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第29話 オーロラ爆発観測記録

 ルナが撮影したオーロラ爆発は本来、極地で条件が揃わなければ観測できない物だ。

 オーロラ自体の観測記録は日本でもあり、2025年11月には北海道から北関東にかけての広い地域で観測され、2024年5月にはなんと、沖縄でも観測された事例がある。


 日本でのオーロラ観測史として残る最も古い物は、日本書紀まで遡り、推古天皇統治時代である西暦620年12月30日の記録には、「天に赤気あり、その形は雉の尾に似ていた。」という記録が残されている。

 また、藤原定家の「明月記」にも、1204年2月21日に「北の空から赤気が迫って来た。その中に白い箇所が5個ほどあり、筋も見られる。」とある。


 だが、いずれの事例も赤いオーロラで、主に高度200㎞以上の高い場所で、大気の酸素原子が低エネルギーの電子と衝突して光る物であり、ルナも最初は赤色のオーロラを見ていた。

 そして、糸川教授が目を離し、ルナが撮影を開始したまさにその時、オーロラが突如爆発的な増光を見せ、高度の低いところで光る緑色や白の明るいオーロラとなり、それらはルナを包み込むようにして光ると、瞬く間に空の彼方へ消えて行ったが、それらの様子はカメラに記録されており、瞬く間に大騒ぎになった。


 だが、その後、何故かオーロラの話題は消えていた。

 それは、給付型奨学金の話が流れた直後のことだった。

 糸川教授でさえ「そんなことあっただろうか?」と、どこか記憶の彼方へ押しやっていたようだ。


「7月23日のオーロラの事、何か覚えておりませんか?」と、ルナが聞いても、「そんなことあっただろうか」と答えるだけ。


 日本での観測は不可能だと思われていたオーロラ爆発が、北海道のような中緯度地域では無く、関東地方で観測されたという大事件だというのに。


(まさか、太陽フレアとオーロラ爆発が引き金か?あの太陽フレアを目撃したのは俺だけで、オーロラ爆発を目撃したのも俺だけなのか?確かに、あの時、太陽望遠鏡を見ていたのは、学校では俺だけであり、太陽フレアを見たのは俺だけだったが―。)


 放課後、ルナは夕方のポスティングのバイトに向かい、それを終えると帰路に着く。

 吾妻橋を渡りながら、横目で東京スカイツリーを見上げながら、群馬県みどり市の赤城駅を18時に出た東武200系特急「りょうもう」が、浅草駅に到着するのを眺めていると、ルナのスマホに着信。

 見ると、栃木の里緒菜の家の電話番号だった。

 里緒菜の家の電話番号は、9月11日の旅の時点で、どういうわけかルナのスマホに入っていた栃木市の電話番号だ。


「もしもし―。」


 遠慮がちに出る。


「月詠ルナ君だね。」


 相手は男だった。


「えっと―。」

「里緒菜さんの夫で、アイルの父だよ。」

「あっあぁ、お世話になっております。」

「単刀直入に言おう。里緒菜さんから聞いたが、婦美のやで、9月11日の列車事故について聞いていたそうだな。」

「はい。」

「列車事故が9月11日に起きたという記録は、こちらに入っていない。が、こんな記録がある。9月11日午前11時30分頃、筑波山観測所太陽望遠鏡にて、大規模な太陽フレアを観測した。そして、夕方から夜半にかけて、大平山天文台で俺と里緒菜さんで低緯度オーロラを観測したんだ。」

「-。あの、7月20日に太陽フレアを観測しましたか?あと、7月23日にオーロラを観測したでしょうか?」


 大平山天文台や筑波山観測所と言うものを聞いた事は無い。

 大平山天文台と似た名前の天文台に、堂平山天文台と言う物はあるし、筑波山観測所は名前からして筑波山にあるのだろうが、筑波にあるのはJAXA筑波宇宙センターで、それは筑波山には無い。


「7月20日か。ちょっと待って。」


 書類を繰る音が聞こえたが、「いや、何も観測していない。」と答えが返って来た後、


「7月20日と言えば、里緒菜さんが東京天文台に行き、付いて行ったアイルが君に会って惚れ込んでしまったと聞く。その上、3日後の23日は、大平山天文台でアイルと―。あぁこの先は―。」


(―。どうなってんだ?)


 ルナは相手が何を言っているのか分からなかった。

 


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