。

 プラレール運転会のメンバーにはそれを連絡し、設営作業には15時頃から加わるが、その作業も15時頃から開始される事になっていた。今回は日光市内で開催とあり、多くのメンバーが様々な事情から行くのに難儀するためで、それを利用した暴挙なのだが、実際には、アイルの世界の干渉を避けるという意味合いが強かった。

 また、これまでの旅から、スペーシアXやリバティーを始め日光鬼怒川地区の列車に乗って、アイルの世界に入ってしまった事が分かった。また、アイルの世界においてもSL大樹の車両だけは変化が無かった。そのため、今回は日光鬼怒川地区へ行く特急列車を避け、「りょうもう」やわたらせ渓谷鐡道で日光鬼怒川地区へ行き「SL大樹」に乗った場合、どうなるのかを実験してみるのだ。


 特急「りょうもう」は東武動物公園駅で「スペーシアX」や「リバティー」が走る日光線と別れ、東武伊勢崎線に入る。

 当初は上野駅から高崎線や新幹線で高崎を経由し両毛線で桐生に出てわたらせ渓谷鐡道に入る計画を立てたが、あまりも大回りになり過ぎる上、新幹線では料金も相当かかる事が判明したため特急「りょうもう」に乗ったが、「りょうもう」が走る線区もあまり来ることのない場所で、新鮮さがあった。


 羽生で秩父鉄道線と出会う。秩父鉄道と東武鉄道は、かつて東武鉄道から直通運転が行われていたが、今は東武東上線の車両を検査等のため南栗橋車両管区へ秩父鉄道を経由して回送するだけだ。この回送列車は、秩父鉄道の区間ではATS等の保安装置の関係から秩父鉄道の電気機関車に牽引される形での運転となる。

 また、秩父鉄道でも蒸気機関車が走っているのだが、ルナは上野駅から高崎線一本で行ける上、都心からも近い秩父鉄道の蒸気機関車よりも、東武のSL大樹の方が行きやすく乗りやすいと感じていた。その要因には、秩父鉄道はオンライン整理券でSL列車の切符を売っているのだが、肝心のオンライン整理券の発売サイトが使い難く、また、乗車時間も2時間強と長く、普通列車にさえ煽られる程遅い速度で走る上、終点の三峰口駅には昼過ぎに着いてそこから三峯神社まで行こうにも、バスの接続が悪すぎる等、秩父鉄道沿線の観光地へ行くのにはかなり難儀するという事がある。


(そういえば、東武のSL観光アテンダントの方の名前、知っている限りではみんな秩父鉄道の駅名と同じだな。持田さんと、石原さんと―。)


 そんなことを思っていたら利根川を渡って群馬県に入った。ぶんぶく茶釜の茂林寺を通過すると館林駅だ。今のところ、異常な眠気も起こることも無い。


(ぶんぶく茶釜だけに、狸に化かされると思ったが。)などと、ルナは思う。


 ちなみに、下今市機関区には蒸気機関車の給水に使われた給水塔が移設展示されているが、これは館林駅構内に偶然残っていたものだ。


 東武伊勢崎線を走る特急「りょうもう」は館林を過ぎると、足利を経由して太田に向かう。地図で見ると館林から直接太田へ行く方が近いのだが、かつて銘仙や養蚕業が盛んだった足利の産物を貨物列車で東京方面へ輸送するため、わざわざ足利を経由する大回りのルートで伊勢崎線が敷設されたのだ。尚、東武鉄道の貨物列車の運転は2003年に館林駅近くの荷役所で扱っていたガソリン輸送を最後に終了した。

 自動車メーカーSUBARUのお膝元の町、太田を出て上毛かるたで「太田金山子育て呑龍」と詠まれる金山を横目に、東武桐生線に入る。


 ここまで来ると、もう終着の赤城駅が近い。

 新桐生駅を過ぎ、わたらせ渓谷鐡道と接続する相老駅を過ぎる。

 ここで、わたらせ渓谷鐡道に乗り換えても良いが、桐生線の終点でもあり、「りょうもう」の終点でもある赤城駅が目と鼻の先ならばと、乗り継ぎ時間がギリギリだが、敢えて赤城駅まで行く。

 そして、列車は終点の赤城駅に到着した。


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