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第18話 ドリームカー

 今日のSL大樹3号は、C11‐207号機が茶色客車編成を牽引する。

 通常、SL大樹の客車は窓の開かない特急用14系客車が編成両端に、中間には窓の開く急行用12系客車を改造した展望車が連結される3両編成の客車なのだが、茶色客車に関しては、12月までの間は展望車が車検を受けているため、代車として元はJR北海道の夜行列車で使用されていた14系ドリームカーを連結している。


 この「ドリームカー」は、北海道で走っていた夜行急行「まりも」「はまなす」の普通車指定席として使用されていた車で、特急用気動車キハ183系のグリーン車をリニューアルした際に余剰となった座席を転用し、普通車指定席ながら実質的にはグリーン車に乗れるとして、「まりも」「はまなす」時代から有名だった。元グリーン車なだけあり、座席はふかふかで、リクライニングも殆ど寝台に横になって寝ているのと変わらない程にリクライニングする。

 また、ドリームカーの車端部にはテーブルと椅子が置かれたラウンジも設けられているが、北海道の夜行列車で現役だった当時、このラウンジには質の悪い奴等が集まって酒盛りをし、他の旅客とケンカになるという事があったという。


(東武に来た今は、そんな事無いけどね。)


 ルナは思う。

 9月11日に発生したという事故の事は一旦、別のところへしまっておいて、目の前のSL旅を楽しむことにした。

 これで、また先日のような事態が起きたら堪らない。


 SLに乗る前に、一旦下今市駅の改札を抜けて、SL大樹が走っているエリアをカバーするフリー切符を購入した上で、改めてホームに入ると、ちょうどSL列車は留置線から上り本線にバックで転線しているところだった。

 2番線ホームの新鹿沼側の先端で4番線に入線してくるSL大樹3号を撮影してから4番線に移動し、列車に乗り込む。

 いつも乗る2号車は、普段なら展望車だが今日は「ドリームカー」だ。

 今日のルナの目的は、「ドリームカー」に乗る事であり、午前中に乗るだけ乗って、午後は列車で行ける撮影ポイントでSLを撮影して帰るのだ。

 今のところ、変な事が起こる兆しも無い。


 普段、展望車が連結されている2号車が「ドリームカー」になっているため、それと知らないで切符を買った観光客が「おやっ?」と首を傾げる様子や、北海道での現役時代を知る鉄道好きが「おおっ!懐かしい!」と言うのを横目に、最後部の席に座って、思い切りリクライニングシートを倒す。

 茶色客車は「ドリームカー」の他、最後尾の下今市側の客車のスハフ14‐501も元JR北海道の客車であり、よくよく見てみると、JR北海道時代の名残が残っている他、「ドリームカー」と一緒に急行「はまなす」で使用されていた時に、間合い運用でドラえもん海底列車に使用され、その際、ドラえもんのラッピングが施された名残で、今もドラえもんがシルエットになって車両のどこかに残っているようだ。


 だが、ルナは「ドリームカー」であれ、スハフ14‐501であれ、共に元々北海道で走っていた客車だと言う事は知っているが、北海道時代を知らないため、懐かしいとは思わないが、「ドリームカー」の場合、「夜行列車で旅をする」と言う事を疑似体験出来るような気分になり、普段のSL大樹とは違った楽しみ方をしていた。

 定刻通りにSL大樹3号は下今市駅を発車すると、直ぐに車掌の車内アナウンスから、SL観光アテンダントの観光案内が始まった。


「やっ!」


 と、3号車の方から来たアテンダントのお姉さんに声をかけられる。

 かなりの回数乗っているルナは、SL観光アテンダントの大半に顔を覚えられている。

 今、声をかけて来たのは、先日のプラレール運転会の時に現れた里緒菜と名乗った女性と少々容姿が似ているアテンダントのお姉さんだ。


「あっどうも。」


 と、他愛のない会話をしながら、ネームプレートを見る。


(石原さん。あの、里緒菜って人は、軽井沢とか言ったな。)


 それを見て安心した。

 プラレール運転会の話をしたが「ああ、YouTubeの」と微笑んだだけ。

 つまり、SL観光アテンダントと、先日の里緒菜は関係ないのだ。




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