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第13話 見送り・特急「リバティーけごん255号」

「えぇへへへっ」


 里緒菜は上機嫌だ。

 天ぷら屋で天ぷら定食を食べたルナの横で、里緒菜は天ぷらを肴に、日本酒を飲み倒して見事に酔ったのだ。


「勘弁してくださいよ。」


 ルナは溜め息。


「えへへぇ。私の目的は、今日のイベントのルナを見る事と、アイルから言われた通り、不摂生な食事しかしていないルナに、まともな食事を摂らしぇることれすからぁ。」

「何のことか知りませんが、勝手にぶっ倒れられたら困るんですよこっちは。」


 ルナは明らかに不満一杯だ。

 勝手に乱入して来たと思えば、勝手にルナと一緒に呑みまくって、自滅しているバカな年上女の面倒を見る義理は無いのに、天ぷら屋から浅草駅まで介抱するハメになってしまったからだ。


「もう。私の旦那は笑ってくれるのにぃ。」

「あんたの旦那の事なんか知りませんよ!」


 言いながら、ルナは浅草駅の改札口まで運んでやり、


「後は勝手に帰ってください。」


 と、里緒菜を叩き出そうとしたが、里緒菜は急に真面目な顔になり、「入場券代です。」と、紙幣を押し付ける。


(なんだこの野郎?テメェで勝手に酔いつぶれといて、見送れだと?)


 ルナは不満に思いながらも、出札窓口へ向かう。


「入場券1枚お願いします。」

「150円です。」


 駅員に、里緒菜に押し付けられた紙幣を支払うが、


(ん?)


 ルナはその紙幣を不審に思った。

 1000円札かと思ったのだが、何かが違った。

 そして、お釣りとして戻って来たのは350円。


(あれ500円札だったのか?)


 ルナは思った。

 里緒菜は酔っ払いの顔から一転、今は真面目な顔になっている。


「お釣りは結構です。大して無いですが、明日の朝食代の足しにしてください。」


 言いながら、里緒菜は改札口に向かう。

 その後をルナも追って改札を抜ける。

 何事も無く、駅員に鋏を入れて貰って改札を抜けるが、


(あれっ?)


 と、改札口を振り返る。


 浅草駅の改札口、というより、東武鉄道の有人駅の改札口は自動改札機が並ぶ改札口で、駅員に切符を見せる事は殆どない。

 確かに駅員に切符を見せて改札を抜けることもあったが、ルナの記憶では、SL大樹が走るエリアをカバーする、はがきサイズのフリー切符を使用する時に、駅員の居る改札口へ回るだけだ。このフリー切符はその大きさ故に自動改札機を通せず、駅員に見せて改札を通る形になるが、発売当日の日付が小さく書かれているだけであり、はっきりと、乗車降車の記録が残るわけでもなく、鋏も入れられず、使用後に回収されるわけでも無いため、ルナは下手をすればこの切符がキセルの手段にされてしまうのではないかと危惧している。


 改札を抜けて、ホームに行くと、そこには先ほどの運転会で「フリー運転じゃねえんだぞコラぁ!」と絶叫する原因になった車両ではないが、それと同じ世代の車両なぜか停車していた。

 それは、小豆色に非貫通2枚窓で、猫ヒゲのようなヘッドマークを付けた5700系だったのだ。


 だが、案内表示には「リバティーけごん255号」と書かれ、アナウンスも「リバティーけごん255号」と案内している。


(なんで?)


 ルナは首を傾げる。


「アイルはルナに早く会いたいと言っております。故に、またすぐ、会いに行ってあげてくださいな。」


 里緒菜は微笑んだ。


「あの―。」

「私の事は心配なさらないで。」

「そうじゃなくて―。」


 ルナは結局のところ、なぜ猫ヒゲの5700系が突如現れたのか、里緒菜とアイルは何者なのかを聞こうとしたがはぐらかされて終わってしまった。


 22時ちょうどに、特急「リバティーけごん255号」は浅草駅を離れる。

 ドアが閉まった時、列車の車体は5700系から、500系リバティーに姿が変わり、里緒菜の姿も見えなくなった。

 そして、特急「リバティーけごん255号」をなぜ見送ったのか分からなくなったまま、ルナは自動改札機に入場券を通して改札を抜けると、地下鉄で自宅へ帰るのだった。


(結局、あの人たちは謎だ。分からないことだらけだ。)


 ルナは溜め息を吐いた。


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