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第27話 世界の交差点

「まもなく終点浅草です。」


 車内アナウンスが流れ、ルナは目を覚ます。


(しまった。まぁた寝ちまった。)

 ルナは周囲を見回す。

 里緒菜と鉾根の姿は無かった。

 窓の外を見ると、隅田川を渡るところで、東京のネオンが輝いていた。

 首都高6号線を行き交う車も見えた。


 だが、列車の車内は1720系デラックスロマンスカーのままだった。

 浅草駅手前のカーブで前方を見る。やはりこの列車の車両は1720系デラックスロマンスカーのままだった。

 浅草駅に到着して、車両を外から改めて見てみると、やはり1720系だ。


 写真を撮り、プラレール運転会のグループLINEに投稿する。

 前の2件には未だ、何も反応が無い。

 3件目となるこの投稿でやっと、反応が付いた。


「最終のスペーシアまで粘ってたのか。お疲れ様。」


 という内容だった。


(俺以外には、1720系ではなく、100系スペーシアに見えるというのか?俺は幻を見ていたのか?なら、あの世界はなんだ?)


 振り返って乗って来た列車を見る。

 そこに、1720系は無く、100系スペーシアの姿しかなかった。

 ルナはアイルに連絡する。


「今、浅草駅まで帰りました。」

「お疲れさまでした。直ぐにまた、会いたいですので、今度は私の方から会いに行きますね。今回の仕返しもさせてくださいな。」


 そんな話をしていると、100系スペーシアの姿は1720系デラックスロマンスカーの姿になった。


(やはり、あの人達と一緒に居る時、世界は変わる。)


 ルナは確信した。

 アイルと、その家族が世界の交差点だと。


ーーーー


 栃木の庄屋の軽井沢里緒菜の元にも、月詠ルナから連絡があった。


「ああルナ。アイルには連絡した?」


 里緒菜は「ふふっ」と笑いながら言う。


「可愛らしい寝顔でしたよ。」

「失礼しました。」

「婦美のやで、9月11日の事を聞いてましたが、何かありましたか?」

「-。いえ。」

「隠しても無駄ですよ。」


 里緒菜に詰められたルナは、9月11日に自分が乗った列車が事故を起こしたというニュースを見たと言った。


「そう。変ねぇ。そんな事、無いわよ。」


 里緒菜が首を傾げると、電算機に向き合っていた夫の目がキラッと光った。

 電話が切れると、夫が歩み寄る。


「9月11日ですか。乗っていた列車が事故を起こしたニュースを見たが、自分は何も知らないと?」


 夫が言う。


「ええ。そうなのですよ。」

「9月11日―。あの日は、筑波山観測所の霧積博士から、太陽望遠鏡が大規模な太陽フレアを観測したと連絡がありました。」

「ああ。それで、貴方と大平山天文台へ―。そして、夕方から夜半過ぎにかけて、大規模な低緯度オーロラを観測しました。まさか―。」

「ルナという子は―。」

「貴方と同じ世界から来たのかもしれませんね。貴方がこの世界へ来た時もそうでした。貴方は彗星核から分裂した隕石が地球に落ちて来た時、この世界へやって来ました。今でも覚えてますよ。エレナ。」


ーーーー



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