表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/48

第25話 特急「きぬ156号」

 呑み会もお開きとなり、下今市駅の改札口を抜ける。

 今の下今市駅の姿はルナの知らない、昔の姿だ。

 それにも関わらず、駅舎の中はルナの知った物になっていて、自動改札機も並んでいた。

 アイルも後ろから自動改札機を通る。


「お見送りしますね。」


 アイルに言われながら、下今市駅の鬼怒川温泉側の跨線橋を渡る。


(内装は同じなのに―。)


 ルナは横目で、跨線橋より新鹿沼方向を見る。

 下今市駅には、鬼怒川温泉(東武日光)寄りと、新鹿沼寄りの2か所に跨線橋があり、この内、新鹿沼寄りの跨線橋には、エレベーターもある。しかし、今見ている下今市駅には新鹿沼寄りの跨線橋が無いのだ。

 だが、列車案内の自動放送のアナウンスは、ルナの知っている下今市駅の物で、「特急きぬ156号浅草行き―」とアナウンスしている。

 しかし、留置線を見ると、やはりB1型蒸気機関車と客車が数両という編成の列車が止まっており、サボを見ると鬼怒川温泉行きと書かれ、これが鬼怒川温泉方面行きの普通列車となるのだろう。


 ホームに降りると、鬼怒川温泉方面から浅草行きの特急「きぬ156号」がやって来るのが見えた。

 やって来た列車の車両を見ると、先日のプラレール運転会でルナが絶叫する原因を作った1720系デラックスロマンスカーだった。


(今度はデラックスロマンスカー。こいつも東武博物館に居る車両じゃないか。タイムスリップだか何だか知らねえけど、もう、この人達と居ると、列車も町も、何もかも昔の物になってしまうから、麻痺して驚かなくなってきたよ。)


 ルナは溜め息。


(ただ、なんでこの人達が一緒に居ると、タイムスリップしたような、昔の世界に行ってしまうのだろうか。或いは、この人達と一緒に居る世界こそが現実であり、この人達が居ない世界と言うのが異世界であるのだろうか?)


「ルナ。」と、アイルが声をかけると手を広げている。


「抱いてくださいな。」


 アイルは目を瞑ってルナを待つ。


「あの、ここでは人目が―。」

「私は、気にはしません。」


 ルナの身体をギュッと抱くアイルに、里緒菜と鉾根は「フフッ」と笑う。

 熱烈な見送りを受け、そして、里緒菜と鉾根というお供を連れる格好で、帰りの特急「きぬ156号」に乗って、下今市駅を離れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ