第11話 眼鏡の女性
練習ダイヤの後、本番ダイヤを行う。
本番ダイヤはちょっとしたトラブルはあったものの、本番ダイヤは各所でトラブル無く終わる。
下今市担当のルナも、最後のSL用客車を南栗橋まで回送するのを見送って無事終了。
皆で拍手喝采から、反省会を行う。
やはり、練習ダイヤでのルナの絶叫と悲鳴が笑いのタネになり、当のルナも「次回もまた、滅茶苦茶絶叫します!」と笑いを誘った。
撤収作業を終えると、18時を回っていた。
ルナは東向島駅前のファストフード店で夕食を食べてから帰ろうと思った。
「お疲れさまでした。」
女性の声。
「夕食はこれからでしょう?一緒に行きましょう。ルナ。」
「-!?」
ルナは振り返る。
振り返ると、長身に眼鏡を掛けた女性がルナを見つめていた。
「アイルも行きたいと言ってましたが、今日は仕事を外せず。私が代わりに見ておりました。初回?の時の絶叫は―。笑いをこらえるのに必死でした。しかし、貴方もアイルと結婚した後、下今市か鬼怒川温泉の駅で、本物の列車で、あのような事をやるのでしょうか?」
「えっと?」
「夕食に行きましょう。浅草に良いお店を知ってます。あぁ、ルナのおすすめでも良いですが。或いは、日本橋に出ても良いですが、私の終電の時刻もありますので、浅草で勘弁してください。」
「何時の列車に乗るのでしょうか?」
「22時発の特急です。」
「特急「リバティーけごん255号」ですね。新栃木行きの。それで―。」
「栃木までですよ?ああ、呑み過ぎても新栃木止まりですから安心ですよ。」
眼鏡を掛けた女性は首を傾げながらも、最後の部分で微笑んだ。
だが、ルナの知り合いに、長身にして、容姿端麗。眼鏡を掛けたその姿はまさに科学者という女性は居ない。
ルナは今の会話で、この目の前に居る女性は、どこの何者なのかを探ったのだ。
(栃木あたりの方?SL観光アテンダントのお姉さんに、こんな容姿の方が居たな。名前は知らないけど。もしや、見に来たのか?SL観光アテンダントのお姉さんが?というか、さっき、アイルがどうしたこうした言っていたような?)
ルナは思いながら、眼鏡を掛けた女性と共に東向島駅まで歩く。
「おっルナ!なんだぃデートか?」
からかわれる。
「いっいやぁ。」
ルナはお茶を濁す。
「あぁ、次は熊谷で秩父鉄道オンリーか、東武の日光鬼怒川地区オンリーだからな!熊谷なら八木橋百貨店、東武ならまた東武博物館に来いよ!」
「オッケーっ!」
「詳細と場所が決まったら連絡する。じゃあな!」
プラレール運転会のメンバーと笑い合って別れる。
彼等は東向島駅の改札を抜けて行ったが、ルナは正体不明の眼鏡を掛けた女性と夕食会となってしまった。




