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第30話 再び東武博物館

 ルナは再び、東向島の東武博物館を訪れる。

 手元には、9月11日の旅及び、先日の旅の写真を持ち、それらを元に東武博物館の資料と見比べ、見た物が本物なのか、或いは、見た世界は現実なのかを探るのだ。

 浅草駅から、東武10000系電車の普通列車に乗って3駅目。

 東向島駅に着く。

 東向島駅の改札を抜け、駅直結の東武博物館に入る。


 東武博物館はJRの鉄道博物館よりも圧倒的に安い値段で入れる鉄道の博物館だが、あまり知られていないのは、やはりJRの方が人気だからなのだろうか?

 だが、そのおかげで、頭の逝かれた連中がわんさか集まり、動物園のような状態になっていることは滅多にないので、ゆっくりと資料を見ることが出来る。


 200円の入館料を払い、入口を抜けるとやはり、先日の旅や9月11日の旅でアイルと一緒に居た時に走っていた蒸気機関車B1型5号が鎮座している。

 毎日4回、圧搾空気により汽笛吹鳴と動輪の駆動が行われるので、その時間に合わせて見に行くことにして、その他の資料を見る。

 車両の移り変わりを見ると、アイル達と見た歴代の車両の資料があった。

 だが、当然の如く、今も5700系や1720系が走っている場所は無い。


 野外に展示されている1720系デラックスロマンスカーのカットモデルの車内を見る。カットモデルのため、完全な形ではないが、座席は先日、里緒菜と鉾根と下今市駅から乗った時の物だ。

 学芸員に愚問と分かっていながら「この列車は最近走ったのですか?」と尋ねる。


「1991年で全て運用を終えた後、特急「りょうもう」の200系への更新工事が行われ、座席と台車・主電動機などが流用されて現在も使用されているから、実は書類上、第1編成を除き、1720系デラックスロマンスカーは廃車になっていない。」


 と、驚きの回答を得た。

 しかし、200系「りょうもう」は下今市には来ない。

 また、200系「りょうもう」の座席のモケットの写真と、里緒菜と鉾根と乗った1720系の座席のモケットの写真を見比べるが、座席の形こそ同じだが、モケットは違うものだった。


 ジオラマのデモ運転を見る。

 現在東武で活躍する通勤電車や特急列車が走るジオラマの端の方で、SL大樹も走っている。

 野田線で活躍する80000系と、SL大樹がすぐ近くで走っているのはジオラマならではだが、ルナは「スペーシアX」と1720系デラックスロマンスカーが並んでいたり、100系スペーシアとB1型蒸気機関車が並んでいたりという、意味の分からない光景を見たのだから何とも思わない。


(まぁ、あの世界はジオラマの世界だったのかと思えばいいのかな?)


 などと、ルナは鼻で笑いながら、今度はバスの展示を見る。

 里緒菜と鉾根とアイルとSL大樹に乗った際、車内から撮影したバスの写真を片手に、SLの車内から見たバスの車種を調べる。

 直ぐに、それはいすゞBX340型ボンネットバスだと分かった。

 BX340型は当然の如く、既に路線バスの第一線からは退き、東武バスでは1台も運行していない。しかし、新潟県の越後湯沢の森下興業が波動輸送用や団体輸送用に使用していた後、現在は飛騨高山で活躍している他、今でもレストアされた車がイベント用で使用されている事例があり、ルナが目撃したBX340型はそうした事例の一つだったのかもしれない。だが、鬼怒川温泉など、日光鬼怒川地区でBX340型をイベントで使用しているという事例は聞いたことが無い。ガワだけをSL風や路面電車風にした小さなバスは走っているが。


(ナンバープレートが写っている写真があれば―。このBX340型が他県ナンバーなら、団体輸送で来た物だって分かるのだけど―。)


 と思ったが、直ぐに冷静に考えて、鬼怒川温泉駅を撮った写真と、東武日光駅を撮った写真を見る。

 それらにも、バスが写り込んでいるが、やはりBX340型のようなボンネットバスに加え、箱型のバスも写っていた。それは、日産180型キャブオーバーバスで、東武博物館にも実車が展示されている。しかし、学芸員に聞くと、やはりこれが現在も現役で走っているという事例はないという。


 屋外展示の5700系を見、そして、B1型5号機関車の圧搾空気による稼働展示を見る。

 B1型5号機関車の汽笛の音は、現在SL大樹で走っているC11や、JR線で走っている蒸気機関車のような「ボォーッ!」という如何にも勇ましくて哀愁を誘う汽笛ではなく「ポゥオーッ」と、甲高い笛のような優しい音を奏でていた。

 アイルと一緒に見たB1型蒸気機関車も、このような汽笛を鳴らしていた。

 学芸員に愚問だと思いながら現役で走っている場所や、本線で走らせたことがあるのかを尋ねるが「無い!」と一蹴された。


「では、これは―。」


 と、学芸員に聞く。


「これは―。」


 学芸員は眼を光らせた。


「三重の貨物鉄道博物館ではないな。」


 他の学芸員を呼ぶ。


「なんだこれは―。」

「合成写真では無いか?」


 どうやら、学芸員にはあの写真は本物に見えるようだ。


「2025年9月11日に撮影したものだ」と付け加える。すると、学芸員はいきなり首を傾げた。やはり、その日は踏切事故の影響でロクに列車が走れなかったのだ。

 しかし、写真の一枚に9月11日と日付が表示された掲示板が写り、それが学芸員を混乱させる。

 どうやら、アイルの居る世界というのは確かに存在し、ルナはその世界を認識した人物となるようだ。

 だが、そうなれば、そこへ向かっていた時に乗っていた「スペーシアX5号」が踏切事故で脱線したというのに、どうやってその世界へ着いたのかと言う疑問に戻ってしまうのだった。




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