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第44話 国立科学博物館

 上野公園に向かう時、街並みを見てみると慣れ親しんだ東京の街並みだ。

 両大師橋から上野駅に入る線路を見ると、山手線や京浜東北線の線路をE235系やE233系と言った通勤型電車が走っているのが見えたが、地平ホームに入って行く特急列車の車両は583系だった。

 ヘッドマークを見ると「はくつる」と書かれており、この583系を使用した列車は寝台特急「はくつる」であると分かった。


(「はくつる」とE235系が共演する事なんて有り得ない。が、アイルさんと一緒に居るとこうなる。)


 溜め息を吐きながら振り返ると、東京スカイツリーも見えたが、晴れているのに上の部分は霞んでいた。


(なんか最近、スカイツリーもしっかり見えないな。)


 ルナは首を傾げた。

 このところ、東京スカイツリーがしっかり見える事が無いのだ。

 それどころか、昨日、東京駅に行った際には東北新幹線のホームが無かったり、新丸ビルが無かったり、丸ビルが低かったりと、違和感ばかりだった。


(世界全体が何かに飲み込まれている?)


 思いながら、上野公園の国立科学博物館に入る。

 国立科学博物館には高校生までなら無料で入れるので、偶に遊びに来ている事もあった。そのため、ある程度の展示物の事は把握していた。

 霧積博士が用を済ませる間、アイルとルナは館内を見て歩くが、一部の展示品が無い。何より、アポロ11号とアポロ17号が持ち帰った月の石が無いことに驚いた。学芸員の一人を捕まえて「月の石は無いのか?」と聞く。


「何を言っている?人類の月面旅行など、夢のまた夢だ。確かに、世界初の人工衛星こそ、ロシアが打ち上げ、ロシアは次いで、世界初の有人宇宙飛行に成功したが。」


(貴方こそ何を言っている?ユーリイ・ガガーリンの宇宙飛行は1961年4月12日に成功した物だ。今、何年だと思ってる?2025年だぞ?)


 ルナは学芸員が何を言っているのか分からなかった。


「あぁごめんなさい。苗字も名前も、月に由来する故に、月への憧れが強くて。」


 アイルが横から言った。

 宇宙開発や天文学に関する資料を引っ掻き回すが、そこにあるのはルナの知っている宇宙開発や天文学ではない。何世代も前の宇宙観の物なのだ。

 


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