第43話 月曜日の朝
「コンコン」と、ルナの家の玄関がノックされる。だが、ルナは体力の殆どをアイルに吸い取られてしまって、動けない。
アイルは白い肌に紅い着物を身に着けて玄関に向かう。
「あっお母様!」
玄関を開けると、里緒菜が居たのだ。
里緒菜の隣には、紺色がメインのスーツを身に纏い、肩まで伸びたセミロングの黒髪に空のような青色の瞳を持つ女性。
「久しぶりね。アイルちゃん。」
「霧積博士!」
「失礼していい?」
「ええ。どうせ婚約者の家ですから。」
勝手にアイルはルナの家に、里緒菜と霧積博士を上がらせる。
ようやく目覚めたルナは、大慌てで脱がされた衣服を引っ搔き回して身に着ける。だが、こうもフラフラにされてしまっては、学校にも塾にも行けそうにない。朝のバイトも史上初めて、無断欠勤という失態をやらかした。
ルナは朝のバイト先と学校に「体調不良のため」と欠席の連絡を入れた。
特に、朝のバイト先には何度も詫びる。
「いけませんねぇ仮病なんて。」
アイルはルナの背後から馬乗りになって言う。
「誰のせいですか?」
「さぁ、誰でしょう。」
ようやく腰を上げるルナは、顔を洗う。
「仮病を使った悪い子には、私とお母様と、霧積博士のお供をして貰います!良いですね!?」
(テメェらゴミクズこの野郎。人に迷惑かけなきゃ東京見物すら出来ねえのか。)
ルナは舌打ちしながら頷いた。
今日は霧積博士が、上野の国立科学博物館に行き、展示物となる太陽望遠鏡の資料を持って行く。そして、その際にルナから太陽フレア及びオーロラ爆発の資料を受け取りたいと言う。
2枚のDVD―Romに記録した物のうち1枚を、霧積博士に渡すが、DVD―Romが見当たらない。DVDが置いてあったところには、8㎜テープが置いてあり、これにオーロラ爆発観測記録と書かれていた。
「あぁ、これね。」
と、霧積博士はその8㎜テープを手に取る。
「あと、こちらも―。」
ルナは昨夜印刷したレポートを渡す。
霧積博士は、パラパラとレポートを見て「なかなか面白そうなレポートね。」と笑った。どういう意味かは分からないが。
ルナの家から上野の国立科学博物館のある上野公園には、両大師橋を渡ればすぐに行けるが、ルナとアイルは朝食がまだなので、里緒菜と霧積博士も交えて朝食にする。
「昨日の残りのご飯がありますが、4人分には足りませんね。」
「食パンならちょうど4枚あります。あと、卵が3つと、コンビーフ。」
「まったく。不摂生もいい加減にしてください。不規則な勤務になる事は承知ですが、私と結婚して私と一緒に家で食事する際は、不摂生は許しませんからね。」
アイルは呆れ返る。
「普段から料理はしないの?」
里緒菜に聞かれ「朝食は前日の夕食の残り。昼食は学校で購買か弁当。夕食はレトルト」と答える。
「まったく。そんな事だと思いました。冷蔵庫の中見れば大体分かりますよ。」
「とりあえず、トーストとコンビーフの炒り卵でよろしければ。」
「料理出来るのなら、してくださいな。」
(なんだこの野郎。人の家へ勝手に上がり込んで飯作れだと?ぶっ殺すぞ。)
ルナは思った。
「レトルト食品ばかりの不摂生では、身体を壊してしまいますからね。」
見透かしたようにアイルに言われながら、アイルと一緒に朝食を作り、4人で食べたら上野公園に向かった。




